飢餓同盟 (新潮文庫)

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レビュー : 54
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101121048

感想・レビュー・書評

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  • 未読の安部公房を補完中。1954年発表ということは比較的初期の作品ですね。不条理、SF、公房らしい要素はもちろんあるけど、かなりファンタスティックな印象を受けました。キャラメル工場とか、廃バスに住む人形芝居師とか、尻尾の生えた男とか、そういう設定のせいかもしれないけれど、ちょっとした比喩表現がとても可愛らしかったりして。反面、雪深い閉鎖された町、余所者は飢え死にしてもかまわないという神「ひもじい様」、革命を企てる男の狂気などは、大江健三郎ぽい設定だなとも思いました。

    理想論を掲げ飢餓同盟を結成して仲間たちを率いる花井という男の、しかし根底にあるのは単なる復讐心。花井以上に荒んだ生い立ちなのに、自殺に失敗し、花井に利用されてあっけなく命を枯らしてしまう巻き込まれ型不幸体質の織木がとても不憫だった。ラストの森医師の独白が感慨深い。現実こそが間違いなくいちばん非現実的ですね。

  • 読んでいて登場人物たちの策略に嫌悪感がしてくるが、考えてみれば現実的な小説だと思う。
    織木が唯一、真面目な青年として最後まで描かれていたのは、読者として救いだった。

  • 自分が安部公房に期待するものは、日常に非日常が滲み出すようなふわふわとしたジャメヴュとSF要素なので、そこからは外れていたかなと思う。
    ただ、その分読み口は非常に軽く、諧謔味は他の作品より強かった。そこを気に入るかどうかは、完全に好みの域。個人的には嫌いではない。

    あくまで自分の意見だが、本書は安部公房の学生時代を戯画したものではないだろうか。
    筆者は学生運動にかなり入れ込んでいたと聞く。
    いわば回顧録のようなものだとすれば、なかなか興味深い。

  • 閉鎖された町、革命がテーマですが、読み進めるうちに小さな組織、例えばご近所付き合いとか学校とかに例えると理解しやすいかと思います。
    正気の革命なんてものは夢。
    だが、そこに魅せられてしまう者がいて、思いが強いと狂気になり、やがてそれは成功か不成功か、人為的なものもあるけど、この本では狂気、狂気、更に狂気。
    だけど、所々ギャグコミックのような描写に笑ってしまったりもする、いいエッセンスが加わりあまり苦がない作品だけど、個人的には結構難しかったので、また読み直したいと思います。

  • よくわからなかった。登場人物が誰が誰か把握するのも困難だったし、どういう人物かイメージもできなかった。なぜ花井がそれほどまでに飢餓同盟に執着するのかもイマイチ理解できなかった。
    自分に尻尾があるというコンプレックスなのか、仲間に対しての情があるのか?織田の遺書は鬼気迫るものがあったけど、それ以外はわりと読み流してしまった。田舎は怖いとこってこと?
    ドストエフスキーの悪霊をモチーフにしているとか。
    難しい。

  • 壁、箱男に比べてシュール度はかなり低いけど、出てくる人々はぶっ飛んでる。悲しくなる。

  • 「眠った魚のように山あいに沈む町花園。この雪にとざされた小地方都市で、疎外されたよそ者たちは、革命のための秘密結社“飢餓同盟"のもとに団結し、権力への夢を地熱発電の開発に託すが、彼らの計画は町長やボスたちにすっかり横取りされてしまう。それ自体一つの巨大な病棟のような町で、渦巻き、もろくも崩壊していった彼らの野望を追いながら滑稽なまでの生の狂気を描く。」(あらすじより)

    全体的にぱっとしない町の欲にまみれた、どろどろとした話。だらだら続く印象。安倍公房にしてはあまりおもしろくないが、人間に薬を飲ませて温泉の地下水脈を探査させ、それを楽譜にたとえて表すといった考えが奇抜で安倍公房らしさを感じる。

  • 閉塞感漂う「花園町」で共産主義的な革命を画策する者たちの哀愁劇を描く。”ひもじい同盟”という極めて貧相な名前から”飢餓同盟”へ名称を変え、地熱発電所を基軸に革命を試みるが・・・。

    作品全体に纏わりつくどんよりした暗い雰囲気と、あくの強い個性的な登場人物は安部公房ならではといえよう。ドストエフスキーの『悪霊』がベースにあるらしいが、当時の共産主義を担ぐ者たちに通ずるような、何かに飢えた者同士が至極脆弱な共同意志の下革命を目指すが虚しく瓦解する姿はなんとも滑稽である。

    本書で特に秀逸だったのは「患者に飢える」というくだりだ。患者の治療が医者の使命だが、その医者が患者に飢えるとはこれ如何に。本作のパラドックス的側面を巧みに表現した言葉と感じた。作者自身は本作をあまり好きではなかったようだが、安部作品のなかでは比較的分かりやすい物語かと思われる。

  • 話の筋は置いておくにしても、なかなかに理解が難しい作品だった。結末も救いがない。
    本筋とは外れるが、私は著者の日本語の使い方が非常に好きである。個人的には三島由紀夫よりも素晴らしいと思っている。

  • 飢餓同盟。革命のための秘密結社。

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著者プロフィール

安部公房(あべ こうぼう)
1924年3月7日 - 1993年1月22日
東京府北豊島郡滝野川町生まれ、満洲で少年期を過ごした。
1948年『終りし道の標べに』(「粘土塀」)により単行本デビュー。1951年「壁 - S・カルマ氏の犯罪」で芥川賞を受賞。その後は劇作も手がけた。1958年「幽霊はここにいる」で岸田演劇賞、1963年『砂の女』で読売文学賞、1967年『友達』で谷崎潤一郎賞、1975年「緑色のストッキング」で読売文学賞をそれぞれ受賞。他、受賞作多数。国内外に大きな影響を及ぼしており、ノーベル文学賞の候補者としても名前が挙がっていた。
主な代表作として『壁』『砂の女』『他人の顔』『箱男』など。

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