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本 ・本 (304ページ) / ISBN・EAN: 9784101117195
感想・レビュー・書評
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動物小説集と銘打ってはいるが、これは人間の物語。執念、悲哀、偏愛、劣等感、孤独...。5編全て暗いが結びがそれぞれ秀逸。「蘭鋳」「軍鶏」「鳩」が好み。生き物を育てるのって大変だ。
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多くの人が指摘しているが、どれもこれも悲惨な話なのだが、読後感はそんなに悪くない。
動物小説集とうたってあるが、やはりこれは人間を描いている小説集である。これらの作品が書かれた時点では、オタクなる言葉はなかったと思うが、登場する人物は究極のオタクといってもいいかもしれない。明るい気分にはなれないが、小説としては面白い、 -
短編集。それぞれ題材にとられた特異な環境下にある動物の描き方は、主人公の内面に投影されており、動物たちの運命もまた、物語の結末を暗示しているかのようで、読後に独特の印象を残す。どれも秀作だけに、表題にあえて「羆嵐」と被るタイトルを選んだのは勿体無かったかも。
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羆、蘭鋳、軍鶏、鳩、ハタハタをテーマに繰り広げられる人間模様が描かれている短編集。嗚呼、暗い。何て暗いんだ。この人の作品を読むと必ず頭の中の映像化は曇天でモノクロ色に染められてしまう。人生の喪失感や悲哀が淡々と語られ、読後のむず痒い程のやるせなさはいつまでも尾を引く。動物に携わる人間達の生き甲斐や息苦しい程の嫉妬、卑屈感、劣等感がひしひしと読み手に伝わり心は鉛の様に重くなる。そしてラストで一瞬光がさし始める予感を感じさせる演出が堪らない。やっぱり吉村昭は面白い。そして凄い。
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吉村昭の動物を題材にした短編集。動物を糧にする人間の非情さ、自然の厳しさ。
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動物をタイトルにした5話ではあるけど、これでもかと人間を描ききった心理小説だった。
それぞれの理由で生き物たちに取り憑かれた男たちの話。どれも共通して閉鎖的な田舎町が舞台で、鬱屈したやるせなさと物悲しさが漂い、つい登場人物に感情移入しながら読み進めた。良くも悪くも親から受け継いだものが共通してるのも印象的。
どこか報われない、世間から少し外れた場所で生活する人間たちが、あらゆる動物を道具や自分の代替として生きがいにしていく。
3篇めの「軍鶏」がまさにそんな感じ。足の悪い自分の代わりに鶏たちを荒々しく闘わせることで日頃閉じ込められたストレスを爆発させている。闘うことしか知らない軍鶏に憧憬を抱く主人公が無垢というか愚かというか。生き物を育てるということは愛情も間違いなくあるんだけど、結局は自己満足の部分が大きくて、自分の喜びの為の道具にしか過ぎないのかなと虚しくなる。
5話すべて暗くてキツイ終わり方だけど不思議と後味の悪さはなくて、彼らの今後に思いを馳せてしまった。 -
10/1 読了.動物への異常な執着を見せる主人公ばかりが登場する短編集.動物の命の異様な軽さ、粗末に命を扱う人間の醜さが絡み合って独特の雰囲気が全編に漂っていてなかなかのインパクトだった.
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「ハタハタ」で、漁業生活者の世界が強く響いた。
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