死顔 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (157ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101117515

感想・レビュー・書評

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  • 膵臓癌と舌癌の手術後の自宅療養において、自ら点滴管を外し、首下のカテ-テルをむしり取り、これ以上の延命を望まず、妻子に看取られて逝った【吉村昭】の遺作となった短編集です。九男一女の八男坊の著者は、兄姉の早逝、戦災下の父母の病死を見とどけ、自らは胸部形成手術で肋骨五本を切除しながらも執筆を続けた凄まじい生涯でありました。表題の『死顔』は、次兄の死を題材に著者の〝生と死〟の鬼気迫る心情を紙面に託した感極まる作品です。

  • 吉村昭、遺作短編集。
    吉村昭の死を見つめる、真摯な姿勢がよく分かる作品。
    自らの死期を悟っても、うろたえない姿が目に浮かぶ。
    作家で、夫人の津村節子による「遺作について」も、吉村昭のひととなりがよく分かった。

  • 兄の死を描いた作品を含む短編集。
    そして、著者の最期について夫人が綴ったものがある。
    吉村氏は兄の葬儀の際に、自分の死顔は子供たち以外に見せたくないと書いている。
    そして、それは実行された上、亡くなったことさえすぐには知らせないようにと徹底していたという。
    そのように、兄の死を描いた中にも、自分の時を考えているような節が見えていたように思う。

    2015.1.7



  • 新潮文庫 吉村昭 「死顔」

    「理想の死」をテーマとした遺作短編集。実際の著者の死(点滴とカテーテルを自ら抜いた死)が、正常な意思の中で行われた「理想の死」だったことがわかる


    多くの家族や友人の死を看取り、多くの人間の生を描いてきた小説家の「理想の死」が、尊厳死と呼べるのか?生の放棄なのか ?考えさせられる


    死顔を家族以外に見せないよう すぐ焼骨せよ、という願いも、人の死を知りすぎたゆえの配慮なのだろうか


    著者にとって「理想の死」
    *限界ぎりぎりまで 生きても苦しいだけだが、生きる努力を放棄すべきではない
    *死期を自ら悟ったのなら、延命措置はせず、薬服用と食の拒否により自ら死を迎える








  • ひとすじの煙
    二人
    山茶花
    クレイスロック号遭難
    死顔

  • 「死顔」吉村昭著、新潮文庫、2009.07.01
    159p ¥340 C0193 (2021.06.30読了)(2021.06.29拝借)

    【目次】
    ひとすじの煙
    二人
    山茶花
    クレイスロック号遭難
    死顔
    遺作について―後書きに代えて  津村節子
    解説  川西政明

    ☆関連書籍(既読)
    「戦艦武蔵」吉村昭著、新潮文庫、1971.08.14
    「零式戦闘機」吉村昭著、新潮文庫、1978.03.30
    「遠い日の戦争」吉村昭著、新潮文庫、1984.07.25
    「三陸海岸大津波」吉村昭著、中公文庫、1984.08.10
    「平家物語(上)」吉村昭著、講談社、1992.06.15
    「平家物語(下)」吉村昭著、講談社、1992.07.20
    「桜田門外ノ変 上巻」吉村昭著、新潮文庫、1995.04.01
    「桜田門外ノ変 下巻」吉村昭著、新潮文庫、1995.04.01
    「生麦事件(上)」 吉村昭著、新潮文庫、2002.06.01
    「生麦事件(下)」 吉村昭著、新潮文庫、2002.06.01
    「戦艦武蔵ノート」吉村昭著、岩波現代文庫、2010.08.19
    「彰義隊」吉村昭著・村上豊絵、朝日新聞、2005.08.19
    (「BOOK」データベースより)amazon
    生と死を見つめつづけた作家が、兄の死を題材にその死生観を凝縮させた遺作。それは自身の死の直前まで推敲が重ねられていた―「死顔」。明治時代の条約改正問題とロシア船の遭難事件を描きながら、原稿のまま残された未定稿―「クレイスロック号遭難」。さらに珠玉の三編を合わせて収録した遺作短編集。著者の闘病と最後の刻を夫人・津村節子がつづった「遺作について」を併録。

  • この書籍は、「死顔」「クレイスロック号遭難」など遺作短編集。

  • 歴史小説とは異なった著者の短編集。「ク号遭難」がここに含まれてるのがよくわからないが、一貫して死生観をテーマにしたもの。近い人の死を間近に見てきた著者の想いがよくわかる。家族は強い共同体で例え兄弟であっても一線を画すもの。死顔は家族以外に覗かれたくないもの。2019.6.1

