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本 ・本 / ISBN・EAN: 9784101117225
感想・レビュー・書評
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鹿児島県鹿屋市の養蜂業一家・有島伊八郎とその妻・利恵、長男・俊一、長男嫁・弘子、長女・典子そして弟子の清八を描いた物語だが、事実上は蜜蜂たちが主人公というべき感動的なドラマ。蜜蜂が一つの命のように愛しく感じられてくる。養蜂がこのように花の蜜を求めて全国(特に北海道まで)を行脚するという生活には全く想像もしていなかった。高温で蜜蜂たちが興奮し、騒ぎだし、蒸殺してしまうという大変さで、フェーン下の猛暑の山形県を移動し、危機一髪全滅を免れた際の緊張感が凄かった。1970年頃で国鉄の貨物列車での移動が懐かしく感じられる。こんな世界があるとは全く驚きだった。こんな大変な生活は今でも続いているのだろうか。弘子が義父母・妹に受け入れられていく日々が微笑ましい。
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昭和40年代の日本の養蜂家を題材とした、ロードムービースタイルの家族小説。
鹿児島で養蜂業を営む中年夫婦の許へ、上京以来、音信不通だった長男が突然、新妻を伴って帰郷する。
父親は、複雑な戸惑いを胸に、ぎこちなくも少しずつ、息子夫婦との関係を新たに構築してゆく。
蜜蜂を養うための花を求め、生計の糧である蜂の巣箱と共に、半年以上もの間、日本列島を縦断する一家の、自然に寄り添う苦労と喜びが丁寧に描かれている。
当時の養蜂のしくみがわかりやすく記され、旅の抒情性と、主人公が蜜蜂へ寄せる慈しみの情が織り成す味わいが深い、記録文学の好著である。 -
家族の問題を深めるのではなく、そこには吉村昭の人としての美しい生き様が「蜂」を通じて描かれる。一人ひとりの社会との距離感が大人とは何かを提示している。読後の美しい波紋のような余韻が気持ち良い。
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あまり良く知られていない養蜂、ミツバチの生態について丹念に描かれており、勉強となった。
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2011.7.8(金)¥136。
2011.7.31(日)。
著者プロフィール
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