笑う月 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 194
  • Amazon.co.jp ・本 (172ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101121185

作品紹介・あらすじ

笑う月が追いかけてくる。直径1メートル半ほどの、オレンジ色の満月が、ただふわふわと追いかけてくる。夢のなかで周期的に訪れるこの笑う月は、ぼくにとって恐怖の極限のイメージなのだ-。交錯するユーモアとイロニー、鋭い洞察。夢という"意識下でつづっている創作ノート"は、安部文学生成の秘密を明かしてくれる。表題作ほか著者が生け捕りにした夢のスナップショット全17編。

感想・レビュー・書評

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  • 再読。
    「藤野君のこと」だけは思い出すと読みたくなるので、たぶん5読目くらい。
    何故か(本気で分からない)藤野君が気になる。
    最初に読んだのはおそらく大学受験の頃で、今もやはり気になる。
    好きとか嫌いとかそういう感情ではなくて、おそらく私は藤野君に降伏してしまっているのだ。
    会ったこともないのに。
    文中の悲しい取り巻き達のように。

    それにしても安部さん(なんか違和感)の夢は怖い。
    小説もこんな空気だった。
    だんだんついて行けなくなって途中でやめてしまった本が多かった。
    なんというか沼なのだ。たぶん。
    のみこまれたら二度と這い上がれなくなりそうな沼。
    そんな気がしてきた。
    でも、今年は再チャレンジするつもり。

  • 「赤い繭」という短い話を読んだ。
    それで、ふと「鞄」を思い出して、読み直してみようと思ったのだった。
    安部公房は、よく分からない。
    けれど、いつもその分からなさの中に、通じるものがあって、自分にとって特別に至ってしまう。

    「笑う月」
    私はよく夢を見る方なので、誰かの見る夢の話にも興味を惹かれる。
    花王石鹸のような月に、ただふわふわと追いかけられる夢。怖い。
    今日、あんな顔を持つ月のイラストはないよね。

    「夢を書くのに適したスタイルで書けない夢は、夢としての価値もない、という簡単な事実である。」

    まず見なければならない。
    でも、見たから書けるわけではない。
    見たように書くことの中に、捨てるいさぎよさが必要だ、とある。
    面白い。

    「公然の秘密」
    泥の中から這い上がる化石の?腐りかけた仔象。
    見世物となり、食べ物としてマッチを与えられ、最後には燃えてしまう。

    「当然だろう、弱者への愛には、いつだって殺意がこめられている。」

    最近のニュースの中で、この仔象たりえる人を、ふと思いつく。
    傷付き、飢えた仔象に、取り囲む多くの人は今、固唾を飲んで「何をやるか」迷っているのだろう。

  • 安部公房がいかにして物語を編むのか、創作の舞台裏をみるような一冊。

    彼の紡ぐ世界は、書こうと思って書けるようなものでない。
    ピカソの絵をみて、自分でも描けるのではないかと言う人がままいる。しかし、実際描こうとすると、途端に筆が止まるのではないか。描いてはみたものの、「なにか」が違う。彼の絵はデタラメに描いたのでは真似できない、「なにか」を備えている。だから人心を揺する。
    例えはピカソでなくてもいいのだが、安部公房の作品の凄みは、ピカソのそれと似ている。意気込んで筆をとってみても、意図した途端に死んでしまう世界。彼はそれに命を吹き込む。それができる作家なのだ。今まで思ってもみなかったことだが、彼の編む世界に欲情した。なんてセクシーなんだろう。

  • Wikipediaでは随筆に分類されているが、本編はまぎれもなく小説だ。中には例えば「発想の種子」のように、それ単体ではエッセイと呼ぶ方が相応しそうなものもあるが、全体としては、意識的に再構成された小説である。冒頭に置かれた「睡眠誘導装置」による入眠から始まって、一旦は覚醒したかのように見せながら、最後の「密会」では、より深い眠りの中に入っていくのだ。ただし、最後の数篇を除いては、その夢が驚くほど理性的で論理的な構造の中に置かれている。安倍公房らしさがより鮮明に表れているのは果たしてどちらだろうか。

  • 失敗した。読む順を間違えた。

    この作品は阿部さんの見た不可思議な夢を題材にたエッセイだ。夢を題材にしているというと漱石の「夢十夜」を思い浮かべるが、夢十夜が夢を題材にした短編小説なのに比べ、こちらは、夢を題材に考察を交えながら過去の作品がどんな発想から生まれたかを書く「創作ノート」的エッセイだった。

    問題は、私が阿部さんの作品を「砂の女」しか読んだことがない、ということ。
    裏話は表を知らないと楽しめない。
    もう少し阿部さんの作品を読んで、またいつか読み返したいと思う。

    ただ作品として普通に面白いものも多く、「自己犠牲」、「鞄」など世にも奇妙な系短編は楽しかった。

  • 安部公房をすすめるときは、まずこれをすすめる。
    短い作品たちの中に、見事に公房ワールドが展開されている作品。

    淡々とした不気味さ、隠されていない狂気に脳内がゾクっとして、それが物足りない人はぜひ長編を読んでほしい。

  • 何度も読み返している、もしかしたら一番好きかも知れない作品。
    非現実的でありながら素晴らしいリアリティ。語り口にいつの間にかのみ込まれ、どこかであるんじゃないかと思えるところがさすが安部公房さん。
    何だかいろんなものを許されているような気分になり、読む度に安心できます。特に『アリスのカメラ』が大好き。
    安部公房作品としては、とても読みやすい本。

  • そうとう ですね!

  • 驚く程読み心地がいい作品。
    例えるならスポンジやパンが、水を吸収していく様な感覚に等しくさらりと読める。

  • 安部公房の著書の中ではかなり読みやすい方でスラスラ読めた。夢についてこんなに深く考察するあたりや言い回し、アプローチの仕方はさすがだと思う。

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著者プロフィール

安部公房(あべ こうぼう)
1924年3月7日 - 1993年1月22日
東京府北豊島郡滝野川町生まれ、満洲で少年期を過ごした。
1948年『終りし道の標べに』(「粘土塀」)により単行本デビュー。1951年「壁 - S・カルマ氏の犯罪」で芥川賞を受賞。その後は劇作も手がけた。1958年「幽霊はここにいる」で岸田演劇賞、1963年『砂の女』で読売文学賞、1967年『友達』で谷崎潤一郎賞、1975年「緑色のストッキング」で読売文学賞をそれぞれ受賞。他、受賞作多数。国内外に大きな影響を及ぼしており、ノーベル文学賞の候補者としても名前が挙がっていた。
主な代表作として『壁』『砂の女』『他人の顔』『箱男』など。

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