- 本 ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101117164
感想・レビュー・書評
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終戦後の戦犯による罪を避けながらと逃避する琢也の葛藤を描いた作品。この難しい問いを淡々と詳らかにする著者の筆致は、相変わらずスゴイ...。戦勝者と敗北者の視点から綴られる記録文学。戦争を知らない世代は取り敢えず著者作品に触れてみよう。きっと気づけるものがあるはず。
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戦犯容疑者として追われる元将校の心の葛藤がとてもリアル。死罪に怯えながらの逃避行に息が詰まった。戦後処理を通して正義とは一体何かが問われる。価値観逆転による混乱の大きさは戦後生まれには想像もつかないが、トップの責任逃れやら、メディアの手のひら返しやらはいつの世も変わらないなと…。
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八月は戦争関連の本を読む月間。
太平洋戦争末期に北九州をB29による無差別爆撃で大量の市民を殺戮し、その後撃墜されて俘虜となった米軍兵と、その俘虜を斬首処刑した日本軍人。
日本人が倹しい生活に苦しむ中、爆弾投下で大量殺戮をした米軍兵が収容所でぬくぬく暮らしていることに憤りを抑えられず個人の感情で斬殺するが、米軍兵が最後に残した愛する人の名前を呼ぶ声が耳に残る。果たして正義とは、戦争とは何か。
戦後、連合国から戦犯として処刑されることを逃れるための逃亡劇は重苦しい、吉村昭の世界。 -
太平洋戦争中に米軍捕虜を殺害し、戦後に裁判にかけられる、という話は「わたしは貝になりたい」が有名だろう。
いずれにせよ、戦勝国が独自の法廷(東京裁判など)で敗戦国を裁く、というのは考えてみればシュールな状況だといえる。
敗戦国の人間でなくとも、パール判事の言い分は正しいと思う。
読んでいて歯がゆいのが、国土にバンバン焼夷弾落とされて原爆まで落とされて明らかに非戦闘員の大量虐殺を受けたのにアメリカへの恨みとか、早々になくなっている(ように見える)こと。
まあそれはWGP(戦争の罪悪感を日本人に植えつける洗脳)のせいでもあるけど、いかに徹底していたかがわかる(いまだに解けていない人&団体もいる)。
これ、C国やK国だったら戦後何十年、いや何百年経ってもアメリカ人を恨み続けてると思う。
あとは主人公の逃亡を通して戦後直後の人々の生活がリアルに描かれていて勉強になった。当時の祖父母(と父母)が悲惨な状況を生き延びてくれたおかげで今の自分がいる。命がけの仕事もしておらず、毎日酒呑んでる自分は祖父母の人生に見合った自分だろうか、などと殊勝にも考えてしまうのである。 -
戦争の終結とともに日本人の価値観がガラリと変わった。アメリカ兵を殺害した将校の闘争劇。
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戦犯者琢也の逃亡の様子、琢也の気持ちの変化の描写どれも吉村昭さんの作風にどんどん引き込まれて、一気に読み終わりました。まだまだ知らなかった戦争の事実が様々な小説に沢山あり、これからも少しずつ読んでいきたいです。
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戦争に勝てば英雄。
負ければ戦争犯罪容疑者。
そして、敗戦後、数年して空気が一変して戦争被害者へ。
戦争とは、何なのか。
戦争の為に国民を洗脳し、戦わせる。
国と国が争って、負ければ個人へ責任を擦り付ける。
こんなことがまかり通っていいのだろうか。
こんなことに青春を奪われた若者が可哀想だ。 -
海と毒薬のB面というか(亜流という意味ではなく)、戦争犯罪人のひとつの形。
海と毒薬ほどテーマに奥深さが無いことが、逆に作品を何故書かれなくてはならなかったのか?を感じる。 -
P248
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