水中都市・デンドロカカリヤ (新潮文庫)

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  • 新潮社
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本棚登録 : 1216
レビュー : 102
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101121079

感想・レビュー・書評

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  • 表題2作。
    ひどくシュールな漫画を読んでいる気持ちになる。
    水中都市にしても、デンドロカカリヤにしても
    「ある枠」をはめて物語を一層意味深くしている。この作者、物一つ眺めてからの創造力が桁外れだ。モノづくりにとってはネタの宝庫かもわかりませんね。

  • 政治色の濃い短編集。「言うまでもなく、ドレイがドレイらしくなり、支配者が支配者らしくなること、そのためにはドレイの力を分裂させる必要がある。神兵たちは結局海賊にすぎない」という一行が読後も日常に潜む影のようにじわじわと重低音で響いてくるようで、本書の中ではちょっと毛色の違う『イソップの裁判』はデマで裁かれてしまう世の風刺が印象深い。ユーモラスに欠ける、とあとがきには書かれているけれども、不穏な空気が漂う昨今の世界情勢とその背景に目を向けたとき何度か読み返したくなる作品でもあると思う。それから強烈なのが『闖入者』で、ある集団に寄生された宿主のその悲劇には、民主主義を背景にしたマイノリティの末路が一欠片の救いもなく描かれており、絶望感と嫌悪感で読んでいてもの凄く疲れる内容。死へと追い詰められていく主人公の姿に、悪夢から目覚めることなく逝ってしまった人の不条理を生々しく味わうことになり、また次のターゲットを求めて移動していく搾取側の姿からは、まるで稲を食い尽くしたイナゴの飛蝗(西部劇でみられる惨状にも似ている)が思い浮かんで不快極まりない。人の世の本質が純粋に抽出されているような作品群に思えた。

  • シュールレアリズムは理解するよりも、何かを右脳的に感じれば良いのだろうか。。難しい。

  • 読書会で紹介された本です。
    こちらの表紙は「デンドロカカリヤ」っぽいですが、読んだ本の表紙は「水中都市」っぽいので古いバージョンなのかな。
    面白かったです。
    「デンドロカカリヤ」「手」「詩人の生涯」「水中都市」が好きでした。
    人が植物や魚になったり、世界が凍りついたり水中に沈んだりする、不思議な世界が楽しかったです。水中都市で空中を泳いでみたいです。魚は怖いけど。
    「闖入者」はとてもブラックで怖かったです。結末が辛い。
    安部公房は寓意があるのかどうかよく分からないですが、このよく分からない感じを楽しむので良いのかなと思います。
    解説がドナルド・キーンさんでした。読者に私なりの「解釈」を押し付けるのは遠慮したい、という姿勢、わたしも気を付けていこうと思いました。合掌。

  • 独特の軟い文体に馴染めず、きちんと読めなかった。この文体は村上春樹に近いのかなあ

  • あまりに抽象的すぎて、今の私には読むのが苦痛だった。カフカの影響を受けているということはわかった。

  • 安部公房は以前別のを読もうとして全く入り込めなかった過去があったので避けてたけど、今回これを読んでみたらすごく面白くてすらすら読めました。

    シュールで不思議な雰囲気で、社会や政治への風刺が多い短編集だったかなという印象です。
    とんでもなくシュールってわけでもなく入り込みやすい気がします。
    後味は全体的に良くはないですね。ハッピーエンドではない…。

    『デンドロカカリヤ』が一番好きで、『手』『闖入者』あたりも好きです。

    これを機に安部公房作品もっと読んでいきたいなぁ。

  • なかなかグロい表現も散りばめられてましたが,読みやすい寓話集でした。
    空中楼閣の場面展開が一番ついていけなかった感じ。
    闖入者のあまりにも傲慢というか無慈悲というかそういうテイストは生理的にキツイです。
    水中都市と鉄砲屋がスイスイ読めました。
    「男は一生に一度妊娠して死を産み出す」が一番強烈な節だったなぁ。

  • 安部公房の短編集で、やはり不思議な世界観が詰め込まれた作品です。砂の女や箱男を気に入った人が読むと、この世界感がついていけない人が多いと思う。最近、小説は安部公房ばかりを読んでいて、その世界感と文体に想像の仕方になんだか変な癖ができてしまった。濃いメタファーの味付け料理で、なんだか舌が飽きてしまったような気がする。安部公房の作品はとても好きなのだけれど、どれも作品の根底にあるものが似ている気がしてならない。これは村上春樹にも感じる感覚。色んな深海に潜っても、見える世界は同じというか。

  • なんだかおかしな話ばかりだなぁ、という印象。ドナルド・キーンさんが解説で言っているように「深く考えず、まずは感じろ!」ということかな。
    この本に収録された作品の中では、『手』が好きだ。なんとなくオスカー・ワイルドの『幸福な王子』を思い出した。
    社会を皮肉っているのかな、と思う箇所もところどころあったが、それが話の主軸ではない感じ。人が植物になったり、魚になったり、なんだこりゃな展開があるかと思えば、突如ハッとする文章が織り込まれていたりして気が抜けない。読む人読む人それぞれ違った感じ方ができる作品たちだと思う。私は漠然とだけど「怖い」と感じた。何が、と言われると困るのだが、たぶんこの変な話の中だけでなく現実でだって理不尽でおかしなことはたくさんあるのに、それを「変だ」と思わず当たり前のこととして受け入れているだけなんじゃないのか、と言われている気がするからかも。

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著者プロフィール

安部公房(あべ こうぼう)
1924年3月7日 - 1993年1月22日
東京府北豊島郡滝野川町生まれ、満洲で少年期を過ごした。
1948年『終りし道の標べに』(「粘土塀」)により単行本デビュー。1951年「壁 - S・カルマ氏の犯罪」で芥川賞を受賞。その後は劇作も手がけた。1958年「幽霊はここにいる」で岸田演劇賞、1963年『砂の女』で読売文学賞、1967年『友達』で谷崎潤一郎賞、1975年「緑色のストッキング」で読売文学賞をそれぞれ受賞。他、受賞作多数。国内外に大きな影響を及ぼしており、ノーベル文学賞の候補者としても名前が挙がっていた。
主な代表作として『壁』『砂の女』『他人の顔』『箱男』など。

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