けものたちは故郷をめざす (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.59
  • (15)
  • (23)
  • (40)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 309
レビュー : 26
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101121031

作品紹介・あらすじ

ソ連軍が侵攻し、国府・八路軍が跳梁する敗戦前夜の満洲。敵か味方か、国籍さえも判然とせぬ男とともに、久木久三は南をめざす。氷雪に閉ざされた満洲からの逃走は困難を極めた。日本という故郷から根を断ち切られ、抗いがたい政治の渦に巻き込まれた人間にとっての、"自由"とは何なのか?牧歌的神話は地に墜ち、峻厳たる現実が裸形の姿を顕現する。人間の生の尊厳を描ききった傑作長編。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 満州時代の経験が生きた佳作。哲学書じみた『終りし道の標べに』に比べると読みやすい。

    本作は、生と死の境目を綱渡りする決死の逃避行劇である。安部公房が生涯追い続けた「疎外」「人格の証明」といったテーマが既に表出している点が興味深い。また、夢や幻覚を用いた前衛的な雰囲気や、ひりひりするような現実的レトリックといった、後年の作風と繋がる面があるところも気になる。

  • 古風で、ぶっきらぼうな文体。

  • 敗戦直下の満州エリアを舞台としているが、今後の安部作品にはないリアリズム文体、語彙の豊富さが新鮮。冒険小説としても最大限おもしろい。おもしろいのだが、ラスト数行が安部印。現在、文庫版が絶版らしいのだか、これが一番好きという人もいるのではないか。

  • 『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』より。

  • 敗戦直後の満州から一度も見たことのない故郷、日本を目指して久木久三はソ連軍の元を発った。しかし、久三の旅はうまくはいかず、列車で出会った男とともに苦しみながら進んでゆく。

    ------------------------------
    安部公房の作品にしては非常にわかりやすい。まだ若いときに書いたものだからだろうか。楽しく読めた。これを読んだあとに布団で寝たりものを食べたりするといつもより幸せに感じる。

    このときから、閉じ込められていることと自由、荒野、社会から断絶された人間、といった、のちの作品に共通するような要素がある。

  • 絶望からの脱出、そして絶望。その絶望も脱出の序章なのか?安部公房の不条理無限ループ炸裂。
    光景の描写が本当に寒さや解放感を感じさせる。
    密会につながるテイストを感じた。

  • 古本屋のワゴンセールで100円で投げ売られているのを発見し、お迎えする。今は絶版なので書店では手に入れられないので長らく探していた。ネットでは価格が高騰しているため手が出ず……
    『終わりし道の標に』のようなとっつきにくい作品を予想していたので随分読みやすかった。公房のほかの作品とは少し毛色が違うけれど、公房作品に漂う不条理はここでも健在である。公房の満州時代の体験が生かされているのだろうな、と思う。タイトルがとても作品の雰囲気にあっていてよい。登場人物が少ないがその分濃密な人間ドラマが描かれている。

  • ヤマザキマリのオススメ本として紹介されましたので初めての安部公房。終戦直後の満州から日本へ帰国する壮絶な旅。生きることの無条件の渇望に勇気をもらう。

  • 他人を利用し、利用される。戦時中の不幸な話と片付けられるだろうか。平和な生活をしていても、命のやり取りまではしないというだけで、基底にはそういう精神が伏流水のように存在しているのではないだろうか。私たちもまた、けものなのだろうか。

  • レビューによると、本作品単作の文庫本は絶版らしく、残念です。
    安部作品の根底には、アイデンティティの追求がある。
    渇望するからこそ、の結末に、胸が苦しくなりました。きっと現実はこのようなものなのでしょう。

全26件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

安部公房(あべ こうぼう)
1924年3月7日 - 1993年1月22日
東京府北豊島郡滝野川町生まれ、満洲で少年期を過ごした。
1948年『終りし道の標べに』(「粘土塀」)により単行本デビュー。1951年「壁 - S・カルマ氏の犯罪」で芥川賞を受賞。その後は劇作も手がけた。1958年「幽霊はここにいる」で岸田演劇賞、1963年『砂の女』で読売文学賞、1967年『友達』で谷崎潤一郎賞、1975年「緑色のストッキング」で読売文学賞をそれぞれ受賞。他、受賞作多数。国内外に大きな影響を及ぼしており、ノーベル文学賞の候補者としても名前が挙がっていた。
主な代表作として『壁』『砂の女』『他人の顔』『箱男』など。

安部公房の作品

けものたちは故郷をめざす (新潮文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする