ポーツマスの旗 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 75
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101117140

作品紹介・あらすじ

日本の命運を賭けた日露戦争。旅順攻略、日本海海戦の勝利に沸く国民の期待を肩に、外相・小村寿太郎は全権として、ポーツマス講和会議に臨んだ。ロシア側との緊迫した駆け引きの末の劇的な講和成立。しかし、樺太北部と賠償金の放棄は国民の憤激を呼び、大暴動へと発展する-。近代日本の分水嶺・日露戦争に光をあて交渉妥結に生命を燃焼させた小村寿太郎の姿を浮き彫りにする力作。

感想・レビュー・書評

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  • 初の吉村作品。こう言った記録小説自体を初めて読み、読み進めるのには時間がかかったが、通常の小説と同じく、或いはそれ以上に世界に入り込むことができたのは不思議な感覚だった。

    舞台はポーツマス講和会議、日本全権の小村寿太郎。小村は私も多少縁のある宮崎・飫肥出身ということもあり、読前から思い入れがあった。ただ、ポーツマス条約という日露戦争の輝かしい成果の話と思っていたが、実際は当時も今も色々な見方ができる結果だったのだということを知った。

    小村はメディアを使った印象操作を行わなかった。積極的に利用していたロシアとは対照的な姿勢に私は非常に小村らしいと誇らしく感じた。昔からメディアの力で世論は動くし、たった一つの記事が大きく戦争を左右するのだなと改めて実感した。ウィッテは日本目線で見ると嫌な外交官であるが、終盤ロシア皇帝の勅命に対して決死の抵抗をする姿は素晴らしく、彼も平和と自国の利の狭間で苦悩し続けた人なのだなと感じた。

    本作で衝撃だったのは外交官以外の小村の印象だった。一言で言えばクズ人間。家庭は顧みず、借財は平気で踏み倒す。小説としては小村という人物にどういう感情を抱けば良いのか分からなくなるが、ありのままの人物を描くのが吉村流なのかなと思った。そして私は自堕落な私生活を踏まえてもなお小村を憎めない。一生を外交官という職務に捧げた人物なのだと思う。

  • ポーツマス条約にいたる交渉にのぞむ小村寿太郎をはじめ、日本外交団の軌跡と苦闘をドキュメンタリー風に描く。淡々と時間を追って経緯を描写しており、そんな感じだったのかと思う以上のことはないが、記録小説という意味でわかりやすく、不思議と頭に残っている。
    昔、NHKがドラマ化して、小村=石坂浩二、金子=児玉清、明石大佐=原田芳雄のキャストだったと記憶している。割と面白かったように憶えているので再放送してくれないかな。(笑)

  • 歴史小説として個人的には満点の作品でした。
    国の尊厳をかけたギリギリの外交交渉。容易に譲れない全権たちが、それでも講和成立に向け妥協点を探りあう。そんな緊迫した様子をまるで同室で見ているような臨場感が、この小説にはありました。小村という人物にも大変興味をもちました。乃木や東郷が英雄ならば小村も同等に英雄なのでは、そう思いました。

  • 作品は、基本的に叙事詩的な文章で書き進められており、淡々と当時の時間の流れと出来事を連ねているが、それがポーツマス条約の緊縛した場面をより強く浮き彫りにしていると思う。困難なポーツマス条約を成立させた優れた外交官、政治家として記憶していた小村であるが、"私"の方はとても陰の部分が濃い人生だったことは、この作品で知った。
    日本が近代国家として名乗りを挙げた日露戦争の勝利の一方、このポーツマス条約が後のさらなる悲惨な戦争の歴史に繋がっていくことを考えると歴史の皮肉さを思う。
    この度のウクライナ戦争もあり、読んでみた一作であった。

  • 米村万里さんの書評がきっかけで読んでみた一冊。

    恥ずかしながら、小村寿太郎という名前もポーツマス条約という名詞も「教科書に載ってたなぁ」くらいの記憶しかなかったけれど、こんなにも熾烈な駆け引きがあったとことが授業で教えられていたら興味の持ち方が違ったと思いました。

    当時の外交、戦争、政治がどのようなものだったのか、垣間見ることができる良作。
    果たして現代日本の政治家に、これほどの熱量があるのだろうかと改めて疑問を抱いてみたりもしました。

