砂の女 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 1285
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101121154

作品紹介・あらすじ

砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める部落の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開のなかに、人間存在の象徴的な姿を追求した書き下ろし長編。20数ヶ国語に翻訳された名作。

感想・レビュー・書評

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  • 難しかったけど読み終えた。自分の読解力のなさが情けない…。初・安部公房。砂が生き物のようでこわいと思ったけど、東北で例えるなら砂じゃなくって「雪」だと思ったら、こわさも感じなくなった。


    このお話…昭和の東北田舎、祖父母時代の排他的村社会みたいだと思った。配給はなかったけど「モッコ」(←!一番驚いた!㊟青森や秋田の戒めの言い伝え。幼い時はすごく怖ろしく感じる。ナマハゲは実体があるから物理的に怖いけどモッコは実体がないので、心理的に怖さ倍増)、部落、村八分、五分つき…息苦しかったけど読むのが止まらなくなった。


    古代から脈々と続く生命のリズム、性って生なんだなぁ~とも思った。(こういうとこが芸術作品みたいなのかな…)生殖とか繁殖とかギラギラしてないから読みやすかった。


    この本に「PTA」という単語が出てきたので、この時代にもPTAという言葉があったなんてー!と、そっちの方が衝撃的だった。


    主人公のキレっぷりと冷めた女の対応が、うちの夫婦ケンカみたいで可笑しい、どこもこうなのかな…ある意味ホッとした。“いずれ男というものは、何かなぐさみ物なしには、済まされないものだからと納得し、それで気がすむというなら、けっこうなことである”(225ページ)は、なるほどなぁ…と勉強になった。なんとなーく、どこか色川さんの狂人日記を思い出したりもした。


    窒息しちゃいそうだけど数回読まないと理解できないかも。難しいけど面白かった。ぐいぐい読んでしまった。庄内砂漠で撮影されたという映画が見たいな♪映像から入った方がきっとわかりやすい。


    青森や山形の砂防林、砂との戦いがこの作品のベースになっていると分かって、すごくうれしくなった。少し東北スピリッツみたいなものを感じると思っていたので親近感がわいた。(読んでいる途中“おしん”も思い出したりしたので…)

  • 読み返してみると改めて凄みのある怖さ。口の中が渇いてざらざらとした砂の感触さえ感じるような…

    昆虫採集のため、休暇をとって砂丘を訪れた男。部落の人々の勧めに従い、砂丘の底にある一軒家で宿を借りることにしたのだが…

    家には30前後の女がひとり、絶え間なく降ってくる砂を掻きながら生活していた。粗末なものではあったが、歓待を受け、微睡む男。彼が目覚めたとき、縄梯子は取り払われていた…

    蟻地獄に捕らえられた蟻さながら、もう男は砂穴から出られない。理不尽さに怒り、なんとか脱出を試みる男…

    男と女が一対一。力では女が男に敵う訳はないし、いくらでも脱出のチャンスはあるだろうと思ったが、砂による監禁は男の体力も気力も次第に削いでいく…

    先日、10年間にわたり、男に拘束監禁されていた女性3人が米オハイオ州で救出された。日本でも10歳の頃に監禁され、9年ぶりに救出された女性がいる。

    長い年月の間、犯人側にふと気が緩んだ瞬間はなかったのか、その隙をついて助けを求めたり、脱出のチャンスはなかったのか…と第三者である私などは考えてしまうけれど、きっと彼女らは囚人としての生活に慣れ、また慢性的な暴力による支配に、逃げ出す気力さえ奪われていたのだろう。

    自由を奪われたものは「しばらくの間」それを取り戻そうと躍起になる。が、あまりにもその状態が続けばその不自由さにも慣れ、それを生活として受け入れる。『砂の女』…読後にざらりとしたものが残る。

  • ぶっちぎりで面白かった。
    今年は没後20年に当たるそうで、そのせいか書店で見かけた帯には「ノーベル賞受賞目前だった」というようなことが書かれていて、思わず苦笑してしまったけど・・・さもありなん。

