飢餓同盟 (新潮文庫 あ-4-4 新潮文庫)

  • 新潮社 (1970年5月27日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (272ページ) / ISBN・EAN: 9784101121048

みんなの感想まとめ

閉鎖された地方都市で、共同体から疎外された人々が集まり、理想を追い求める「飢餓同盟」を結成する物語です。彼らは地熱発電所の建設を目指し、さまざまな困難に立ち向かいますが、町の権力者たちや内部の対立によ...

感想・レビュー・書評

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  • 1954年に発表された、安部公房初の書き下ろし作品。
    過去に温泉で栄えた山あいの地方都市、花園町。地震をきっかけに温泉は途絶え、今では雪に埋もれたさびれた町に。
    キャラメル工事の主任・花井が中心となり、町内のよそ者たちが集結して結成された「飢餓同盟」。彼らは理想を叶えるための手段として、地熱発電所建設を計画します。
    町内を支配しているそれぞれの派閥の間で立ち回り共倒れさせようとしたり、メンバーを繋ぎ止めようとなだめたり…とにかく走り回って画策しまくる花井が忙しい。引きながらもついて行くメンバー達のキャラも濃い。
    とにかく花井がずっと尋常じゃないのと、メンバーの一人織木が体を張って地下を探る方法が…もう想像の範疇を超えてて頭が疲れてきます。(いい意味で)
    そして「まぁ、そうだよね…フー(脱力)」てな感じになるのですが…
    読みはじめは「登場人物多〜」と思ったのですが、これは大丈夫でした。
    ラストが異なるバージョンもあるとのこと。気になる〜

  • 安部公房の小説は、不条理とアイロニーと現実とのはざまでストーリーが揺れ動いて、話は面白いのだけど、大変難解な作品が多いとの印象を持っている。この作品はかなりわかりやすいと思うのだけど、それでも、全体を眺めると、大きなテーマが小さな世界に織り込まれていて、読み解くのは大変そうと思った。小説の舞台はスケールも小さく、舞台をみているようなドタバタ劇もあるんだけど、ストーリーを追うだけでは見えないものがいっぱいありそうな感じ。戦後の時期に隆興した現代文学の中でも、異彩を放っていると思う。
    以前、未読主要作品のまとめ買いをしたので、時折挑戦したいと思う。

  • 閉鎖された町、革命がテーマですが、読み進めるうちに小さな組織、例えばご近所付き合いとか学校とかに例えると理解しやすいかと思います。
    正気の革命なんてものは夢。
    だが、そこに魅せられてしまう者がいて、思いが強いと狂気になり、やがてそれは成功か不成功か、人為的なものもあるけど、この本では狂気、狂気、更に狂気。
    だけど、所々ギャグコミックのような描写に笑ってしまったりもする、いいエッセンスが加わりあまり苦がない作品だけど、個人的には結構難しかったので、また読み直したいと思います。

  • 既得権益者が政治経済を牛耳っている田舎町で、地熱発電所を建設して革命を起こそうという男とその同盟者?たちの物語。

    革命といいつつ、地熱発電の掘削場所探索の原理は胡散臭く、革命の思想はあやふや。男一人のドタバタ劇のようになり、結局は精神異常者と扱われてしまう。

    閉塞感のある組織に不満があるとき、権力を持たない者が一人でジタバタしてもうまくいかない、みたいなよくありそうな話で哀しい。

    口の重しには墓石と重い財布。

  •  とあるさびれた田舎町で、共同体から疎外されルサンチマンを抱えたはぐれものたちが、地熱発電所の建設を利用してアナーキーなユートピアを目指す「革命」を企てるが、町の支配者たちに発電計画を横取りされて瓦解・挫折するまでをユーモラスかつアイロニカルに描く。

     描かれる「革命」が政治的な陰謀というより、1人の夢想家の大博打に町が巻き込まれていく形で、「革命」の挫折の要因が権力の弾圧や革命勢力の内紛のようなありがちなものではなく、地方政治における諸勢力間の陰湿でせこいなれ合いや、法的な許認可や土地取引の経済的な駆け引きの敗北であるのが、単なる反ユートピア政治小説と一線を画している。初出は1950年代と古いが、ある意味、原発や大型レジャー施設の誘致に翻弄される地方の姿を予見したとも解釈でき、すこぶる現代性をもった小説である。

