背中の勲章 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101117126

感想・レビュー・書評

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  • 太平洋戦争を日本人捕虜の視点で綴った記録文学。敢えて捕虜第2号を扱うあたりが著者らしい。死を覚悟した監視行動、捕まってからの心理、他の捕虜たちとの結束や諍い、帰国してからの葛藤...。ありきたりだが、歴史は繰り返してはならないことを実感させてくれる一冊。

  • 淡々と描かれているからこそ怖い。
    直に人物たちの心情が伝わってくる。不純物がない感じ。

    日本人はこの狂信に陥りやすい。
    これは軍部だとか戦争に限ったことではない。
    災害が起きてもそうだ。いつだって、狂気はそばにいる、戦争だけに注視していたら、繰り返すのだ。

  • 太平洋戦争で米軍の捕虜になった日本人の動静が描かれていて興味深い。
    国と国との戦争から外れた個人の葛藤と心の動きは、戦中-敗戦を経験した多くの日本人の心の動きそのままトレースできるだろう。
    「生きて虜囚の辱めを受けず」――この言葉で非常に多くの人間が命を落としたと思われる。これは当時のアメリカ人には不可思議な思想で、現代の日本人にも理解できないかもしれない。
    捕虜生活の(語弊はあるが)快適さに比べ、内地の民間人のギリギリの生活と空襲&原爆投下などで殺戮された無辜の人々を思うと、心理的に大きな負い目はあるものの復興の役に立ったであろう元捕虜のほうが幸せだったのかもしれない。

  • 太平洋戦争の中、捕虜たちがどのように過ごしたか、太平洋戦争裏面史。

  • 太平洋戦争で米国の捕虜となった様子がコンパクトにまとめられて記述されていて読みやすい。

    捉えられた日本兵は捕虜となることを恥じるが、意外と人道的な扱いを受けていることが分かる。

    生き残ったことに後悔する、国のため戦死することに何の疑いもない当時の考えに、人生とは、命とはという意味をかんごえさせられる。

  • 「事実を丁寧に調べて書き、読み応えのある本を書く小説家がいる」と職場の人に勧められ吉村さんの本を数冊貸してもらった中で初めて手にした本でした。

    ▶︎本の内容に関して思ったこと
    勲章と聞くと名誉なことをした者に与えられるものだというイメージが僕の中にありました。
    ただこの作品のタイトルである「背中の勲章」は果たして本当に勲章と呼べるのか疑問に感じます。

    ただ恐らくそれは、今までの戦争に関する知識や教育で作られた価値観で判断しているのだと思うし、散ってこそ男という考え方がそう思わせているのだと考えを改めさせてくれる作品ではありました。

  • 大東亜戦争で米軍捕虜となった海軍人を描く。虜囚の辱めを受けずという当時の思想は根深い。そこからの生き抜く決意をするまでの内面の動きが、かの小説の面白さだと思う。

  • 「生きて虜囚の辱めを受くる勿れ」狂信的な軍律に縛られた一兵卒が過ごした4年半の俘虜生活を冷静に書き記す。戦闘で亡くなった人だけでなく、自ら命を絶った人が少なくない。帰国の輸送船で富士山を目にして海に飛込んだ人。戦争の悲惨さに息苦しくなる。題名が「背中の勲章」となってるが勲章ではないように思える。2018.9.3

  • 特設監視艇長渡丸の乗員は、敵機発見の報告とともに敵艦に突撃を食らわせる予定だったが惜しくも船が沈没して捕虜となり、アメリカ各地の収容所での長い勾留生活が始まった…。
    「生きて虜囚の辱めを受くることなかれ」
    戦中の異常な思考回路に現代を生きる私は必死で理解しよう、ついていこうとするものの何度も振り落とされそうになりながら読み進めた。

    敵機発見は特攻と死を意味するのに、そうなるよう祈る船員。国のために死ぬ名誉、捕虜となった屈辱や、日本は勝てると馬鹿正直に信じて疑わない姿勢。
    今のアメリカナイズされたザ・民主主義ワールドに生きる甘ちゃんな現代っ子には、「なんでこの人達こんなに盲信できるんだろ」という疑問が拭えない。

    かと思えば、アメリカ人の暖かさにほっこりしたり、軽作業と相撲やスポーツに明け暮れるなんとも健康的でのんびりとした虜囚生活に変な感じがしたり(今頃沖縄で若者がたくさん死んどるんやで…とか思ったり)
    何だろう、時代に翻弄されすぎてるこの時代の人達に、悲しみというか悲哀を感じてしまう小説だった。
    彼らが祖国を愛し、日本のためにすべてを投げ打とうとしたことに感動や感謝はあれど、戦争の何だか不可思議な一面に触れてしまった気がした。

  • P199
    開戦から4ヶ月でアメリカの捕虜になり、終戦も知らずに4年半捕虜生活をした海軍兵の物語。

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著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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