羆嵐 (新潮文庫)

  • 新潮社 (1982年11月29日発売)
4.11
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感想 : 577
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  • 本 ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101117133

感想・レビュー・書評

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  • こちらも会社の先輩にお借りした一冊。

    北海道の天塩山麓の開拓村にヒグマが現れた。
    ヒグマは冬眠時期を逃してしまい、食べ物を求めて民家に襲いかかる。
    ヒグマは、わずか二日間で6人もの人命を奪う。

    開拓村の人々は警察に助けを求めるが、凶暴な人喰い熊になすすべもなく。
    そこに強力な助っ人が、熊を退治する為に立ち上がる。


    と、簡単に書けばこんな内容。

    しかしこの作家さんにかかると、物語の厚みが全く違うものに。

    臨場感が半端なく、熊の描写では鳥肌が立つほどに。
    上手だなぁ、、、、

    この作家さんの本は、何を読んでも惹きつけられ方が半端ない。
    自分もその村の住民になってしまうのだから。

    でも自分の中のこの作家さんの一番は、今のところ漂流だな(*^▽^*)

    • pさん
      読みたいけど怖い
      みたいな感じで手に取れません。
      絶対寝れなくなるし、いつヒグマに遭遇するか分からない生活なんでね…笑

      先日、町内で
      親子...
      読みたいけど怖い
      みたいな感じで手に取れません。
      絶対寝れなくなるし、いつヒグマに遭遇するか分からない生活なんでね…笑

      先日、町内で
      親子のヒグマいたとかニュースになってましたよ

      怖すぎます

      2023/10/29
    • bmakiさん
      pさん

      最近、熊のニュース多いですよね。。。
      近くにお住まいの方ならその恐怖は相当なものだと思います。
      私は海の近くなので、多分熊...
      pさん

      最近、熊のニュース多いですよね。。。
      近くにお住まいの方ならその恐怖は相当なものだと思います。
      私は海の近くなので、多分熊は出没しないでしょうけど、山に遊びにいくときは旦那がいつも熊鈴を鳴らしています。

      ヒグマは特に、シャレにならない恐ろしさですよね。。。

      私も知床に行った時、熊が怖すぎて遊歩道を歩くのはやめたような記憶があります。

      この本は怖いので、同作者の漂流がおすすめです( ̄▽ ̄)
      こちらも怖いと言えば怖いですが、ムキになって読み進められました。

      この作家さん、本当にリアリティが凄いです(*^▽^*)
      2023/10/29
    • pさん
      読むなら漂流ですね笑

      読みたいに登録しておきまーす!
      読むなら漂流ですね笑

      読みたいに登録しておきまーす!
      2023/10/30
  • 大正4年12月、北海道苫前郡苫前村三毛別六線沢 でヒグマが開拓民を襲った『三毛別羆事件』をモデルにした話。
    入植した村落の者たちの過酷な環境だけでも圧倒されるが、そこに襲いかかる羆。どこまで厳しいのかと身が竦み上がる。
    状況が変わるにつれて恐怖感が高まり、羆に対する人々の感情の変化が生々しく伝わってくる。
    人々の銃に対する盲信、集団に対する安心に対して、一人で羆と対峙する熊撃ち名手の銀四郎は違う。
    羆の習性を知悉し、冷静に判断する。けれど誰よりも羆の恐ろしさ知り、畏敬の念を持っていた。
    人間は別の生き物を狩って生きてきた。が、その逆は考えない。羆にしたら人間は生きるための食料なのだ。そのことに思い至ったとき、別の恐怖を感じた。

  • H29.4.27 読了。
    羆が近くにいそうな怖さが伝わってきました。
    ドキドキしながら、一気読みしちゃいました。

  •  大正四年、北海道で実際に起きた、ヒグマが次々と人を襲う事件。あまりに有名なので、事件の存在は知ってはいたが、その事件のことを描かれた此の本を読むと、その生々しさは想像以上だった。
     羆一頭じゃないか、と現代人の感覚なら思うだろう。簡単に、駆除できるのではと想像するだろう。しかし、当時、武器を手にした男たちが二百名程集まろうが、それでもこの羆の圧倒的な力に抗うことができなかったのだ。大勢人が集まろうが、鎌や錆びた銃を持っていようが、深傷を追わせることすらできないのだ。
     冬の夜、この本を読んで、寒さの中の、暗闇での混乱を、リアルに想像できた。
     自然というのは、とても怖い。人が勝手に「うまくこの土地に馴染んだ」と思っていても、自然は前触れもなく手の平を返す。そして、曲げられないその条理こそが、畏れだったり尊さなのだと思う。
     羆と戦ったひとがいた。畏れを抱きながら。その話を書いた本書。…私は、この本を読めてよかった。

     そして、是非、倉本聰氏によるあとがきも読んで欲しい。
     その後の、色々な「運命」に、胸が熱くなることだろう。

  • 人間vs熊という題材が大好き。
    圧倒的な羆の力を前にすると、人間は為す術もない。
    三毛別羆事件をモチーフにした小説。

    銀四郎おやじがいかに羆をしとめるか、という話かとおもったけど
    羆のおそらしさ・その被害が中心になっておりました。
    銀四郎おやじはゴールデンカムイの二瓶鉄造のモデルなんですね。
    読書中も二瓶のイメージでずっと読んでましたけど笑。
    解説に登場する大川翁の後日譚とか、話以外の部分でも楽しめました。

    恐怖、自然の偉大さを淡々と。こういう小説が好きです。

  • 先月読んだ『高熱隧道』に感化され、手に取った吉村昭の2冊目。
    大雪山の紅葉を見ようと、北海道旅行に行くフェリーの中で一気読みしてしまった。
    いやいや、登山前のタイミングで恐ろしいモノを読んでしまった、と後悔(失笑)。

