忘却の河 (新潮文庫)

著者 : 福永武彦
  • 新潮社 (1969年5月2日発売)
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  • レビュー :49
  • Amazon.co.jp ・本 (353ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101115023

忘却の河 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • あまりにも好きすぎて、読んでいる途中は一生読み終わらなければいいと思った。そのくらい小説世界に没頭し、心酔した。そんな小説。
    福永武彦本人の人生観であるか、はたまた完璧なフィクションであるかは分かりませんが、全ての登場人物が抱えるそれぞれの孤独に共感する。愛の挫折ゆえに魂が死んでしまった人間が苦しむ様子はまるで作者自身の人生がそうであったかのように思わせる何かがあって、怖くなった。
    お涙頂戴でも何でもないのに、涙がこぼれる。こんな読書体験、はじめて。ありがとう。

  • 静かで端正な文章が美しい。父親の、現代と過去の交錯する描写が秀逸です。意外にもハッピーエンド……(と私は思った)。一章の冒頭に引用されたギリシャ神話辞典の言葉「レーテー」の説明文から引き込まれる。あと、福永武彦と池澤夏樹って親子だったんだ……。

  • 几帳面で端正なたたずまいで、神経質で理屈っぽくて、あきらめているつもりなのに、絶望にしがみついているのに、譲れない希望も持ちあわせていて。そんな甘ったるさがとても福永武彦らしい小説でした。
    小説、とは、ストーリーだけ、構成だけ、設定だけ、描写だけ…では成立しない。物語性も構成も設定も描写も…他のどんな要素も捨てることなく、かつ、哲学が存在する。作者の持つ哲学が小説に息を吹き込み、そのとき物語に命が宿るのだろう、そう思う。
    「忘却の河」は紛れもなくそんな生きた小説だ。

    福永武彦、好きだなぁ…と今回も思い知らされました。
    感傷的なのに、論理的。人の罪は誰が赦すのだろう、どう赦されるのだろう。日本という風土で罪に相対して、導かれる答え。
    鋭利な切っ先で深く斬りこんでくる物語に、BAD ENDも覚悟していた私は、優しい空気に包まれたラストでやっと詰めていた息をほどきました。
    優しい読後感を感じながら、でもこの物語の重いテーマから解放されたのではないと知りながら。

    福永武彦は好きすぎてうまく読後感も表現できないですが…。
    個人的に、呉さんとゆきさんのロマンスに泣きましたが、次女からそのロマンスの存在を伝えられたときの父親の安堵にちょっとほっとしました。

  • 初めて福永武彦を読んだ。
    この時代ならではの奥ゆかしい日本の家族が描かれていて美しい。

    中年の男、その長女と次女、そして病気で寝込んでいる妻の視点で章が展開される。

    中年の男が終盤の長女に対して言う台詞が好き。

    「私たちはそういうふうに躾られてきたのだ。それに私は自分の感情を殺すことも覚えていた。それでもどうにもならない時がある。心の中が溢れて来て抑えることの出来ない時がある。私にしたってお前が可愛くないわけではなかった。そういう時に私はこっそりお前のそばへ行って、小さな声でこの子守唄を歌ったものだ」【332頁】

  • 「ふるさと」について考えさせられる本でした。ふるさとはもちろん自分が生まれたところだけど、人によっては人生の深い後悔を置いてきた場所でもある。

    母に勧められたこの本、とても良かったです。

  • 「草の花」よりもこちらの方が好き。この文体は本当に懐かしい。最近はこういう古い文体の作品が失われてしまった。登場人物がみな苦悩、悩み、孤独、暗い過去を抱え、どこにも出口が無く哀しい気持ちになるが、それまでバラバラだった歯車がぴたりとはまって回りだすように、最後に心温まる結末で結ばれる。読了後の幸せな気分と言ったら。登場人物同士の会話に「 」をつけないので読みづらいという声もあるようだが、その技法がまた想像力を刺激し、読者をより深く物語へ入り込ませる。共感できる部分が多々。著者の人間に対する優しい眼差しを感じるこの作品に出合えてよかった。おすすめして下さった方に多謝。

  • 再読。例えば生と死、愛と憎しみ、過去と現在、罪と贖い‥とかアンビバレントで最もらしい御託を並べて感想を述べるのは簡単だが、そんな簡単なものであるはずは絶対にないので言葉に詰まる。章ごとに人称が変わり視点が動く構成の力にぐいぐい引き付けられながら、流れの中に自分も忘却の彼方に蓄積された澱みを思い起こさずにいられなかった。池澤夏樹の言葉を借りよう。〈魂としての人間〉。全ての外皮を削ぎ落とした剥き出しの魂にだって穢れは残る。救いがあるのかどうか私にはわからない。それでも生まれてきてしまった。全うするしかない。

  • ストーリーだけの小説なんて読み返したくなるわけないですが、 この本は、人生であと4回は読み返したくなるでしょう。 思想がいい。哲学がいい。表現がいい。切り込み方がいい。

  • 『草の花』が有名ですが、私はこちらの作品の方がすきです。
    とても古い本だし、時代背景もうんと昔なのですが、共感するところがたくさんあります。男性作家なのに、女性の感情がここまで表現できる人は最近みかけません。もの静かな文面なのに心が揺さぶられます。間違いなく私の好きな本ベスト10に入ります。
    廃盤になった本もゼヒ読んでみたい、、、。

  • 私の生涯ベストと言って憚らない小説です。
    ストーリー展開,文章,どれも文句のつけようがありません。
    何度読んでも涙が出ます。
    ずっと絶版でしたが,文庫版が復刊されて,大変嬉しいです。

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