  • 未読の安部公房を補完中。1954年発表ということは比較的初期の作品ですね。不条理、SF、公房らしい要素はもちろんあるけど、かなりファンタスティックな印象を受けました。キャラメル工場とか、廃バスに住む人形芝居師とか、尻尾の生えた男とか、そういう設定のせいかもしれないけれど、ちょっとした比喩表現がとても可愛らしかったりして。反面、雪深い閉鎖された町、余所者は飢え死にしてもかまわないという神「ひもじい様」、革命を企てる男の狂気などは、大江健三郎ぽい設定だなとも思いました。

    理想論を掲げ飢餓同盟を結成して仲間たちを率いる花井という男の、しかし根底にあるのは単なる復讐心。花井以上に荒んだ生い立ちなのに、自殺に失敗し、花井に利用されてあっけなく命を枯らしてしまう巻き込まれ型不幸体質の織木がとても不憫だった。ラストの森医師の独白が感慨深い。現実こそが間違いなくいちばん非現実的ですね。

  • 1954年刊の書き下ろし。北日本の山あいの町で繰り広げられるドタバタ劇。山師と地熱発電、革命を目論む秘密結社、政治家どうしの利権争い……戦後数年経ったばかりの頃の地方の町なら、ありえたかもしれない。
    登場人物はみな個性的、総勢25名のキャスト。紆余曲折の展開があるので、日曜劇場のような連ドラに仕立てたら、けっこういけるかも。
    通俗小説のように書いてみるという作者の「実験」のようにも感じられる。哲学・文学・思想のニオイがないのもいい。もちろん、筋書きは緻密に計算されていて、細部ではいつもの安部公房らしさが顔を出す。たとえばギニョール人形劇が登場し(いわば劇中劇)、そこではシュールな展開があったりする。
    冒頭は、降りしきる雪のなか、下りの最終列車から大きなトランクをもった男が降り立つシーン。ここで読者の心をつかまえ、最後まで一気に読ませる。後半が駆け足なのが少し残念。
    (なお、新潮文庫版は改稿版。オリジナルとはエンディングが少し異なる。)

  • ユーモアかとおもえば、やはり狂気。途中訳がわからなくなり、なんともスッキリしない。あがきもがくわたしたちの中にある狂気と、解説にある。が難しい。

  • 自分達を不幸にする社会構造をひっくり返すという目的のために存在していた筈の手段が、目的へとすり替わっていく。
    最近も頻繁に見かける類の狂気かと思う、元は高い使命意識を持っていたであろう人々が、目的と手段を履き違えて頓珍漢な声を荒げ、白い目で見られる様は。
    そしてその活動すら、金持ちの金稼ぎに利用される様も、どこかで見覚えがあるなと思ってしまうのは穿った考え方だろうか。

    花井が革命に執着する気持ちはなんとなく分かる。
    飼い慣らされている、誰かに人生を掌握されているという、八方塞がりで前進も後退もしないことへの焦燥感だろうか。
    現状に甘んじていた方が楽であるにも関わらず、それでも八方塞がりからの脱出を試みる、これだけでは異常でも狂気でもないのだが…読後感には徒労感が付き纏う。

  • 花園という地名のよそ者には厳しい、とある田舎町。そこで町の権力者に対抗し、地熱発電の開発を目指す孤独でよそ者の集まり飢餓同盟が結成。同盟の代表者、花井は奔走するがメンバーは次々抜けていき、地熱発電の成果も権力者に横取りされてしまう。町自体が狂ったように描かれていた最後の場面が印象に残った。

  • ユートピアを目指すため革命を企てる男、花井の指導の下
    町からどこか外れた人々がなんとなく集まってできた飢餓同盟
    町の権力争いに巻き込まれてどんどん崩壊していく

    秘密結社による革命という目的をめぐって
    戦後の生きることに強烈な執着心を持った村人達がぶつかっていたり
    花井がずれてしまった目的のために狂っていき、そのため周りの人たちが離れていく様子が
    非現実な世界からとてもリアルな現実を突きつけてくる
    最終的に狂ってしまった花井は村社会の発展のための生け贄なのか?
    いろいろ考えさせられるのだが、何を考えさせられているのかまだ分からない


