長英逃亡 (上) (新潮文庫)

  • 新潮社 (1989年9月28日発売)
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  • 本 ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101117256

感想・レビュー・書評

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  • 執拗な幕府の捜索にも逃げ続ける高野長英。そして自分の危険も顧みず長英を匿う者たち。長英への畏敬の念がなければ、成し遂げられない逃亡劇。

  • 幕府の政策を批判して収監された高野長英が脱走してからの逃走劇を描く。

    逃走生活は長年にわたるが、そのあいだに長英は色んな人を頼る。人は一人では生きていけないし、いざという時に頼れる人がいることの大切さが分かる。
    若干長くて、読むのに体力を要した。

  • 火事による切り放し、義務付けられた3日以内の回向院への集合。知己の人を訪ね歩く。もちろん、戻る気はない。放火は長英の策略。始めからの計画。しかし、読者は葛藤に駆られる。戻って欲しいとも思う。もしかしたら寛大な処置が得られるかもしれない。言い含められ火をつけた栄蔵は後に捕らえられ火刑。逃亡中匿ってくれた隆仙は拷問を耐え抜き、元に戻らない体に。後少し待っていれば、厳罰を強いた町奉行耀蔵は左遷される。不当な裁きでも従うべきだったのか。個人の視点だけではなく、歴史的見地からも考えたい。逃避行は続く、下巻へと。

  • 現代に事実を知っているだけに、非常に読むのが辛く、苦しかった。

    氏いわく、「事実と事実の間を埋めて行く資料が乏しい中で。考えをめぐらす作業の辛さ、面白さを語っている。が、これほどまでにリアリティに迫る文学があるだろうかと息をのむ。

    間道、街道が好きでちょくちょく行くことが多い為、場面と人の息遣いを想像しながら読んだためになかなか進まなかった。

    蛮社の獄による処刑としか習っておらず、1850年という時間にさらし首になった彼。逃亡の時間は13年。科学のツールが無い現代とは違うとはいえ、捜査から逃れる我身を守るツールもない。灼熱、豪雨・暴風、極寒積雪、そして捕縛に寄与するミラ美との目と口から逃れる全てが描かれている感じ。
    上は上州・信州・越後への旅。山歩きで少しは知っているエリアだけに、わらじで着物で歩くその姿、食事の粗末さ、体力に驚嘆するばかり。

  • 吉村昭が描く、逃亡物語は、本当に息が詰まるような緊迫感で、リアリティがすごい。
    どんな取材をすれば、ここまで迫真迫る物語が描けるのだろうか。
    他にも、逃亡を描いた物語にも当てはまる。
    物語にグッと引き込まれてしまう。

  • 現代に比べてSNSやインターネットなどの情報拡散ツールが圧倒的に少ないのに、各藩の村人たちの結束力や幕府の徹底した捜索により現代より遥かに逃げ延びるのが困難な世界で行く先々で多くの人に協力してもらいながら間一髪で逃げ延びる高野長英。
    歴史の授業では「蛮社の獄で捕らえられたが牢屋に放火して脱獄、後に捕らえられて自殺」程度しか教わらなかったので詳しい背景が分かりとても面白い。下巻も楽しみ。

  • 幕末の蘭学者・高野長英の入獄、脱獄、そして逃亡を描く歴史小説。上巻は江戸を出た長英が、様々な知己に助けられ、上州を抜け、越後を超え、奥州に辿り着くところまで。
    淡々とした文体により、むしろ逃亡者の閉塞感と切迫感が強く感じられる硬派な小説。下巻の展開が気になる。

  • 政治犯として捕まった高野長英の脱獄と息詰まる逃避行。2019.1.15

  • 昔読んだのだけど、また読みなおす。
    息の詰まるような文体である。吉村昭の小説が読めることは幸せなことだと思う。

  • 政治犯として無期懲役を食らったところ金を使い脱獄。
    行き先々で迷惑をかけながらも生き抜いていく生命力の強さは
    史実では傲岸不遜な長英先生を表しているといえなくもない。

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著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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