方舟さくら丸 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (386ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101121222

作品紹介・あらすじ

地下採石場跡の巨大な洞窟に、核シェルターの設備を造り上げた。「生きのびるための切符」を手に入れた三人の男女ととの奇妙な共同生活が始まった。だが、洞窟に侵入者が現れた時、の計画は崩れ始める。その上、便器に片足を吸い込まれ、身動きがとれなくなってしまったは-。核時代の方舟に乗ることができる者は、誰と誰なのか?現代文学の金字塔。

感想・レビュー・書評

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  • 学生時代以来の安部公房。
    BOOKOFFで購入。
    「砂の女」を読んで新婚旅行で鳥取砂丘に行ったくらいだから、学生時代にはわりと熱心に読んでいたと思う。
    安部公房はくせがあり、最初にスッと入れないとなかなか読み通すのが難しいが、これはスッと入れた。
    スマホもパソコンもほとんど普及していない時代、想像力の豊かすぎる主人公が核戦争に備えて巨大なシェルターを作り、「生き残るに値する人々」をスカウトする筈だったのだが…という話。
    主人公を始め、出てくるのはいびつな人たちだ。いびつさが奇妙に誇張されグロテスクでさえある。
    しかし、読後感はわりと爽やかだった。

  • 世界の破滅から生き延びるための切符を売る主人公。設定は面白く序盤はワクワクしながら読んでました。しかし、想像を超えるような裏切りはなく、なんだか拍子抜け。少し物足りなさはありましたが、面白かったです。

  • 砂の女より面白かった。登場人物が(砂の女より)多い分、物語が動く感じ。この閉塞した空間で次から次へ何かが起こって行く展開、ラストといい、舞台向きな気がする。と思ったら安部公房は戯曲も書くし、演劇活動されてた方なんですね。納得。


  • 個人的には名作。
    『密室』は苦手だったが、こちらは後期安部公房の寓話性とダンジョンの面白さが噛み合って先がとにかく気になった。
    ラストの静寂と、もの寂しさは次作『カンガルーノート』に引き継がれる新鮮さでとても良かった。

  • 次はどうなるの?どうなるの?と読書が止まらない作品でした。読み終わらない間のわくわく感と、自分もその場に居るようなスリル感。楽しくてしかたありませんでした。安部公房さんの本また読みたいと思う。

  • 贋物ユープケッチャからの始まりで、早速にも好奇心を鷲掴みにされた。
    嘘か本当か分からないような情報と共に、サバイバルゲーム的な展開が繰り広げられる。
    結局、ユープケッチャは何だったのか?
    ユープケッチャに何を託そうとしたのかが分からない。
    公房独特のクセの強いブラックユーモアもあり、そこで安心感と安定感を得る。
    ノアの方舟には正直な、唯一の人間しか乗船できないらしい。
    「砂の女」が苦手意識があり、初めに読んだ時は暑苦しいしで辛かったけれど、再読を決心させてくれた。
    まだ公房作品に慣れないし掴めないまま「砂の女」を読んだ記憶があり、しかし本書は夢中になれたので、再読すればまた違う視点や感覚に触れられそうで仕方ない。
    場面などは全く違うんだけれど、閉塞感が似ていることから決めた。
    世界のあらゆる自分以外の人間が透明人間に見えたところ、案外他人なんてそんなものかもしれない。
    モグラの他人に対する見方が変わった瞬間が凄く好きで、背中をぽんと叩いてあげたくなる。