    地熱についての科学的な記述とか
    人間を計器にしてしまう想像力は安部公房ワールド全開で少し難解だった
    “ひもちび”とか“ウルドック”なんていうもじりの言葉遊びが面白い。
    複雑に絡んだ人間関係や権力関係、よくここまで作れるなぁ。

  • 読んでいて登場人物たちの策略に嫌悪感がしてくるが、考えてみれば現実的な小説だと思う。
    織木が唯一、真面目な青年として最後まで描かれていたのは、読者として救いだった。

  • 山間の花園町で、「ひもじい」と阻碍されたよそものたちが、革命のための秘密結社「飢餓同盟」を結成し、権力への夢を地熱発電に託して動き始めるのですが、革命を起こすどころか崩壊していく物語です。

    読んだ印象を一言で言うと、「怖い話だなー」でした。


    最初、花井についてなんとも思わなかったのですが、次第に彼が嫌いになりました。話すことが夢想的すぎる上に、人に対しての態度がイライラしました。
    さすがに、途中から、アレ・・・おかしいな・・・?と思ったんだけれど、やっぱり壊れてしまいました。それがとても怖かったです。
    織木さんも可哀相だな、気の毒だな・・・と思っているうちに。


    私の読解力の問題かもしれませんが、登場人物が多すぎて、ちょっと混乱しました。
    しっかり見れたのは、森さんと織木さんくらいかな・・・。
    そして、「幸福」「健康」「うるわし」といった奇妙な名前(呼び名)。
    何か意図があったのでしょうか・・・。

    最後のメッセージが、ちょっと物足りないという印象を受けました。


    それから、まったくもってメインの内容ではないんですが、季節の描写が美しくて、驚歎しました。
    全体的に暗い内容だったので、それがやたら印象的に思えました。

    もう一度しっかり読み直したいんですが、当分の間は読みたくないので、またそのうちに気が向いたら読んでレビューを書き直します。
    壊れっぷりが怖い作品でした。

  • 「飢餓同盟」というなんとなく空虚な団体(前の名は「ひもじい同盟」)の元、理想が野望になり、崩壊する。温泉、地熱発電のために薬品を飲んで死に至る者、狂人となる者。非現実な事が今後も起こらないこともない事を示唆する。2026.5.26

  • タイトル買い。
    今まで読んだ中で1番読みやすかった。

    全員特出して狂っているわけでもなく、どこにでもいる人間なのが虚しい。育つ環境や生きる場所の大切さを感じつつ、ひとつの町のエピソードとしてそこまで深入りせずサクッと読める。
    ラストの医者の語りが、夢から冷めたなような距離感をうむ。

    『儚い』というほど綺麗でもない、後味のわるさが良い

  • 最初から医者(間違いで連れてこられた)の語りで進められていく方が良かったかな

  • 面白かった⁉️

  • 社会革命の縮図の中で各人の思惑が多角的に照らされている。枠組みを変革するという目的が権実世界の中でその枠組みの中で規定されてしまう。

  • 阿部公房にしては薄暗く重苦しく湿度の高い作品となっている。革命という大義名分を振りかざして小賢しく運動を進めようとする勢力が結局はお山の大将的エスタブリッシュメントに崩され取り込まれてしまうという元も子もないストーリー。いつの世もどこででもどこか聞いたことがあるようなお話でした。

  • 全部おもしろい。
    “まったく、現実ほど、非現実的なものはない。この町自体が、まさに一つの巨大な病棟だ。”

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著者プロフィール

安部公房
大正十三(一九二四)年、東京に生まれる。少年期を旧満州の奉天(現在の藩陽)で過ごす。昭和二十三(一九四八)年、東京大学医学部卒業。同二十六年『壁』で芥川賞受賞。『砂の女』で読売文学賞、戯曲『友達』で谷崎賞受賞。その他の主著に『燃えつきた地図』『内なる辺境』『箱男』『方舟さくら丸』など。平成五(一九九三)年没。

「2019年 『内なる辺境/都市への回路』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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