大人のための残酷童話 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101113166

感想・レビュー・書評

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  • 74冊目『大人のための残酷童話』(倉橋由美子 著、1998年8月、新潮社)
    「人魚姫」や「白雪姫」「浦島太郎」「竹取物語」といった有名な童話や昔話を、倉橋由美子流に味付け。
    原作本来の毒気やエロティシズムを増幅し、それらを前面に押し出すことでブラックユーモアな世界観を作り出している。
    全26作品が収録されているが、1作品はだいたい10頁程度。明瞭な物語が大半で、文章も非常に読みやすい。
    文庫本でありながらカバー裏まで装丁が凝っており、なかなか洒落ている。

    「でも肝腎のところが一寸法師のままですもの」

  • 毒が凄い。今のグリム童話や日本昔話も元々の毒がマイルドになっていますが、原作より悪意と婬靡さがありました。
    倉橋由美子さんはこうでなくちゃ!みたいなのがあるので楽しく読みました。各話終わりの教訓一文も好き。「愚かな人間が幸福になることはありません」。
    原作には日本昔話やグリム童話、アンデルセン童話などの童話も、ギリシャ神話も。
    でもこれは童話では無くあれでは…と思ってたら、谷崎潤一郎「春琴抄」やカフカ「変身」、中島敦「名人伝」もありました。この辺りは既読だったのでわかりましたが、森鷗外「父と妹」や今昔物語集まで。幅広いです。
    「子供たちが豚殺しを真似した話」、存在を知ってからグリム童話で一番ウッ…となるお話です。どうやってもマイルドにならない。何故グリム童話になっているのか謎です。

  • 毒気を抜かれたというか、当てられたというか。すごい。
    山本文緒さんの短編が近いのかな。同じ毒でもこちらは現代、したがって整合性があるような。

    倉橋さんのは昔話からもじったストレートパンチ。つじつまもあったものではないのにいやに現実味をおび、しかもエロチック。

    子供のころに知ったおとぎ話はこんな風にインパクトがあったよな~との思い。

    例えば、「養老の滝」(居酒屋さんじゃありませんよ)親孝行の息子が働けど食べさせるのに精一杯で、老親に満足するほど好きなお酒を飲ませくつろがせてあげられない。(なんで貧乏なのに酒のみたいなどほざくのかこの親、とも思うけど)ある日息子は香り高いお酒の湧き水を見つけ、思う存分孝行できましたとさ、孝行息子に神様のご褒美、というのがオリジナル。

    ところが倉橋さんは、その後親子共々、その泉でおぼれるように酒に浸り廃人になってしまったのだとか、あげくの果てはうわさを聞いた人々が駆けつけ、争って群がり酔死多々、悪臭を放つ泉になり酷いことになったしまったと終わる。

    「教訓 ただ酒は人を堕落させる」と結ぶ。

    大人になった私はこのパターン、いろいろ応用きくよと思うのであった。

    こんなお話が26編。おもしろうござった。

  •  エロ展開する話がちょこちょこあるのだが、性を表現する語彙が豊富で感心する。もちろんエロ話以外における語彙や表現も豊富で勉強になる。

  • 往来堂書店『昭和の作家再発見 女流編』の中から買った一冊。
    ギリシア神話、白雪姫、人魚姫から、浦島太郎、一寸法師まで古今東西の名作童話を
    "換骨奪胎したり煮詰めたりして作った"という一冊は、ときにエロく、ときにグロく、
    名作童話をこんな目に合わせていいのか、と思ってしまうほど見事に書き換えている。
    かなり強い毒性があって、だからこそ中毒性も高い。ハマる人はかなりハマるハズ。
    ワタシとしては、酒席のシモネタという使い方をしてみたい。

  • 童話が持つ残酷さ、不条理さを前面に押し出したリライト。
    人間の醜さ、愚かさがつきつけられる。
    ただ、不思議なことにそれがどこか清々しい。
    露悪趣味に溺れているような感じはないからか。

    性愛の問題を扱うことが多いのだが、どこか筆致が冷めている。
    が、話に精彩が出てくるのだ。
    不思議な感覚だった。

    童話のリライトというと、太宰治の「お伽草子」。
    あるいは最近(?)では三浦しおんの「むかしのはなし」。
    特に太宰の「カチカチ山」と倉橋版のそれを読み比べてみると、作家の個性が歴然として面白い。

  • 挿絵が素晴らしい。
    挿絵バージョンを古本でゲットしてください。

  • タイトルの通り、ほとんどが残酷で
    バッドエンドで後味が悪い“童話”たち。

    それだけに、
    「どうせまた救いようのない終わり方
    なんだろう」という気持ちになる時も
    あったけれど、
    そこに辿り着くまでの過程に
    「うーんなるほど」と唸らされた。

