砂の女 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 14089
感想 : 1502
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101121154

作品紹介・あらすじ

砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める部落の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開のなかに、人間存在の象徴的な姿を追求した書き下ろし長編。20数ヶ国語に翻訳された名作。

感想・レビュー・書評

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  • 安部公房の一貫した格式高い黒描写に芸術性を感じる。異臭漂い、暗く、砂混じりの監禁生活に一種の危うさしかない。砂丘へ昆虫を採集しに行く二木順平。一晩の宿がなく一軒家に宿泊するがそこで始まる監禁生活。二木の脱出を企てる執着心、しかし脱出できない。一軒家に住む女性は砂を愛し砂掻きに満足する生活。二木と砂の女の心情の在り様が二木の不条理を助長する。二木が発見した溜水装置、監禁不条理の中でも人間というのは何かに執着し、生きがいを感じて生きていくものなのか。砂の女との性交渉は彼が「生」を確認できる時間なのだろう。⑤↑

    • ゆうママさん
      砂の女、読み終わったのですね。私は、ゆ~ッくりなので、まだ1/3位残っています。笑
      砂の女、読み終わったのですね。私は、ゆ~ッくりなので、まだ1/3位残っています。笑
      2021/05/08
    • ゆうママさん
      読書メーター、ググッたらすぐに出てきました。このまま、ここを押したら・・・・と思いながらスマホとにらめっこしています。
      読書メーター、ググッたらすぐに出てきました。このまま、ここを押したら・・・・と思いながらスマホとにらめっこしています。
      2021/05/08
    • ポプラ並木さん
      ゆうママさん、こんにちは。砂の女、楽しんでくださいね。感想楽しみにしていますね。読書メーターは焦らずで良いと思います。何かわからないことがあ...
      ゆうママさん、こんにちは。砂の女、楽しんでくださいね。感想楽しみにしていますね。読書メーターは焦らずで良いと思います。何かわからないことがあれば聞いてくださいね。ゆうママさんが読書を楽しむのが一番の目的ですのでね!
      2021/05/08
  • これほど不気味で理不尽な小説に、かつて出会ったことはない。
    独特の比喩表現が、物語をもっともっと不気味にする。

    監禁状態とも呼ばれる状況に置かれた人間から、溢れ出る剥き出しの感情、暴力、妄想。

    おそらく誰でも、主人公と同じ状況に置かれたら、こんな気持ちになるんだろう。

  • ある男が失踪する。
    昆虫採集に行くと告げて出て行ったが
    ある集落の人々の罠にかかり
    彼は砂の穴の中に暮らす女と生活することになる。
    砂の壁は登ることができず外には出られない。
    穴は村の人間が管理・監視しているため逃亡は更に困難な状況である。

    冒頭、男が失踪し死亡扱いになったことが読者に告げられる。これがなんともその後の「何があったのか?」についてを読む進める際「元の生活に戻った」と言う結末を排除し、閉塞感をもたらす。

    最初、主人公に重ねてそれでもどうやったら脱出できるかという、心で読むのだけどだんだんこの状況を受け入れている女の感覚に近いものも自分の日々の暮らしに存在している気がしてきて脂汗をかきはじめる。
    抜け出したいも、考えないも両方存在する。

    読み進めると女は考えてないのではなくて、完全に穴の中の生活を受け入れて好きなことが少しわかる。
    でも、二人を自分に置き換えるとちょっと穴の中にいないのに怖くなってくる…私は穴の中にいないんだよね?
    ………いるのかもしれない

    サササッと読んでしまったが、場面場面の意味を考える余韻が残り続けている。

    追記:なんかわからないけど途中から想像する「男」が森山未來になってた。

  • -罪がなければ、逃げるたのしみもない-

    男は扉の開けられた牢屋に帰った。
    女を愛したのか。いつでも自由になれると感じたのか。
    もう自由の中にいたのだろうか。汗と水。砂の女。

    この作品にはどこか私たちの生活が投影されてはいないだろうか。
    社会を恨み、虚しさを感じ、仕事の意義を考え、時に己の良心の軽薄さを受け入れる。
    妥協さえも含んでいる結末をただただ安直に受け止めるには、まだ時間がかかりそうだ。

