無関係な死・時の崖 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101121086

感想・レビュー・書評

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  • 中高生の頃に好きな作家で生誕100年ということで書店の棚に飾られていたので手に取ったが(590円)、家の本棚を見てみるとあり(360円)ました(笑)。
    後半に配置されている表題作まできて”読んだな”と思い出したので、当時も文庫を購入したが表題作だけを読んだのかもしれない。
    表題作以外では列車の待合室から始まる『誘惑者』、自分は火星人だと言う男絡まれる『使者』、おかしなリクエストを受ける不動産設計士の『賭』、壁の穴から覗く『なわ』が面白かった。

    • 土瓶さん
      あるあるですね~。
      買ったら見つかる謎の現象。
      私の場合は買った後の図書館でよく見つけます(笑)
      あるあるですね~。
      買ったら見つかる謎の現象。
      私の場合は買った後の図書館でよく見つけます(笑)
      2024/05/04
  • 再読。
    初めて読んだのは10年くらい前で表題作の「無関係な死」以外は印象が薄かったのだけど、今回は他の作品もじわじわ楽しめた。
    特に面白かったのは複雑な構造のビルが登場する「賭」、盲目の恋に警鐘を鳴らす(鳴らしてないか)「人魚伝」、ボクサーの孤独な戦いを描いた「時の崖」、そしてもちろん表題作の「無関係な死」。

    安部公房さんの小説に私はいいように振り回されてしまう。
    モグラ叩きやらワニワニパニックやらのようにあっちかと思ったらこっち、その次の瞬間にはまた別のところにいる。
    その混乱が不思議と癖になる。
    短編は混乱の度合い(?)がちょうど良い気がする。
    これが長編になるとまた大変で、以前は読み切れなかった。
    またチャレンジしてみよう。

  • ゲームクリエイターの小島秀夫は、私たちの世代(±10歳ぐらい)に大きな影響を与えていると思う。私が学生の頃、3Dアクションゲームのブームだった。それぞれ「アクション」ゲームではなく、異なるジャンル名を名乗っているが、『バイオハザード』『メタルギアソリッド』『サイレントヒル』……。これらは映画などに大きな影響を受けて作られている。バイオは当然『ナイトオブザリビングデッド』や『バタリアン』など全ゾンビ映画だし、サイレントヒルはスティーヴンキング作品。

    小島秀夫の『メタルギアソリッド』は、ジョンカーペンターの『ニューヨーク1997』『エスケープフロムLA』。それにリボルバーオセロットはリーヴァンクリーフがモデル。ジョンカーペンターやマカロニウエスタンは直撃世代ではないから、間接的に秀夫に教えてもらった。
    2019年発表の『デスストランディング』がヒットしているとのことで、NHKの星野源と本田翼の『ゲームゲノム』と、switchインタビューに小島秀夫が出演していた。秀夫が言うには、安部公房の『なわ』の、「なわ」と「棒」に影響を受けたとのこと。

    『なわ』を収録した短編集だと紹介されていたのが『無関係な死・時の崖』で、タイトルに聞き覚えがあるなあ……と思って探したところ、持ってたー!積読したまま忘れていた!安部公房は『壁』『砂の女』『第四間氷期』を読んだのみだが、好きな作家で、ハマっていた頃に数冊買っていた。
    『砂の女』は映画版も観たが、とても良かった。監督は安部公房の盟友、勅使河原宏で、この人は『新座頭市』の最後の2話も手がけている。座頭市のTVシリーズがアート映画だと言う理由のひとつ。たぶん『燃えつきた地図』を勝新主演で作っているからじゃないかなと思う。

    この短編集の読後感を大雑把に言うと、「カフカ+星新一」という感じ。安部公房はカフカに大きな影響を受けているし、星新一とは互いに意識し合う仲だったそうだ。星新一と明確に違うのは長さ、そしてエンタメか否か、ラストのオチ。
    この短編集の作品には一応オチをつけているが、私はアンチオチ派なところがある。オチを取ると、たぶんカフカの未完の作品のように、その世界を永遠にぐるぐると回り続けるようになってしまうのではないかと思う。オチも、あまりすっきりはっきりしないもので、エンタメ小説ではない。