  • P149
    短編5作品

  • なんかもう、言葉にならない。

  • 死というものを如何に捉えるか…。
    自分に問うた一冊。

  • 吉村昭の本は随分多く読みましたが、昨年7月の遺作だとのこと。最後に津村節子が書いていますが、自らの死を予感していたとしか思えないような死の翳がそこかしこに出てくる少し暗い本でした。次兄の死を迎えた老人とその直ぐ上の兄を主人公にした短編は吉村が自らの人生を振り返り、次兄の家族がその近親者だけで死を悲しむ姿勢を重んじようとする時間の流れと寂しさを痛感させるものでした。介護状態の夫を殺した老女の保護士を務めるこれまた老人の心境にも同じ寂しさを感じました。明治時代のロシア船遭難、不幸な母子の自殺、いずれも悲惨でした。

  • 大好きな作家だが、意外と生死にまつわる作品を読んでなかったので、ある意味新鮮だった。作者の生死感はなんとなく分かるが、実感がわかない。生死をさまよったことがないからであろう。
    年をとるにつれ、共感していくのかもしれない。

  • ぎりぎりまで切り詰めた簡潔で淡々とした文章で、死を見つめた静かな短編集。

  • 筆者の死生観をテーマにした短編集。

    “生”と“死”
    まるで両極端にあるものであるが、“死”というものは日常の中に当たり前に存在するのだということを感じさせられる一冊。

    病床で自身の先を冷静に見つめ、最後まで自分の意思で逝ったように思われる筆者が、美しく思えた。
    シンプルな語り口であるからこそ、読者次第で如何様にも読める本だと思いました。

    初めて、吉村昭氏の本を読んだけれど、導入がこの本で良かったと思っています。

  • 「戦艦武蔵」を読んで好きになりました。こちらは「死」をテーマにした遺作短篇集。
    「二人」と多分遺作の「死顔」は、どういう関係なんでしょう。
    「二人」はまだ推敲段階だったか、大筋は同じなんですね・
    私は、先に読んだからかどうかわかりませんが、「二人」の方が好み。
    このされた兄弟のやり取りは、こっちの方が好き。
    一気に読めました。

  • 吉村昭の妻津村節子が、夫の発病から死に至るまでを綴った「紅梅」を読み終え、また吉村作品を読みたくなりました。書店に行って、遺作短編集としてのこの本を見つけて読んでいます。

  • 2012.1.10(火)。¥340。
    2012.1.11(水)。

  • 兄弟の死に様。自分の死に様。同じテーマで何度も書く、ということ。

  • 商品情報にもあるように、本当に本当に、生と死を見つめ続けた作家なんだなと思った。
    あまりにも静かで深い死生観に打ちのめされる。あとからじわじわと効いてくる短編集。

  • 【目的】読書会に向けて
    【感想】おどろくほどシンプルな文章。平安時代の和歌を詠んだあとに万葉集を詠むよんだとき感じるような、そんなに愚直に表現していいものかと一瞬とまどうった。でも、その感覚は、慣れきった技巧的な文章との違いに違和感を感じただけであって、ただシンプルな文章は、それで良い。シンプルな文章は、比喩などで読み方の筋道が立てていられていない分、読者に感情が委ねられる。「兄弟の死に目を見届けなくては可哀相、死顔に手をふれたい、それが愛情を伝えることになる」という固定観念に一石投じられたように感じた。

  • 作者の死生観がとてもつたわる一冊。
    「冷たい夏、熱い夏」を読んで思うところあった方には
    是非これも読んでいただきたいです。
    自分の死を迎えることを、
    ずっとずっと考えていたのだろうと思いました。
    この本が、彼の「死顔」です。

  • 大学に入ってから、単純に冊数でみて誰の本を一番読んだかと考えてみると、実は吉村昭で、これが5冊目。特に吉村さんが好きという感想は持っていなかったのだけど・・・ これは吉村さんの最晩年の作品を集めたもので、表題作の死顔は最後まで推敲を重ねていたとか。吉村さんの死生観が凝縮された作品。栃木が、2個所もでてきてちょっと驚く。


  • 実話をもとに死についての価値観を描く。

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著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

吉村昭の作品

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