  • とても怖かった。
    本を閉じ、少し経って思考が整理され、
    この怖さを知っていると思った。

    宗教に入信していくときの心境変化。
    そんな夢を見たことがある。
    逃げられない状態に置かれ、気づいたときには、
    もうここに居よう、ここに居ればいいんだと思っている。
    今でも思い出す怖い夢。

    この本を読む私は怖さを感じているが、
    男はもうあわてて逃げだす必要を感じていない。
    ここも、実は何かの本の中かもしれない。

    手段と目的が区別されないのは
    横に流れる時間を縦に暮すようなものであり、
    そうするとミイラになるという。(p.199)

  • 昔は今よりも本当に男主義社会だったんだな。
    ファンタジーなんだけど、やけにリアルに描かれているので
    本当にありそうな印象を与える。
    人間、自分のため、利益のためならどこまでも残酷になれる生物なのだな。
    諦めと慣れは人を同じ場所に留めさせる。
    それが社会ってことなのでしょうかね。
    そうなったらチャンスが来ても動けない人間になってしまうのかもしれない。
    人間の内面が表れている作品でした。

  • 難しかったけど読み終えた。自分の読解力のなさが情けない…。初・安部公房。砂が生き物のようでこわいと思ったけど、東北で例えるなら砂じゃなくって「雪」だと思ったら、こわさも感じなくなった。


    このお話…昭和の東北田舎、祖父母時代の排他的村社会みたいだと思った。配給はなかったけど「モッコ」(←!一番驚いた!㊟青森や秋田の戒めの言い伝え。幼い時はすごく怖ろしく感じる。ナマハゲは実体があるから物理的に怖いけどモッコは実体がないので、心理的に怖さ倍増)、部落、村八分、五分つき…息苦しかったけど読むのが止まらなくなった。


    古代から脈々と続く生命のリズム、性って生なんだなぁ~とも思った。(こういうとこが芸術作品みたいなのかな…)生殖とか繁殖とかギラギラしてないから読みやすかった。


    この本に「PTA」という単語が出てきたので、この時代にもPTAという言葉があったなんてー!と、そっちの方が衝撃的だった。


    主人公のキレっぷりと冷めた女の対応が、うちの夫婦ケンカみたいで可笑しい、どこもこうなのかな…ある意味ホッとした。“いずれ男というものは、何かなぐさみ物なしには、済まされないものだからと納得し、それで気がすむというなら、けっこうなことである”(225ページ)は、なるほどなぁ…と勉強になった。なんとなーく、どこか色川さんの狂人日記を思い出したりもした。


    窒息しちゃいそうだけど数回読まないと理解できないかも。難しいけど面白かった。ぐいぐい読んでしまった。庄内砂漠で撮影されたという映画が見たいな♪映像から入った方がきっとわかりやすい。


    青森や山形の砂防林、砂との戦いがこの作品のベースになっていると分かって、すごくうれしくなった。少し東北スピリッツみたいなものを感じると思っていたので親近感がわいた。(読んでいる途中“おしん”も思い出したりしたので…)

  • 怖い。
    文学作品なのでしょうが、ただただ恐ろしかった。
     
    主人公の男は、とある部落の罠に落ち、砂穴の底にある一軒家に閉じ込められてしまう。そこに住む女と共に。
    さながらアリ地獄に捕まったアリのよう。
     
    とにかくその砂だらけの生活が、現実にすぐそこにあるかのような描写です。
    まるで作者がその状況を経験したことがあるかのように。
    読んでいる間中、喉がカラカラに渇きました。
     
