- 本 ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101117447
感想・レビュー・書評
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吉村昭の短編集。
短編とは言え読み応えは十分すぎる。
講釈師の島流から始まる島抜けは、講釈師という職業の凄さを想像させられる。
思いがけず漂流し異国に流れつき、企てでないにしても嘘に嘘を重ねていくしかなくなる。
あぁそのまま逃してやって…そう思わずにはいられない作品だった。
欠けた腕は飢饉に喘ぐ農民夫婦の話。
四つ足と、そんな言い方していたんだ…
そんなに不貞腐れるならと意地悪な考えをしたが死んでいるなんて。
食べるものがない、飢えるとは狂気だと考えさせられた。
梅の刺青も感慨深い作品。
献体に供したいと思う事があったが、今では足りており需要と供給が合わないと聞き諦めていた。
もう一度献体を考えたい、そんな気持ちにさせてくれた作品。 -
恐ろしいほどのテンポの良さ、ぐいぐい読ませる展開、全く隙がない。司馬遼太郎なら途中で著者の感想が入るとこだね。
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3つ作品の入った短編集であるが、標題の島抜けが分量的にもメイン。
吉村氏の得意分野である漂流もの、脱獄ものがミックスされたような内容で、短いながらも、とてもハラハラさられる話だった。
島流しされた人の生活は、わりと自由だったということを初めて知った。 -
★3.5
短編集
『島抜け』
天保改革の波に巻き込まれ、詠んだ講釈のために
島流しにされた講釈士・瑞龍。
『欠けた腕』
救いようのない飢饉に見舞われた甲斐国。
飢えと悲しみから逃れようとする夫婦の物語。
『梅の刺青』
幕末から明治にかけ医学進歩のため『腑分け』に
邁進する医師たちの物語。
相変わらず、吉村昭氏の作品は壮絶で過酷だ。
そしていつも、こうした史実に基づく物語の続きが嘆かれがちな今のこの世の中であり、それでもありがたいと思う事が出来る作品。
氏の作品に出会えた事にもいつも幸せだと思わせられる。 -
・9/15 読了.続けて漂流ものを読む.泳げない自分にしたら想像しただけで恐ろしいシチュエーションだ.自分なら無理して大海原に出ていかず陸地にいようと思うなきっと.
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講釈師の瑞龍は幕府を批判する講釈を読んだ廉でしょっぴかれ、島送りの沙汰が下った。大坂は開放的な街だったが、ちょうど享保の改革に当たり、見せしめみたいなものだったようだ。船で種子島に送られた。
島の暮らしは比較的自由で、海辺で貝拾いをしたり魚釣りをしたりした。ある日一緒に預けられている罪人二人とよそ村身体訪ねてきた者と四人で釣りに行った。ちょうど丸木舟がもやってあったのでちょいと拝借し沖釣りをした。浜で釣るより各段によく釣れた。
ところが途中で一人がこのまま島抜けしようと言い出した。宛てなく漕ぎ出したが、途中時化にも遭い十五日後に着いたところは清国の島であった。
何とか日本行きの大船に乗せてもらい長崎に着いた。ところが吟味を受けるため牢に入れられた。島抜けがバレたら死罪になる。今度は4人で牢抜けをした。みんな一目散にに逃げたがやがて種子島から島抜けした罪人だということが知れ、各地に手配書が配布された。瑞龍は大きな街を避け農家などに泊まり歩いていたが、あるところで岡っ引きに目を付けられ御用となった。
お白州では包み隠さす素直に白状したという。そして斬首された。
吉村昭の作品は、これまでに「漂流」「破船」など、漂流ものを読んでいる。今回の「島抜け」も一種の漂流である。次々に襲ってくる困難はスリルとサスペンスそのものである。読み出すとそのスリルにハマって行き、途中で止めてはいけないような気分になる。まるで推理小説のようだ。
「島抜け」の他に「欠けた椀」と「梅の刺青」の併せて3作品が収録されている。
「欠けた椀」は昔の飢饉の時の百姓たちの凄惨な生活ぶりを描いたもので、あまりに暗い物語だ。
「梅の刺青」は江戸時代末期から明治維新後の掛けて、わが国の医学の発展に欠かせなかった人体解剖の歴史をドキュメンタリー・タッチで描いている。実際に目前に見ているようなリアルさがあって引き込まれる。短編だが一本の映画に出来そうなストーリーだと思った。 -
【本の内容】
読んだ講釈が幕府の逆鱗に触れ、種子島に流された大坂の講釈師瑞龍。
島での余生に絶望した瑞龍は、流人仲間と脱島を決行する。
丸木舟で大海を漂流すること十五日、瑞龍ら四人が流れついた先は何と中国だった。
破船した漂流民と身分を偽り、四人は長崎に送り返される。
苦難の果て、島抜けは見事に成功したかに思えたが…。
表題中篇をはじめ、「欠けた椀」「梅の刺青」の三篇を収録。
[ 目次 ]
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☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
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