- 本 ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101117034
感想・レビュー・書評
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黒部第三発電所につながるトンネル(隧道)は岩盤温度165度!
当時のダイナマイト自然発火温度を50度以上超でもお咎めなし(戦時体制下にあり電力確保は国家命題)の異常な大土木工事を描く。着工から完工までたったの4年間!そりゃ犠牲者は300名以上でますわな。。
ドキュメンタリーの体裁をとっているが、筆者の卓越した筆力により一気に読ませる。前半と後半で技術者たちを悩ませる内容に大きな変化があるのも魅力のひとつ。-
コメントありがとうございます。久々に読みましたが、手に取ると一気に読んでしまいますよね!
時代といってしまえばそれまでですが人命の扱いのぞん...コメントありがとうございます。久々に読みましたが、手に取ると一気に読んでしまいますよね!
時代といってしまえばそれまでですが人命の扱いのぞんざいさに一番驚きます2025/02/24 -
2025/03/13
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2025/03/13
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吉村昭のノンフィクションは読みやすくありありと場面が頭に浮かぶ。まるで映画をみているように読み進められる。
過酷な環境下で工事を行う人夫達の奮闘と犠牲者がでる度に殺気立つ現場の空気。岩盤温度165℃まで上昇し身体は火傷だらけ。自分が何時死ぬかわからない。それでも貫通させるという人間の意思のちからは凄まじいものがある。 -
戦争の影が世を覆う昭和10年代、黒部の発電所建設の壮絶な工事を巡るドキュメンタリー小説。
私は多少ながら登山、とくに沢登りをやる。この間は雪山もやってみた。ガイドブックに載るような有名なルートでもまあちょっと気を抜いたら命に関わる、というのが自然というものだ。なのにこの工事の現場は、地元の人でさえあそこに立ち入るなんて狂気の沙汰、と怯える未踏の領域なのだ。
そんなエリアに建築資材を運び込むことがそもそも無理筋なのに、掘り進めるとそこは岩盤温度が100度を超える灼熱の地下。冬は雪崩の生き埋めと背中合わせ。
閉暗所が苦手な私にとって掘り進める前に読み進めることさえ難しい。
人夫の一定の「損耗」はもはや前提という非人間性。人知を超えた自然の猛威。だれもやり遂げたことのないトンネル工事を貫徹する、という技術者たちの意志とプライド。戦時経済を支えるために工事必達を目指す国家。
すべてがひしめき合い、ミシミシと音を立てているかのようだ。 -
登場人物は創作だが、ノンフィクション小説。泡雪崩が多少誇張して描かれているが、トンネル工事のリアルが伝わってくる。軍部による圧力に抗えない警察や地方自治体。根津や藤平の貫通・完工への執念と金に妄執する人夫たち...。大自然への無謀な挑戦。人間の狂気が描かれた良作。グロい描写が苦手な方は手を出さないことをお勧めする。
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グリグリとトンネルを掘り抜く巨大な円筒、シールドマシンを初めて知ったのはいつだったかなぁ。ある能力に特化した一部分が異様に進化した働く機械が昔から好きで、掘る能力をとことんまで突き詰めたこの掘削機も私にはときめきのアイテム。ちょうどNHK「東京リボーン」第2集の地下特集で紹介された大小のシールドマシンに心躍らされたばかり。そんなタイミングでホントにたまたま読みはじめたこの本には、シールドマシン以前の日本のトンネル工事の凄まじさがあますところなく描写されていた。
「黒部の太陽」の吉村昭版かと思ったら時代が違っていて(昭和11年から14年)、タイトルも比喩だと思ったら「高熱隧道」そのままだった。つまり最高で160度にも達するあっつい地中を、人間がダイナマイトとツルハシとトロッコでひたすらに掘って掘って掘りまくるのだ。本当に高熱のトンネルなのだ…。
このトンネルは黒部渓谷に建設されるダムの工事用資材を運搬するために掘削された。ここにダムを作って電源を確保するのは、軍需生産のため国としてどうしても必要だった。地帯にこんな高温の層があることは予想外で、でも莫大な金をかけて始めた工事だから中止に踏み切れない。また技術者たちが優秀なものだから、この難工事を乗り越える工夫を次々と編み出してしまう。これって戦争の泥沼にはまって抜け出せなくなる中、優秀な技術者たちが零戦とかを開発していった話ともシンクロする。日本の技術者は優秀だけど、それが時として引き返すべき物事を推し進める結果に繋がってないか?「プロジェクトX」を礼賛する気持ちにふと影が指す。
「東京リボーン」によると、そのトンネルを掘るためだけに特化したシールドマシンは、役目を終えるとそのまま地中に取り残され、その数は1000にもなるという。トンネル工事で死んでいった人夫たちは、この「高熱隧道」の話の中だけでも300人。人夫たちの姿が地中に残されたシールドマシンに重なる。技術者たちはダイナマイトで引きちぎれた人夫の身体をかき集めることまでするが、それは人間の情というよりも、人夫という掘削機械を上手く動かすため。地中に残しても賠償しなくて済むシールドマシンに進化したのは、「命」のコストが高くなったからだろう。 -
起承転結ならぬ転転転結で読む手が止まらない
昔の日本人の体力は凄いものだったんだと感心させられた
地道な作業の積み重ねと人夫達の汗と涙と命で不可能と思われる高熱隧道が完成した
黒部ダムへ行きたくなったし行きたくない気持ちも同時に出てきた
そのくらい凄い本だった
実話なのよね…すごい
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