    僕が読書を始めた理由は、自分よりも多く本を読んでいるはずの友人(女性)が「太宰(=昔の純文学、という意味で)とかよく読めるな・・・」と言っていたことへのささやかな反撥心からでした。
    いや、それまで全然読んだことなかったのだけど。
    そもそも純文学と大衆文学、ミステリ、ラノベにそこまでの差があるんかいな?と疑わしかったので。そこに線を引いて先入観を持ちたくない。
    だから反撥したくなる。

    この『砂の女』はまさにそんな作品でした。
    質の高いミステリ、スリラーでもある。
    映画で言うと、一頃流行った『ソウ』なんかの
    ソリッドシチュエーションスリラー、脱出もの。

    だけどそれだけじゃないよね。
    「それだけじゃない部分」がほんとに良い。
    現代人の「生きる意味とは?」という問いを、
    喉元まで鋭く突きつけてくる。
    この作品が発表された頃は、まだ戦後の焼野原の記憶が皆にあって
    今や「あたりまえ」になってることが「あたりまえじゃない」、
    半々ぐらいの時期。

    そう考えると、この作品を読んで「あたりまえのことしか書いてないじゃん」と
    もし今の我々が思ってしまうとしたなら、
    それは完全に「砂」に飲み込まれているのかもしれない。
    怖い。

    主人公の職業も、科学的思考も全部ツボ。
    趣味が昆虫採集で、新種を見つけて歴史に名を刻みたがってるんだけど、
    これって現代で言うところのオタクだよなあ。
    行動も思考も完全に。

    昭和初期の文学と比べると、これは'60年代の作品なので非常に読み易かった。
    安部さんの文章の巧みさもあって、すらすら読めました。


    余談その1
    映画版は岸田今日子だそうで、あまりにハマり過ぎてる。
    その昔、岸田さんが主演の『この子の七つのお祝いに』という映画がありまして・・・
    これも幼い頃のトラウマ映画のひとつ。

    余談その2
    これ、『沈黙』『フラニーとゾーイー』と同時にブックオフで
    新品同様を一冊100円でDigしたんだけども、
    昔の表紙は安部公房の奥さんの真知さんが描いたもの。
    現在は本人の撮った写真のやつに変えられてますが、
    これは昔のやつの方が絶対に良いのになあ・・・。
    晩年は不仲だったそうで、そのせいかもしれないですが
    新潮といいハヤカワといい、どうしてこうも昔の良い表紙を
    改悪してしまうんだろうか・・・。
    購買意欲が削がれるよ、ほんと。

  • もう20年以上ぶりに再読~

    はじめて読んだとき
    なんだか腑に落ちない様な読後感で、
    好きだとも嫌いだとも思わず、
    なのに、あまたの大掃除、2回の引っ越しにも負けず
    ずっと私の本棚に並び続けている不思議な本!

    今回、電車でこの本を表紙むき出しで
    吊革につかまって読んでいたら、
    向かいの座席に座っていた男の人が
    すごく「はっ!」とした顔をして、
    私の読んでいる本の表紙を
    凝視したまま固まっていたのだけれど、
    一体、ど う し た の よ ?

    いつか砂の女と同衾した記憶でも甦ったのかしらん?
    貴方はあの村に迷い込み、とらわれ、
    そして逃げおおせた唯一の方?

    ストーリーは知らない方は
    ほとんどおられないとは思うけれど、一応。

    昆虫採集の為、休みを利用して
    ある県の砂丘にでかけた男は、
    村人にだまされて砂穴の底にある家に閉じ込められる。

    読んでいる間中、
    どうしてこんなに砂にまみれた生活を
    リアルに描けるのかな?と…

    安部先生は砂の中で暮らしたことがあるのかな?

    実際、砂の中で暮らしたら違うのかも知れないけれど、
    現実味がすごい。

    口の中に砂が入ってきたり、
    体に砂がついてかゆくなったり、
    色々が湿ってぶよぶよになったり、

    きりがない!もう、嫌だ!!
    すーっとする空気が、吸いたい!!!

    加えて私は閉所と暗所と狭所の恐怖症がある為、
    そこも辛かったわ!

