第四間氷期 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 2010
感想 : 179
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101121055

感想・レビュー・書評

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  • なぜか近所の本屋で平積みされていた。

    作者は劇作家でもある。舞台、背景がカチッと決まった中でストーリーが展開する感覚がする。筋書きは乱暴な気がするが、あくまで主題が目玉。

    昭和30年代前半の作品であるが、予言機械・人類改造とSF的主題は当時からあまり変わらない。カオス理論のせいか予言機械の方は流行らなくなったかもしれないが。

  • 安部公房は特殊な場面設定(このためしばしばSFと分類される)を行い、その中で人間という存在の不確かさを表現し続けてきた。
    この作品でも、予言機械を開発した研究所所長と、その人格を入力され、さらに将来の姿を知った仮想人格(予言機械)の対決というふしぎな形でそれが示されていく(”他人の顔”は整形された人間の人格が変わる話しだし、名刺に人格をとられるといった寓意短篇もある)。
    安部公房は私が高校時代に読み漁った小説家であり、20代までに何度か読み返し、その都度楽しんだ記憶がある。しかし、今回読み返してあまり大きな感動を得なかったのは、ストーリーを記憶していた為だろう。なぜなら、安部公房の作品はエモーショナルな楽しみや、文体云々で評価される作品ではなく、その寓意性の中で遊ぶ作品であり、その結果ストーリーが読めてしまうと楽しみが半減してしまう。

  • 未来を予言する機械が発明された近未来。そこでAIの話になるのかと思いきや、なぜか殺人事件に巻き込まれ、あげく胎児ブローカーだの水棲生物研究所だの、突拍子もない組織が絡んでくる。もちろん最後にひとつに繋がるのだけれど。

    SFとして読もうとすると難しい。不条理だと思ったほうが自分にはしっくりくる。要は南極の氷が溶けて地上がほとんど水没する未来に、人類が生き残るためには水棲人間になるしかないということ。

    作品全体のテーマとは関係ないのだけど、主人公が妻の堕胎に無頓着なことが終始心の片隅に引っかかってしまった。思いやる言葉のひとつもなく、そもそも胎児の命を奪うことに全く罪の意識を感じていないところが。

    そういうところも含めて、主人公ではなく彼を騙していた部下たちのほうに共感してしまったのだけれど、作品のテーマ的にはそっちのほうが人類としては正解ということでいいのかな?

  • 私には合わなかった一冊。


  • 未来を受け入られられるタイプの人間と受け入れられないタイプの人間がいた。

    予言による混乱を避けるべき予言機械の正式な了解が避けられる中、世界が水没する未来を受け入れ水棲人の育成をする人達もいた。

    本が出版されたのは高度経済成長期。資本主義•工業化•田園風景の都市化が起こり、世の中の仕組みも街並みも大きく変わっていった時期である。

    今までの常識が覆されていく世の中であった。
    そんな中でどう立ちまわるのか。未来に対して否定的なタイプと肯定的なタイプでの議論がなされていた事だろう。

    2021年、新しい生活様式と言った言葉が流布する中現代に生きている人々に対しても、問題提起をされているように感じた。

  • 胎児ブローカー

  • 予言機械を発明した博士目線で進む物語。
    ホラーチックなところもあり、驚かされることもあり、物語に引き込まれました。やや難解な部分もあるが、そこがまた自分自身、世の中に対して、改めて目を向けて考えに耽る、、、そんな時間が持てて良かったです。

  • あとがきの言葉が印象的だった。
    「現在から未来を肯定も否定もできない。未来の方が現在を裁く」みたいなことを言っていた。
    その通りだなとも思ったけど、なんかしんどいなと思った。

    小説の内容も気味の悪さとなんかいいなという感じが同時に来る感じがあって、こんがらがった。
    それでいて、頭の中はずっと静かだった。

  • 昔読んだ本

  • 中学の理科の先生が、人間の胎児の成長が生物進化をなぞっている件で、この本の話を説明してました。

著者プロフィール

安部公房
大正十三(一九二四)年、東京に生まれる。少年期を旧満州の奉天(現在の藩陽)で過ごす。昭和二十三(一九四八)年、東京大学医学部卒業。同二十六年『壁』で芥川賞受賞。『砂の女』で読売文学賞、戯曲『友達』で谷崎賞受賞。その他の主著に『燃えつきた地図』『内なる辺境』『箱男』『方舟さくら丸』など。平成五(一九九三)年没。

「2019年 『内なる辺境/都市への回路』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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