砂の女 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 14879
感想 : 1555
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101121154

作品紹介・あらすじ

砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める部落の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開のなかに、人間存在の象徴的な姿を追求した書き下ろし長編。20数ヶ国語に翻訳された名作。

感想・レビュー・書評

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  • 安部公房の一貫した格式高い黒描写に芸術性を感じる。異臭漂い、暗く、砂混じりの監禁生活に一種の危うさしかない。砂丘へ昆虫を採集しに行く二木順平。一晩の宿がなく一軒家に宿泊するがそこで始まる監禁生活。二木の脱出を企てる執着心、しかし脱出できない。一軒家に住む女性は砂を愛し砂掻きに満足する生活。二木と砂の女の心情の在り様が二木の不条理を助長する。二木が発見した溜水装置、監禁不条理の中でも人間というのは何かに執着し、生きがいを感じて生きていくものなのか。砂の女との性交渉は彼が「生」を確認できる時間なのだろう。⑤↑

    • アールグレイさん
      砂の女、読み終わったのですね。私は、ゆ~ッくりなので、まだ1/3位残っています。笑
      砂の女、読み終わったのですね。私は、ゆ~ッくりなので、まだ1/3位残っています。笑
      2021/05/08
    • アールグレイさん
      読書メーター、ググッたらすぐに出てきました。このまま、ここを押したら・・・・と思いながらスマホとにらめっこしています。
      読書メーター、ググッたらすぐに出てきました。このまま、ここを押したら・・・・と思いながらスマホとにらめっこしています。
      2021/05/08
    • ポプラ並木(上下巻とも800ページ本に挑戦中)さん
      ゆうママさん、こんにちは。砂の女、楽しんでくださいね。感想楽しみにしていますね。読書メーターは焦らずで良いと思います。何かわからないことがあ...
      ゆうママさん、こんにちは。砂の女、楽しんでくださいね。感想楽しみにしていますね。読書メーターは焦らずで良いと思います。何かわからないことがあれば聞いてくださいね。ゆうママさんが読書を楽しむのが一番の目的ですのでね!
      2021/05/08
  • 第一章は、松本清張かと思われる様なミステリアスの幕開けとなり、数ページで物語に引き込まれる。
    そして、理論的な砂の描写と、詳細な昆虫の写実に 現実に戻される。

    教師である男が休暇を使い昆虫採集にやってきた砂丘の部落。深い砂穴の一軒、未亡人が住まう家に軟禁され、砂掻きという労働を余儀なくされる。
    男の混迷と逃亡の生活が始まる。

    恐ろしいものは、砂だけではない。「愛郷精神」を掲げる村人の集団意識。過酷な砂との生活に日常性を認める女。そして、逃亡を企て続けた男が、砂との生活の中で日常性を受け入れ、希望らしきものまで認識していくその慣習性。

    砂は、現代社会の比喩とされるが、砂のあるがままとして読んでも充分に思考するものがある。
    「罪がなければ、逃げる楽しみもない」副題ともいえるこの一文は、社会生活への従順性の表現なのか
    初めて読んだのは、いつだったかも忘れてしまったけれど、読書の嗜好性を決定された一冊です。

  • これほど不気味で理不尽な小説に、かつて出会ったことはない。
    独特の比喩表現が、物語をもっともっと不気味にする。

    監禁状態とも呼ばれる状況に置かれた人間から、溢れ出る剥き出しの感情、暴力、妄想。

    おそらく誰でも、主人公と同じ状況に置かれたら、こんな気持ちになるんだろう。

  • ある男が失踪する。
    昆虫採集に行くと告げて出て行ったが
    ある集落の人々の罠にかかり
    彼は砂の穴の中に暮らす女と生活することになる。
    砂の壁は登ることができず外には出られない。
    穴は村の人間が管理・監視しているため逃亡は更に困難な状況である。

    冒頭、男が失踪し死亡扱いになったことが読者に告げられる。これがなんともその後の「何があったのか?」についてを読む進める際「元の生活に戻った」と言う結末を排除し、閉塞感をもたらす。

    最初、主人公に重ねてそれでもどうやったら脱出できるかという、心で読むのだけどだんだんこの状況を受け入れている女の感覚に近いものも自分の日々の暮らしに存在している気がしてきて脂汗をかきはじめる。
    抜け出したいも、考えないも両方存在する。

    読み進めると女は考えてないのではなくて、完全に穴の中の生活を受け入れて好きなことが少しわかる。
    でも、二人を自分に置き換えるとちょっと穴の中にいないのに怖くなってくる…私は穴の中にいないんだよね?
    ………いるのかもしれない

    サササッと読んでしまったが、場面場面の意味を考える余韻が残り続けている。

    追記:なんかわからないけど途中から想像する「男」が森山未來になってた。

  • 怖い。
    文学作品なのでしょうが、ただただ恐ろしかった。
     
    主人公の男は、とある部落の罠に落ち、砂穴の底にある一軒家に閉じ込められてしまう。そこに住む女と共に。
    さながらアリ地獄に捕まったアリのよう。
     
    とにかくその砂だらけの生活が、現実にすぐそこにあるかのような描写です。
    まるで作者がその状況を経験したことがあるかのように。
    読んでいる間中、喉がカラカラに渇きました。
     
