太陽の季節 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101119014

感想・レビュー・書評

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  • 生々しく見てはいけない昔の青春を見せつけられた作品。

  • どの短編もスッキリして終わるような話ではなかったが、表題の『太陽の季節』『ヨットと少年』は結末が非常に悲しいものだったが破天荒で無気力な若者感が溢れていてよかった。
    昭和30年代を題材にした作品なので拳闘やヨットの話というのは令和の時代になって読むと古い感じがするが、それはそれで昭和を感じられて面白かった。

  • 芥川賞選定に際して井上靖が、こんな青年現代に沢山いるに違いない、と述べたらしいが、内面に爆発的な負の感情を秘めた青年はそれこそ数え切れないほどいるだろう。そのエネルギーを拳闘に注ぐことは出来なかったのか。男運に恵まれない英子と出逢ってしまったがために、その捌け口を誤った方向にもっていかれたのかもしれない。

  • 同じ時代の同じ年代の人にしか見えない世界がある。だから、若者が書く若者の物語には、その時代の若者にしか見えない世界が描かれていて、それは時に、同じ時代を生きる別の年代の人には理解し難いものだったりする。
    この単行本に収められている物語(「太陽の季節」「灰色の教室」「処刑の部屋」「ヨットと少年」「黒い水」)も、当時の「年配者」には理解し難かったに違いない。
    ただ、ある特定の時代・年代の人に深く共感されることを「時代性」と呼ぶとしたら、僕はこれらの物語に「時代性」よりむしろ「普遍性」を強く感じた。

    確かにこれらが書かれた時代は、江戸末期以来久しぶりの“凪の時代”であり、その時代の若者に芽生えた感情は、それまでの“時化の時代”を生きてきた若者には持ち得なかった感情だったかもしれない。だから、当時はこれらが「時代性」の強い物語に映ったはずだ。
    しかし、それから50年以上、長い“凪”の時代が続いたことにより、これらの物語が持っていた「時代性」が「普遍性」へと変化したように感じるのだ。

    戦後以降、いつの時代の若者も同じように自分たちの時代を“特別な”凪の時代と捉え、過ぎ去った少し前の時化を羨ましく思いながら、冷めた空しさを抱えているのではないのだろうか。そして、いくら冷めていようが日々自分の奥から生まれてきてしまう熱を放出するために、刹那な快楽や暴力や危険に惹かれてしまうのではないのだろうか。

    凪も時化も人が作り出すもので、その大きな動力は若者である自分達であるはずなのに、それに気付き、そのあり余るエネルギーを社会に向けて放出できる人は、残念ながらとても少なく、多くの若者は時代を盾に刹那に逃げる。
    まぁ、僕もまたそんな大勢の若者のひとりだったのだが・・・。

    著者をやがて政界に向かわせた動力が、少しだけわかった気がした小説だった。

  • 「太陽の季節」は名前は知っていたが初めて読んだ。1955年に発表された作品。女を肉体としか見ていない竜哉が拳闘に夢中になり、奔放な女 英子に惹かれていく。男に弄ばれ、妊娠したら産めと言ったり、堕ろせという主人公。なんという身勝手な奴だと思う。男女の愛情のもつれというか共感出来なかった。2023年6月8日読了。

  • 石原慎太郎が亡くなった特集の文藝春秋で読んだ。
    芥川賞ということで、どこが評価されたのか、それを探る思いで読み進めた。時代は遡るが、刹那的で退廃的な雰囲気が漂う作品、苦労知らずのお坊ちゃんの火遊び的内容に、まぁそんなこともあるか、ぐらいの気持ちで読んでいったが、途中から許せなくなった。こんな自堕落な作品に共鳴して芥川賞を認めさせた作家群には呆れた。訴求する内容に、何ら建設的な意味合いがない。胸糞悪い、という汚い表現だが、まさにその言葉通りの作品である。

  • 読みにくくて全然頭に入ってこなかった…また改めて挑戦する事にします。

  • 女とは肉体の歓び以外のものではない。友とは取引の相手でしかない……。
    退屈で窮屈な既成の価値や倫理にのびやかに反逆し、若き戦後世代の肉体と性を真正面から描いた「太陽の季節」。最年少で芥川賞を受賞したデビュー作は戦後社会に新鮮な衝撃を与えた。人生の真相を虚無の底に見つめた「灰色の教室」、死に隣接する限界状況を捉えた「処刑の部屋」他、挑戦し挑発する全5編。

    【目次】
    太陽の季節
    灰色の教室
    処刑の部屋
    ヨットと少年
    黒い水

    5編収録。表題の太陽の季節より『ヨットと少年』『黒い水』が良かったと思いました。この本の影響は、なんと髪型にも影響を与えていた!?ようです。当時、石原慎太郎カットなるものが流行ったとのこと。サイドはスポーツ刈りで頭頂部は長め。ちなみにその前は震災カット(今でいうツーブロック)が流行っていたみたいです。

  • 2021年1月13日読了。
    都知事でもあった石原慎太郎。最近、僕のSNSのタイムラインでは彼の事を良く思わない人が多い。それは彼の古典的思想が現代にそぐわないからだと言う(風に僕には見える)。さて僕は彼に特別恨みは無いけれども、こんなにも良く思われていない彼は昔「太陽族」とも言われるブームを作った程なのだ。石原慎太郎を少し知りたいと思い読んだ。この頃良い具合で読む体力ついてたしね……

    結果として"太陽の季節"よりも同時収録されていた他の作品の方が印象深く残ったな。"灰色の教室"と"処刑の部屋"
    特に"灰色の教室"最後の場面で、女が階段から転げ落ちた時「やっぱり!」と思った。二人が子供を産むと覚悟した時から漂い始めた悲劇の匂いがぷんぷんとした。

    目に見えない何か"生の実感"を得たいと渇望する男達の話だと理解しました。

  • ちょっとだけ歴史を感じた作品です

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著者プロフィール

1932年神戸市生まれ。一橋大学卒業。55年、大学在学中に執筆した「太陽の季節」により第1回文學界新人賞を受賞しデビュー。翌年同作で芥川賞受賞。『亀裂』『完全な遊戯』『死の博物誌』『青春とはなんだ』『刃鋼』『日本零年』『化石の森』『光より速きわれら』『生還』『わが人生の時の時』『弟』『天才』『火の島』『私の海の地図』『凶獣』など著書多数。作家活動の一方、68年に参議院議員に当選し政界へ。後に衆議院に移り環境庁長官、運輸大臣などを歴任。95年に議員辞職し、99年から2012年まで東京都知事在任。14年に政界引退。15年、旭日大綬章受章。2022年逝去。

「2022年 『湘南夫人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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