    ラストは相変わらず「ふーむ…?」だけれど、
    そして「…そうなるのかも…?」だけれど。

    引き続き、私の本棚にいることになりそう、この本!

  • これほど不気味で理不尽な小説に、かつて出会ったことはない。
    独特の比喩表現が、物語をもっともっと不気味にする。

    監禁状態とも呼ばれる状況に置かれた人間から、溢れ出る剥き出しの感情、暴力、妄想。

    おそらく誰でも、主人公と同じ状況に置かれたら、こんな気持ちになるんだろう。

  • 文体も内容も構成も褪せていない小説。あらすじをざっくり見て、ミザリー的な話なのかと思っていたけれど、本当に恐ろしいのは砂漠にいる女ではなく周囲にいる人々の存在(=社会のメタファーなんだろうか)だった。『ロリータ』みたいに冒頭に結末を明かす話だけれど、最終的な主人公の行動は妙にうなずけてしまう。上手いと思った。勅使河原宏の映画版もぜひ観たい。

  • この本を読んでいる間ずっと息がつまるような閉塞感を感じていた。砂の大穴という、人間が生活するにはおよそ適さない場所に男は奇妙にも招かれる。そこに期限も分からず閉じ込められるなんてなんて恐ろしいことか。だが男は脱出を何度も試みた最後そんな生活にも些かの満足を得るようになる。思い返せば、虫と砂を求めてこんな辺境にやってきたのも、教師をしていた生活に煩わしさを感じていたからではなかったか。義務からの逃避と自由への渇望を繰り返す男の姿は人間の根源的な何かを映していた。

  • 吸い込まれていった、砂だけに。
    現実ではあり得るはずがなく、下手したら自分でも作れるような設定にここまで緊張感を表現できたのは素晴らしいと思った。女や部落の者たちの態度、劣悪な環境、そして理不尽な仕事、全てに憤りを感じた一方で働けば水がもらえるという洗脳によってだんだんと考え方を変えられていくのが自分でも目に見え、悔しささえ感じてしまった。
    「住めば都」これだけでは表しきれないような、生き方を考えさせられる作品だと思う。

  • ★4.0
    男が砂穴の一軒家に閉じ込められる突拍子もない話ではあるものの、読み進めていくうちにどんどん引き込まれていく。尽きることのない砂、はにかむ熟れた女、常軌を逸した部落の人々、男が置かれる状況は理不尽極まりないけれど、人間の思考というものは不思議と変わっていくもの。気付けば、逃げ場のない場所で同じことを繰り返すのなら、女のように順応して喜びを見出した方が幸せなのかもしれない、と思えてくる。そして、自由を目前にしながら下した男の決断の、気持ちが分かるような恐ろしいような、砂のざらつきが残るような感覚。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める部落の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開のなかに、人間存在の象徴的な姿を追求した書き下ろし長編。20数ヶ国語に翻訳された名作。

    所謂昔の文学が結構苦手。だって読みにくいんですもの。という幼稚な僕の読書の壁をぶち破るパワーを持った名作です。シチュエーションがまず怖い。日本なのにどこか違う世界なんじゃないかという位に違和感があります。常に砂が押し寄せてくるのに被せて、人々と女の念が砂のように押し寄せてくる雰囲気が不気味で怖い。何しろラストがいまだに忘れられないです。ずっと前に読んだのに。

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著者プロフィール

安部公房(あべ こうぼう)
1924年3月7日 - 1993年1月22日
東京府北豊島郡滝野川町生まれ、満洲で少年期を過ごした。
1948年『終りし道の標べに』(「粘土塀」)により単行本デビュー。1951年「壁 - S・カルマ氏の犯罪」で芥川賞を受賞。その後は劇作も手がけた。1958年「幽霊はここにいる」で岸田演劇賞、1963年『砂の女』で読売文学賞、1967年『友達』で谷崎潤一郎賞、1975年「緑色のストッキング」で読売文学賞をそれぞれ受賞。他、受賞作多数。国内外に大きな影響を及ぼしており、ノーベル文学賞の候補者としても名前が挙がっていた。
主な代表作として『壁』『砂の女』『他人の顔』『箱男』など。

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