    オチは『ウルトラマン』で言うところのウルトラマンで、ウルトラマンが怪獣を倒さなければ、怪獣(不条理な存在)は延々と暴れ続けることになる(一応、科特隊はいるが)。オチとはそういうものだと思っている。
    ついでに、安部公房とウルトラマンの共通点はシュルレアリスム。関連したネーミングがブルトンやダダ、ワイアール星人の元ネタはマックスエルンストだったと思う。

    さて小島秀夫が影響された『なわ』だが、たしかに引用された内容は最後にあるものの、小説本編で使われる意味とは真逆だった。たぶんこれは安部公房の作家性で、皮肉や実存を問う部分だと思う。秀夫がテレビで語っていたような「深イイ話」風なものではまったくない笑。

    『なわ』にはとある場面があり、三島由紀夫の『午後の曳航』と共通している。『なわ』の方が3年ほど早い。また、この後にたまたま本谷有希子の『江利子と絶対』を読むことになるのだが、それはまた別の話。

    全体的に、以前読んだ他の作品の方が面白く感じたので☆4つ。共通して感じるのは「現代都市生活者の孤独と存在の不確かさ」で、これは『砂の女』など他の作品とも共通だと思う。目に浮かぶのはオリンピック前の昭和の情景。

    収録作品、『夢の兵士』『誘惑者』『家』『使者』『透視図法』『賭』『なわ』『無関係な死』『人魚伝』『時の崖』。安部公房は、SF、ファンタジー、推理小説、戦争、ホラー、すべてごちゃまぜな純文学だと思う。
    この中で好きな作品は『家』『人魚伝』『時の崖』など。『家』は家父長制についてと、カフカの『変身』同様、介護問題に通じるようなホラー。『人魚伝』はモチーフが人魚なので、最近のポーランド映画『ゆれる人魚』や、エヴァのリリス、シンゴジラの尻尾などを連想。『時の崖』はなんとボクシング、スポーツもの。どの短編も初読よりも、二度三度と繰り返し読む方が面白く感じるかもしれない。


    メモその1
    冨田勲と渡辺宙明先生が早い時期にシンセサイザーを導入した……と書いたが、安部公房も同時期に所持していたひとり。安部公房はメカが好きで、理系と文系が合体しためちゃくちゃ頭が良い人だと思う。

    メモその2
    司馬遼太郎『アメリカ素描』のあとにたまたま読んだだけだが、晩年の安部公房と司馬遼太郎は親密な関係だったそうだ。安部公房が晩年に構想していた作品は「アメリカ論」で、「チョムスキー風に言えば、学習無用の普遍文化。コカ・コーラやジーンズなどに代表される、反伝統の生命力と魅力をもう一度見直してみたい」。『アメリカ素描』に書かれていたこととも繋がるので、読んでみたかった……。

  • 代表作『砂の女』を書いていた時期に並行して書かれたいくつかの短篇作品を収録したものです。『砂の女』を思わせる、黴臭いくらいの和のテイストを感じる作品もありますし、初期の作品から続くテイストであろう想像力がぶっとんでいるおもしろい作品もあります。『なわ』なんていう残酷なものもあり、読み手をひとつところに停滞させず、そればかりか揺さぶってくる短篇集になっていると思いました。

    とくに「人魚伝」という作品に夢中になれました。沈没船の探索中にであった緑色した人魚に恋する話ですが、一筋縄では終わらない。この作品もそうなのですけれども、既視感を覚えることなく、「いままさに知らない物語のなかにいる!」ということのわくわく感がとてもよいです。自分の知らないものや、自分にとって新しいものに触れている喜びがあります。そして、ぶっとんでいながらも、読むのに耐えうる弾性を備えている作品群でした。