    苫前三毛別羆事件という、史実に基づく小説。
    二度と起こらないであろう高熱隧道の時代とは異なり、
    羆は今もなお、北の大地で息を潜めている。
    我々現代人だって、生きたまま羆に食される可能性はゼロではないのた。

    厳しい自然環境と経済状況でも、土地を離れることのできない人間達。
    集団で火を焚き、使い慣れない銃を持っていることで「安全」だと錯覚している。
    実際は、銃は使い物にならず、炎は羆にとって「餌」があることの目印にすぎなかった。
    羆にとっては、入植してきた人間が自分の縄張りを荒らしたことで環境が変化してしまい、冬眠場所が無くなり、空腹とストレスが溜まっていたのだろう。

    自然の摂理を理解し、孤独と闘いながら羆に立ち向かう老猟師の迫力が伝わってくる。羆の犠牲になった村人や、当初は「集団で羆を仕留める」息巻いていたものの実際は成すすべの無かった滑稽な男達は、自然界における弱者として描かれ、猟師と対比した描写が際立っている。

    そして、老猟師自身も、羆に向かう真剣な姿(自然界での姿)、酒癖が悪くトラブルを起こす姿(人間界での姿)の2面性が描かれる。

    最後は猟師が見事、羆を仕留めるのだが、犠牲者が多数出ていることや、その凄まじい惨状描写もあって、全体を通して、何とも言えない「寂しさ」を感じる作品であった。どれだけ文明が進んでも、大自然の中で人間はとても弱い存在であり、羆にまともに立ち向かえる人間(自然にマトモに立ち向かえる人間)もまた、減り続けているのである。

  • 今から110年前北海道の山村でおきた日本史上最悪の熊害とも呼ばれる三毛別羆事件を題材にとった、ほぼほぼドキュメンタリーといって差し支えない緻密な取材に基づいて書かれた小説。度重なる水害から故郷を捨て北海道への入植を決意した東北の一村落が、苦心しながら荒地を開墾しようやく収穫を得られるようになったら今度はイナゴの襲来を受けすべてを失い、より山奥の未開の地に辿りつく。六線沢と呼ばれたここでも苦難の末やっとささやかな日々の暮らしを手に入れることができたのだが、数年たったある冬に冬眠しそこなった身の丈約3メートル体重約300キロの巨大羆の襲撃を受け7人が殺害(うち1名は胎児)され3人が重傷を受けてしまう。真っ暗闇の山奥の羆のテリトリーに村落を開いた村人たちの、想像を超えるような恐怖の感情に絶句し、自然の猛威に為す術もなかったわれわれの先人たちの苦闘に頭があがらない。六線沢と隣村の三毛別村の人々は集落を放棄し、警察署の指揮する200名からの救援隊の動員を経ながら退治されるまでの一部始終が描かれる。文章は情緒を排し時々刻々の人々の行動とその際のそこにいた人々の様々な波打つ感情の起伏を淡々と簡潔に記していくだけだが、それがリアルで迫真に迫ってくる。救援隊に向ける期待と失望の末、すべてを託されたのが酒乱で粗暴で忌み嫌われた一人の老猟師で、彼と羆が対決する終盤は盛り上げようというような筆致はまったくなく淡々としたものなのだが、緊張感が半端なくまったく目が離せなかった。書籍の装丁は文庫化や新装すると変更されることが多々あるけど、現在の装丁はこれを超えるものは恐らくできないように思うほどパーフェクト。

  • 「羆嵐」 吉村昭(著)

    S52 5月 刊行 新潮社

    S57 11/25 文庫発行
    H25 11/15 四十六刷改版
    R1 7/30 五十二刷

    再読。

    入植間もない北海道で起きた
    人類史上稀に見る獣害事件「三毛別羆事件」を題材に

    羆と人との闘いを描いている。

    調べに調べた事実だけを簡潔に綴る
    吉村昭の筆はなにがあっても揺るがない。

    でもまあなんと自然の恐ろしいことよ!
    姿かたちを変え人間の前に立ち塞がる。

    銀四郎おやじかっけー!

    巻末の解説は驚きの倉本聰。

  • 二日間で、一気読み。すごい迫力。肝が冷えた!!
    羆と人間の、命を賭した闘い。
    人間の無力さ、たくましさ。
    吉村昭は、どれも、つくづく、すごい。

  •  北海道の貧しい開拓集落で実際にあった羆害事件を題材とした小説です。吉村昭は事実に取材した小説をいくつも書いていますが、特にこの小説では基となる事件が衝撃的なものであるだけに異様な迫力があります。

     この小説で登場する羆は、ジョーズやシンゴジラも顔負けの恐ろしさで、どこで出くわすことになるのかとはらはらしながらページを繰りました。中篇といえる長さで、しかも文章が緻密で淡々として無駄がなくすらすらと読めるので、あっという間に読み終えました。

     羆撃ち名人である山岡銀四郎の活躍が、分署長たちの無能さと対比するようにして描かれています。銀四郎は妻子に去られた悲哀から、すさんだ生活をしています。普段は忌わしい厄介者でしかない彼が、羆を撃つ時だけは別人のように頼もしい男となるのは、胸がすくほどかっこいいけど、悲しくもあります。なぜなら、彼が命がけで羆を撃つのは、自分を死の恐怖に晒すことによって悲哀を忘れるためだと思えるからです。

     加えて、自然の非情さに翻弄されながら寒村で生きていかざるを得ない人々の姿にも、重苦しい悲しさを感じました。

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著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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