    ポーツマス条約における小村氏の功績だけでなく、家庭人としてのダメっぷりも記されているのが本作の面白さ。
    決して教科書っぽくならず、小説として楽しめる理由の1つはここにあるのでしょう。

    これまであまり歴史小説は読んできませんでしたが、
    戦争や人種差別に強い関心が出てきたのもあってか、近代歴史小説にはハマる予感がします。

    2020年55冊目。

  • 吉村作品は本当に面白い!解説にもあるが単なる小説ではなく今後の厳しい国際社会での死活を賭した交渉の実物教育の書。

  • 小村寿太郎、昔の人は自分自身を捨て、国のため、平和のために尽くした。 全く見返りを求めず。

  • 日露戦争終結のため、命を懸けたロシアとの交渉は、小村寿太郎あってこそのものだったのだと感じた。残念ながら今の外務省に小村的人物はいないのだろう。

  • 教科書では数行の内容だが、その奥に存在した深い内容が分かって面白かった。重厚な内容だった。

  • 描寫日露戰爭日方全權委員小村壽太郎。雖然平常並未有突出表現家庭也並不和睦且一屁股債,然而在中國的臨機應變表現獲得賞識,被提拔為桂太郎內閣的外相。日露戰爭當時國內戰爭呼聲高張,縱然日方陸海皆有驚人斬獲,然而真實卻是陸軍深知已無法再戰,財政也已經難以負擔,加上俄軍西伯利亞鐵道改成單向之後大量運兵來滿州,以目前態勢長期作戰勢必不利。而俄軍的痛腳則是國內政權極度不穩定。在此情況下熟知內情使命必達的燙手山芋由小村接下,在老羅斯福斡旋下兩國特命前往美國談判。日本這邊透過金子堅太郎與羅斯福密切聯繫並且致力於改善日方形象(當時美國政商都與俄羅斯關係密切,也與俄羅斯貴族多有結親,因此戰爭初期日本形象並不佳,是透過接二連三的勝利改變形象),透過明石繼續操作讓俄國國內動盪,俄方也透過輿論戰拉攏新聞工作者,兩者水面下皆有大量工作。

    談判過程日本先把所有事前撰妥條件一線派開,俄方在極東的海軍軍力一度成為爭論焦點,最後雙方卡在割地(樺太)、賠款兩條沙皇完全反對,一度談判即將破裂雙方都已經做好回家打算,但後來得到內線消息得知沙皇可以同意樺太二分,後來日本放棄賠款,並且樺太二分,雙方就此簽訂和約。小村戰後雖然大病,急忙回國也阻止桂內閣因財政困窮將南滿鐵道賣給美國鐵道王,開展日後的滿州經營。軍部也從此之後發言權和地位都高度躍升。而根據這個和約,戰後日方踩油門地推進在中國與韓國的力道,在各列強已經默許的勢力範圍內,也完成日韓併合,小村在其中都擔任要角。然而日本的壯大也導致美國把艦隊調到太平洋,開始把日方當作美方艦隊假想敵。

    令人印象深刻的是日露和約簽署後的大量暴動、遊行與縱火事件,壯士放話要天誅並且危害到小村的家人安全,甚至小村本人回國行程也須受到高度保護,替政府背負當時輿論的惡名(政府不能讓人知道實際已經無法再戰,在與俄羅斯談判會不利,因此國民所知只有連戰皆捷),這個十字架在他出發之前早有預料(伊藤知道去談判就會被當國賊所以早早推辭)。

    這部作品其實差不多也是小村的簡要傳記,只是小村的長年不遇、家庭不幸只好逃避到花街、債台高築,讀起來並不是一個幸福的人,奉國家之命談約成為眾矢之的,晚年肺病纏身驅使病身一路往日韓併合突進,完成歷史賦予他的使命--加速。後世的人們當然都知道之後發生了什麼事,讀完這部作品比起小村本人,我卻不斷地想,歷史連貫性極強,這段故事也看到很多通往各種歷史大事的蛛絲馬跡,特別是太平洋戰爭。很多悲劇常常是一路加速,但踩油門的通常不會只有單一部門或單一個人。日露戰爭固然是迎來和平,談判的過程讓我想起很多想推和平一把的領袖,不過只是埋下一個更大的地雷。面對歷史不斷重複,現今的紛紛擾擾也在踩油門,除了嘆息,還是嘆息。

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著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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