    あとがきで作者が、それぞれの作品の
    モデルとなった童話を紹介しているので
    改めて原案との比較をしてみるのも
    面白いかもしれない。

    ただ、原案の内容を知らなくても
    童話として充分に楽しめる短編集である。

    「大人のための」とあるように
    アダルティな表現やグロテスクな表現も
    含まれるため、個人的には
    成人した大人の方々におすすめする。

  • 楽しい童話集。鬼が、この女とげがある、には笑えます。残酷はブラックとも言え、原話をここまで練り上げたのは苦労したと思うが、楽しい時間だったのでは。

  • 昔話の要素が合わさってどろどろになって変形して。
    醜くて残酷なのにグロさは感じなかった。

    最後の教訓が痛烈でいいね。
    「坊やには恋をする資格はないのです」

  • グリム童話や日本昔話、宇治拾遺物語、中島敦の短編などを換骨奪胎した童話集。
    話の終わりに倉橋さんの教訓が一行添えられているんだけど、それが怖い。
    「虫になったザムザの話」はカフカ感、変身感がぎゅっと凝縮されていてすごいと思った。
    好きだったのは「鏡を見た王女」「子供たちが豚殺しの真似をした話」「魔法の豆の木」。

    教訓すごいと思ったのは「養老の滝」。

  • 笑ってしまうほど、皮肉と毒にまみれた短編集。
    『反悲劇』が難しすぎて、このまま読み進めても分かるまい…と思ってとっつきやすそうなこの作品から。

    このタイトルだと、『本当は怖い〜』の仲間みたいだけど、全然違う。

    ひとつひとつの短編に、話の教訓が付されているので分かりやすく、特にこちらなりの解釈をする余地はあまりないと思うけど、「新浦島」の亀の内部の描写→教訓(オチ)なんかは上手いな、とニヤリとしてしまいます。

  • 暗くじっとりした倉橋さんの作品。読みやすかった

  • (2000.08.18読了)(1999.08.15購入)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    超現実的なおとぎ話こそ、同情も感傷もない完全に理屈にあったもので、空想ではありません。そこにあるのは、因果応報、勧善懲悪、自業自得の原理が支配する残酷さだけです。この本は、ギリシア神話やアンデルセン童話、グリム童話、日本昔話などの、世界の名作童話の背後にひそむ人間のむきだしの悪意、邪悪な心、淫猥な欲望を、著者一流の毒を含んだ文体でえぐりだす創作童話集です。

  • それにしても、いぢわるだなぁ(内容が)。
    挿画(柄澤齊氏の版画)が美しく華を添えています。

  • 日本や外国の童話。世界の神話。年少向けの名作...
    おなじみのタイトルが並びます。「人魚姫」「一寸法師」「白雪姫」等等...
    油断して読み始めると、頭をガンと殴られたやうな衝撃が走るのであつた。

    26篇もあるので一つ一つの感想を述べるのはやめませう。しかし誰もが幼時に親しんだ童話が換骨奪胎されて、最初はニヤリとするかも知れないけれど、その寓意をもつて我が身を振り返りますと、いづれも嫌になるほど思ひ当ることばかりなのです。
    即ち物語の内容が残酷なのではなく、読者に対して残酷な仕打ちをする童話集ですな。
    毒物注意と言つたところでせうか。

    やはり私としては、「愚かな者は救はれない」といふのが教訓と申せませうか。
    愚者=大衆とするならば、それこそ救ひがない。やはり残酷童話ですね。
    ...毒が効き過ぎたせいでもありますまいが、本書も残念ながら絶版ださうです。

    http://genjigawakusin.blog10.fc2.com/blog-entry-91.html

  • シニカルで面白い!

  • 古今東西、様々な童話や説話がただの子供向けでなく、毒を持った大人向けとして物語られています。
    醜い人魚姫。エロティックな一寸法師。知能の低い白雪姫に、無様なかぐや姫。子供の頃読み耽った、きらびやかな成功や切ない悲恋はここにはありません。どす黒く、ひたすらにシュールな物語達ばかりが、この本にはおさめられています。最後の「教訓」の一文を読めば、貴方もシニカルな笑いの虜でしょう。

    題名が「大人のための残酷童話」なので、もちろん大人向けですが、個人的にませた子供に親に隠れて読んで欲しい一冊…かも!

  • むっつりな中学生時代に読むのがおすすめ。
    全体的にエロい。

  • これ程までに違和感無くエロと残酷な要素を童話に織り交ぜられるのが凄い。
    爽やかに露悪的。黒い。好き。

著者プロフィール

1935年高知県生まれ。大学在学中に『パルタイ』でデビュー、翌年女流文学賞を受賞。62年田村俊子賞、78年に 『アマノン国往還記』で泉鏡花文学賞を受賞。2005年6月逝去。

「2012年 『完本 酔郷譚』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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