- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101121055
感想・レビュー・書評
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予言機械は、さまざまな情報をインプットすることで、非常に正確な予言をやってのけ、タイムマシーンと称されて話題を呼んだ。
この機械を使って未来を予言しようと研究を始めたのが、勝見博士の研究室であった。街で偶然みつけた、平凡な男を機械にかけ、その男の未来を予測しようという計画を立て、博士と助手が男を尾行するが、その翌日、男が殺されたというニュースが伝えられる。そして、殺人犯として捕まっている女性を、予言機械にかけようと彼らが試みたところ、今度はその女性も殺されてしまった。
しかし、これらはすべて仕組まれたことだった。
博士の知らないところで、人類の未来がすでに機械によって予言されており、その未来に備えるための準備が、知らないところでちゃくちゃくと進められているのであった・・・。
安倍公房のとてつもなさを思い知らされる作品だ。
未来を予言されて、知ることで、未来は少し変わる。それを繰り返すことで社会がどうなるのか、未来への準備のために行われているとてつもない研究・・・ありえない事柄ばかりなのに、生暖かい現実感をともなって描かれている。未来とはなんなのか、を考えさせられる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
なぜか近所の本屋で平積みされていた。
作者は劇作家でもある。舞台、背景がカチッと決まった中でストーリーが展開する感覚がする。筋書きは乱暴な気がするが、あくまで主題が目玉。
昭和30年代前半の作品であるが、予言機械・人類改造とSF的主題は当時からあまり変わらない。カオス理論のせいか予言機械の方は流行らなくなったかもしれないが。 -
好きな長篇。
サスペンス色が強く緊迫した雰囲気が、主人公と同調していく様で面白い。
作者の先見の明という点で有名な本作だが、やはりこの時代でこの作品を生み出した安部公房は怪物という他ない。当時描かれていた未来を、現代から答え合わせ様々な考証が出来る有意義な一冊。 -
生物学や科学やなんだかんだの専門的知識は持ち合わせてないけれど、それでも書かれている内容は理解できるしスリルと隣り合わせのストーリーには引き込まれる一方。
唯一理解できないのは、これが約60年も前に書かれた小説だという一点のみ。代表作しか読んだことなかったけれど、安部公房って凄すぎじゃない? -
【未現実】
小説です。
いま創造するとおそらく別の未来になるでしょう。 -
安部公房は特殊な場面設定(このためしばしばSFと分類される)を行い、その中で人間という存在の不確かさを表現し続けてきた。
この作品でも、予言機械を開発した研究所所長と、その人格を入力され、さらに将来の姿を知った仮想人格(予言機械)の対決というふしぎな形でそれが示されていく(”他人の顔”は整形された人間の人格が変わる話しだし、名刺に人格をとられるといった寓意短篇もある)。
安部公房は私が高校時代に読み漁った小説家であり、20代までに何度か読み返し、その都度楽しんだ記憶がある。しかし、今回読み返してあまり大きな感動を得なかったのは、ストーリーを記憶していた為だろう。なぜなら、安部公房の作品はエモーショナルな楽しみや、文体云々で評価される作品ではなく、その寓意性の中で遊ぶ作品であり、その結果ストーリーが読めてしまうと楽しみが半減してしまう。
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私には合わなかった一冊。
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難解な作品が多い安部公房の中ではたいへん読みやすい一冊。
未来を予言できる機械が、やがて自分を追い込んでいってしまう。50年前に書かれたとは思えない現代的SFホラー。 -
知らずに読んだけれど、日本で本格SFをやったハシリだとか。
奇妙な世界にいつのまにか巻き込まれていくストーリー展開は、これまで読んだ安部公房作品に通じるものがある。
当初は自分自身が開発した未来予言機の研究存続のためにやっていたことが、最終的には、人工生物とか、地球そのもののあり方が変わるかもしれない未来予想とかに繋がっていくのは予想外。
読みやすいけれども濃厚なSF描写と、自分の認識が揺らいで混乱させられる世界観で、脳がこねくり回された。この読み味はやっぱりすごいし、唯一無二だと思う。
演劇と小説を行き来する作家だけあり、舞台でやっても映えそうなセリフと、シュールさもよかった。
未来予言を突き詰めると、一個体の人間の再現までできるという描き方には恐怖しかなかった。