    高名な昔の文学作品ですが、とても読みやすかった。
     
    帰省先から戻るときに船上で手に取った一冊でした。

  • -罪がなければ、逃げるたのしみもない-

    男は扉の開けられた牢屋に帰った。
    女を愛したのか。いつでも自由になれると感じたのか。
    もう自由の中にいたのだろうか。汗と水。砂の女。

    この作品にはどこか私たちの生活が投影されてはいないだろうか。
    社会を恨み、虚しさを感じ、仕事の意義を考え、時に己の良心の軽薄さを受け入れる。
    妥協さえも含んでいる結末をただただ安直に受け止めるには、まだ時間がかかりそうだ。

  • とても怖かった。
    本を閉じ、少し経って思考が整理され、
    この怖さを知っていると思った。

    宗教に入信していくときの心境変化。
    そんな夢を見たことがある。
    逃げられない状態に置かれ、気づいたときには、
    もうここに居よう、ここに居ればいいんだと思っている。
    今でも思い出す怖い夢。

    この本を読む私は怖さを感じているが、
    男はもうあわてて逃げだす必要を感じていない。
    ここも、実は何かの本の中かもしれない。

    手段と目的が区別されないのは
    横に流れる時間を縦に暮すようなものであり、
    そうするとミイラになるという。(p.199)

  • 昔は今よりも本当に男主義社会だったんだな。
    ファンタジーなんだけど、やけにリアルに描かれているので
    本当にありそうな印象を与える。
    人間、自分のため、利益のためならどこまでも残酷になれる生物なのだな。
    諦めと慣れは人を同じ場所に留めさせる。
    それが社会ってことなのでしょうかね。
    そうなったらチャンスが来ても動けない人間になってしまうのかもしれない。
    人間の内面が表れている作品でした。

  • 安部公房「砂の女」
    この感動なかなか言葉で上手く表現することが出来ない。それほどこの作品に圧倒された。

    あらすじとしては、主人公の男が昆虫採集にある砂丘の村落を訪れるのだが、その村民に嵌められ自力では出れそうにないほど深い砂の窪地に建つ1軒家に住む女との生活を余儀なくされる話である。

    まず物語として極めて秀逸である。普通に推理小説のような感じで読むことも出来るし、その裏の意味を深く追求していく楽しみもある。作者自身の経験や思想を私小説的にでは無く、非日常的な世界を通して無駄を削ぎ落とし洗練された構成で書くことで芸術性がより付加されているように感じる。そして何より安部公房の比喩の豊富さ、正確さには驚かされた。

    自分が主人公のような体験することを想像するとゾッとしてしまう。けれど、厭世的な部分もある主人公の男は物語の最後穴の生活を強制されるのではなく自ら望んで送るようになる。あれほど自由を求めて穴からの逃亡を謀った男の「価値観の転倒」は読み進めていくほどに所々現れてくる。最後の男の真逆の心理に至るまでの過程は圧巻である。

    この物語を自分の現在の生活に引き付けて考えてみた。今コロナウイルスによって自粛を余儀なくされ、この穴の生活のように自由を拘束された生活を送っている。確かに自粛が始まった当初は友達と会えなくて辛いという感情が沸き起こっていたが、今となってみると外の世界の生活の嫌な部分も感じはじめて、この家の中に縛り付けられて読書ばかりして自分の内面と向き合っている生活に少し快楽を覚え始めてきた部分もある。

    恐ろしいことだが、自分も主人公の立場に立てば、望んで穴の生活を送ろうとするのかもしれない。

  • 著者の作品は初読みとなり、古い作品ではあるが、ようやく手にとりました。

    発行は昭和56年2月25日、約40年前の作品ですが、まったく古さを感じませんでした。

    一貫して感じたのは色のない灰色と黒色の世界観。

    昆虫採取が趣味な主人公が新種を追い求め訪れた砂丘で砂の穴に埋もれていきます。

    そこから始まる砂穴の底で始まるのは砂穴の底にかろうじて立ち続けるボロ屋で暮らす女性と主人公の生活。

    砂かきを続けながら何度となく脱出を試みるも、砂穴の底からは抜け出せない。

    まさに負のスパイラルに陥った主人公。

    主人公を引き止めようとするボロ屋の女、脱出を妨害する村人たちといったまるでサスペンス映画のような設定で、リアルに情景が浮かび、砂が動く音を感じることが出来ました。


    説明
    内容紹介
    欠けて困るものなど、何一つありはしない。

    砂穴の底に埋もれていく一軒家に故なく閉じ込められ、あらゆる方法で脱出を試みる男を描き、世界二十数カ国語に翻訳紹介された名作。

    砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める村の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開のうちに、人間存在の極限の姿を追求した長編。20数ヶ国語に翻訳されている。読売文学賞受賞作。
    内容(「BOOK」データベースより)
    砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める部落の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開のなかに、人間存在の象徴的な姿を追求した書き下ろし長編。20数ヶ国語に翻訳された名作。

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著者プロフィール

安部公房
大正十三(一九二四)年、東京に生まれる。少年期を旧満州の奉天(現在の藩陽)で過ごす。昭和二十三(一九四八)年、東京大学医学部卒業。同二十六年『壁』で芥川賞受賞。『砂の女』で読売文学賞、戯曲『友達』で谷崎賞受賞。その他の主著に『燃えつきた地図』『内なる辺境』『箱男』『方舟さくら丸』など。平成五(一九九三)年没。

「2019年 『内なる辺境/都市への回路』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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