    高名な昔の文学作品ですが、とても読みやすかった。
     
    帰省先から戻るときに船上で手に取った一冊でした。

  • 安部公房「砂の女」
    この感動なかなか言葉で上手く表現することが出来ない。それほどこの作品に圧倒された。

    あらすじとしては、主人公の男が昆虫採集にある砂丘の村落を訪れるのだが、その村民に嵌められ自力では出れそうにないほど深い砂の窪地に建つ1軒家に住む女との生活を余儀なくされる話である。

    まず物語として極めて秀逸である。普通に推理小説のような感じで読むことも出来るし、その裏の意味を深く追求していく楽しみもある。作者自身の経験や思想を私小説的にでは無く、非日常的な世界を通して無駄を削ぎ落とし洗練された構成で書くことで芸術性がより付加されているように感じる。そして何より安部公房の比喩の豊富さ、正確さには驚かされた。

    自分が主人公のような体験することを想像するとゾッとしてしまう。けれど、厭世的な部分もある主人公の男は物語の最後穴の生活を強制されるのではなく自ら望んで送るようになる。あれほど自由を求めて穴からの逃亡を謀った男の「価値観の転倒」は読み進めていくほどに所々現れてくる。最後の男の真逆の心理に至るまでの過程は圧巻である。

    この物語を自分の現在の生活に引き付けて考えてみた。今コロナウイルスによって自粛を余儀なくされ、この穴の生活のように自由を拘束された生活を送っている。確かに自粛が始まった当初は友達と会えなくて辛いという感情が沸き起こっていたが、今となってみると外の世界の生活の嫌な部分も感じはじめて、この家の中に縛り付けられて読書ばかりして自分の内面と向き合っている生活に少し快楽を覚え始めてきた部分もある。

    恐ろしいことだが、自分も主人公の立場に立てば、望んで穴の生活を送ろうとするのかもしれない。

  • 読み返してみると改めて凄みのある怖さ。口の中が渇いてざらざらとした砂の感触さえ感じるような…

    昆虫採集のため、休暇をとって砂丘を訪れた男。部落の人々の勧めに従い、砂丘の底にある一軒家で宿を借りることにしたのだが…

    家には30前後の女がひとり、絶え間なく降ってくる砂を掻きながら生活していた。粗末なものではあったが、歓待を受け、微睡む男。彼が目覚めたとき、縄梯子は取り払われていた…

    蟻地獄に捕らえられた蟻さながら、もう男は砂穴から出られない。理不尽さに怒り、なんとか脱出を試みる男…

    男と女が一対一。力では女が男に敵う訳はないし、いくらでも脱出のチャンスはあるだろうと思ったが、砂による監禁は男の体力も気力も次第に削いでいく…

    先日、10年間にわたり、男に拘束監禁されていた女性3人が米オハイオ州で救出された。日本でも10歳の頃に監禁され、9年ぶりに救出された女性がいる。

    長い年月の間、犯人側にふと気が緩んだ瞬間はなかったのか、その隙をついて助けを求めたり、脱出のチャンスはなかったのか…と第三者である私などは考えてしまうけれど、きっと彼女らは囚人としての生活に慣れ、また慢性的な暴力による支配に、逃げ出す気力さえ奪われていたのだろう。

    自由を奪われたものは「しばらくの間」それを取り戻そうと躍起になる。が、あまりにもその状態が続けばその不自由さにも慣れ、それを生活として受け入れる。『砂の女』…読後にざらりとしたものが残る。

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著者プロフィール

安部公房
大正十三(一九二四)年、東京に生まれる。少年期を旧満州の奉天(現在の藩陽)で過ごす。昭和二十三(一九四八)年、東京大学医学部卒業。同二十六年『壁』で芥川賞受賞。『砂の女』で読売文学賞、戯曲『友達』で谷崎賞受賞。その他の主著に『燃えつきた地図』『内なる辺境』『箱男』『方舟さくら丸』など。平成五(一九九三)年没。

「2019年 『内なる辺境/都市への回路』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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