  • 文学的挑戦に富んだ短編集。文学を解体して、再構築しているような難解さがありつつも、エンタメ小説としても全く古びない力強さと、奇妙でじっとりとしていてニヒルな感触が印象的だった。

  • 10個の短編集。
    物語も訳のわからないもので、解説も多少難解だが、面白かった。
    『透視図法』の『盗み』は、自分が相手の荷物を盗み出そうとしていたら、相手も同じ考えだった話。
    『人魚伝』の、彼女を捕まえていたら、実は自分が飼われていた話でゾッとした。
    など、現実にありそうにない話に引き込まれた。
    不思議な世界観だが楽しめた。

  • 表題作と『なわ』は一読の価値あり。
    砂の女と同時代の作品集にという事で、不条理・不愉快要素が強く自分は大変楽しめた。

  • 安部公房のSFじみた短編小説群。純文学然とした冒頭作品で油断したが、2本目からは本領発揮の幻想なのかミステリなのかという話が続く。

    帰宅し、アパートのドアを開けたら、見ず知らずの男の死体が転がっている。さてどうするか。警察に届けたら、自分が犯人にされてしまう。アパートの他の住人に押し付けるには、死体を運ばなくてはならぬ…(無関係な死)。

    いやいや、油断した。2本目「誘惑者」で気づくべきだったのだ。安部公房じゃないか。死体が有っても犯人など出てこないし、3階から階段を降りたら4階に着くのだ。比喩をこねくり回したり、理屈をまぜっかえしたりなど不要。これぞ安部公房という短編である。

    「使者」は名作「人間そっくり」の初期プロットなのであろうし、「賭」は「密会」をコメディにしたような作品である。中でも「人魚伝」は完全なるSFであり、メカニズムまで作り込まれている点は、そんじょそこらの中途半端なSF作品より出来が良い。

    読んでいて、つげ義春や諸星大二郎、高橋葉介などの作品を思い浮かべる人もいるかも知れない。逆に、そういう作品が好きな人は必読の1冊である。

  • 次々に登場する、一見ふつうの人のようで頭のおかしなことを言う人たち。会話を交わしていくうちに、こちらの正気が怪しくなってくる。そんな不条理さを存分に味わえる。

  • ◆パス「波と暮らして」→ディキンソン「早朝、犬を連れて」を読み、無性に「人魚伝」を読み返したくなり、再読。
    ◆1957年〜64年に発表された初期短篇10篇。小説でいうと「砂の女」〜「他人の顔」の頃か。
    ◆飛び込んできた不測の事態によって、現実だと思い込んでいた世界は揺すぶられ歪み崩れ落ちる。元の世界が虚構なのか、この事態が虚構なのか。現実を取り戻そうと足掻く主人公はどちらの世界からも滑り落ち、居場所を剥奪され世界の狭間に取り残される。◆読み終えた私に残されるのは、主のいない帽子・白々とした床・緑色過敏症だけ…
    ◆はぁ、やはりこの悪夢のような世界観に魅了される。◆ゾクゾクするのは初読時から変わらず、「夢の兵士」「家」「人魚伝」。特に「人魚伝」は「すると、ぼくは、緑色に恋をしてしまったのだろうか?」…この一文だけでもKO。

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著者プロフィール

安部公房
大正十三(一九二四)年、東京に生まれる。少年期を旧満州の奉天(現在の藩陽)で過ごす。昭和二十三(一九四八)年、東京大学医学部卒業。同二十六年『壁』で芥川賞受賞。『砂の女』で読売文学賞、戯曲『友達』で谷崎賞受賞。その他の主著に『燃えつきた地図』『内なる辺境』『箱男』『方舟さくら丸』など。平成五(一九九三)年没。

「2019年 『内なる辺境/都市への回路』 で使われていた紹介文から引用しています。」

安部公房の作品

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