- Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101115061
感想・レビュー・書評
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『人は、愛のある状態に生きるか。愛のない状態に生きるか、殆どこの二者のいずれかに属している』
福永武彦さんによる愛についての考察エッセイと短編。愛の神秘やエゴ、理解、孤独。そしてそれを表現しするために書かれた短編はどれもが印象深いです。本当に些細なんだけど真相をついていると言うか。
<絶望的な作品の真の効用、読者がそれを追体験することによって、そのような絶望を乗り越えさせる点にある。それは免疫と似ている。せっかくのワクチンで本当に病気に罹るというのでは馬鹿げている。P13>
<もし愛と孤独とがまったく均衡し、マイブになんの苦痛も不安もなく、おだやかな平安の中に魂が眠っているならば、その人において、生きていることの任務は殆どもう終わっているのだ。P61>
<自己の孤独を豊かにするための試み、愛の試みがある。P133>詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
孤独に裏打ちされない愛はない。
と観念的に考えていた高校時代。
読み返してみると、失恋のところが一番すとんと落ちる。
「孤独は失敗によって次第に靭くされ、恐れることなく自分の傷痕を眺められるようになる」
惜しみなく愛は奪うという本に通ずるところが多い。 -
一見して感じる本の薄さ、軽さと相反するとてもカロリーの高い内容だった。
その内容の一枚一枚を理解するのに相当の時間を要したが、結果その中で理解できたのはほんの一欠片ほどのような気がする。
年月を重ね、今より深みのある人間になれた時に読み返したいと思える一冊だった。
「愛」というものを語る上で、その思索の行先は「人」とは何かという所まで進んでいくのに驚いた。けれども読み進める内に愛とは人のなす事で、それを知るには人間を考えるのは当然だと、納得できた。 -
良かった。でも難しかった。
大人になって、色々な経験をすればするほどすとんと落ちるんじゃないかな。
失恋についてのところはすごく、すごくよく分かったから。
人が孤独だって分かってはいたけど、自分の孤独について最近は考えていなかったな。
また愛する対象の相手ができたら読み返したい。 -
よくわからない。
ピンとこなかった。
途中で終了。
孤独は愛で埋められるものではないとか?
なんか、感覚としてわかってるよってことを言語化したような内容。
んーでもこんなきれいなものかな?現実は。
愛なんて知らないまま死ぬのかも。
以前付き合ってた人がすごくいい内容と言っていたので読んだけど、この本が刺さったとは思えないような付き合いだった。
その人のことがわかるかなと思ったら、余計わからなくなった。 -
大好き
だいたい掌編小説を挟むタイミングが憎いし内容も憎い
うらやましい
この本のせいで福永武彦に憧れてたまらない -
愛すれば愛するほど、孤独を感じなくなる、なんて、そんな恋愛うそなんだ。
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愛というテーマについての著者の思索が展開されているエッセイと、9編の掌編小説がまとめられています。
著者は、「人間は常に孤独である」ということから、思索を開始します。愛とは、人が心のなかにいだいているこうした孤独を、はっきりと認識する体験です。しかし著者は、他者に愛されることによって自己のうちの孤独を埋めようとするエゴイズムがわれわれの心にしのび込みやすいことを指摘します。そして、他者に愛されるよりも他者を愛することによって、他者の孤独を所有しようとすることに、愛の意義を見いだそうとします。
さらに著者は、愛の終わりについても考察をおこなっています。スタンダールの「結晶作用」と対比的な意味をもつ「融晶作用」という概念を用いて、愛が崩壊していくプロセスに目を向ける著者は、それでも愛を無益なものと考えてはいません。ひとつの愛が忘却されたとしても、自己の孤独を見つめるとともに他者の孤独を所有しようとする「愛の試み」はつづくと著者は主張します。
愛というテーマについて哲学的な思索を展開しながらも、体系化への志向を排して、経験そのもののうちに沈潜することで理論的な認識を結晶化させようとする試みがなされており、フランス文学に造詣の深い著者らしいエッセイだと感じました。 -
今まで悩んでいたことが明確に言語化されていて救われた。
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あとで書く