  • 放置された地下採石場跡の広大な洞窟に、モグラこと〈ぼく〉は核シェルター設備を作り住み込んだ。近づく核投下の日までにこの方舟に乗れる資格のある人を見つけて乗船切符を渡そうとするが、ひょんなことで3人の男女とシェルター内での共同生活が始まる。しかし洞窟に侵入者が現れ、仇敵とも言える父親からの連絡、さらには便器に片足を吸い込まれて身動きが取れなくなり〈ぼく〉の計画は崩れ始める。核による人類滅亡、シェルターにより生き延びる人たち、生き残った人たちによる新しい社会と平和、そうした一連の想像はすべて幻想であり現実逃避でしかない。逃避した先の世界もまた現実と変わらない。
    冒頭で〈ぼく〉は自分の糞を食べて同じ場所をぐるぐる回って生きるユープケチャという昆虫をデパートの屋上で買う。先に購入していったカップルに釣られて買ったのだがその男女がサクラだったことが後でわかる。このサクラの男女と昆虫屋と一緒に共同生活を始めるのだ。虚構に虚構を重ねて第三者をその気にさせるサクラ。さくら丸の名前はそこから来ているのだろう。世の中はすべて幻であり虚構である。どの世界にも真実はあり、パラレルワールドのようにそれらはすべて一人ひとりの頭の中に作られる。つまり、人の頭の中は誰の力を借りなくても、ユープケチャのように自分が排泄したものを食べて同じ場所をぐるぐると生き続けている。昭和59年の作品である。核の時代、核があまりに遠い存在すぎて人はデストピアとユートピアの両方を想像していたが、それどころか時には核そのものが本当は存在しないのではないか、心配すること自体が無駄ではないかという気さえしていた。核があるから安全という人たちの世界と核がなければ安心と言う人たちの世界のどちらが真実なのか。そんな不安の時代に人は何を信じていたのか。あの頃、自分だけは無傷で生き延びるのではないかという根拠のない世界観の中で、誰もがユープケチャのように自分だけの理屈を勝手に吐き出しそれを咀嚼して自己満足していた気がする。いや、人生とはそんなものなのかもしれない

  • ナショナリズムについて書かれた小説

    同じ思想を持つ仲間を選び抜くというのは、違う思想の人々を排除することでもある。

    ノアの方舟から着想、さくらは日本の象徴である。

    小説に登場するユープケッチャという昆虫は、他者と一切の接触をせず生きる閉じた虫であるが、人間は完全に閉じることはできない。

    ※ユープケッチャは船底のような腹を支点に回転しながら、自分自身の糞を食べると同時に糞をし続け生きる。日中は頭が常に太陽の方向を向き夜になると眠り、時計虫とも呼ばれる。

  • ページをめくる手が重くてしんどかったけど、なんとか読了。読み終わってみると、あれこれと気になってくる。
    外見にコンプレックスを持つひきこもりの排他性、選民思想、強がり。
    75歳以上の老人たちの中学生狩りは若さへの嫉妬か。
    なんでも流せる便器の象徴的な意味と、自らがそれに囚われてしまったことの意味。
    突然やってくる終幕と、抜け出した後にある透明すぎる世界は、希望でも絶望感でもないのか。

  • 高校生以来の安部公房。 内容よりもまず、文体と構成、言葉選びがかっこよすぎる。「物語」としての強度は言わずもがな、その独自の「形式」の圧倒的なセンス。ラインを引きながら読んでいたのだけれど、引く箇所があり過ぎた。 特に後半にかけてのスピード感と陶酔感、そして虚無感が素晴らしい。全編に散りばめられたブラック通り越した底が見えない、あの便器のように暗い黒いユーモア。

    閉ざされた巨大空間、方舟、=王国。自らの「排他性」を他者の介入により自覚していく主人公=モグラ。外の世界では「棄民」とされ、またそれを自覚して強度を増す「ほうき隊」と呼ばれる老人男性集団の躁状態。
    「統治」する快感と「統治」される快感。何も考えなくていい、という、平和。
    現実から目を逸らして、死なないように生きる事は悪?
    「信じていられれば、そのほうが幸せなのかもしれない。」
    最後まで、「女」としか記述がないまま閉じていく女。 「女性性」の扱いもかなりグロテスクで悲惨に思った。
    「女は女で、それ以上区別する必要なんかないと思ってるんだ。」
    名前のない女の言葉。ほうき隊には婆さんはいない。戦争が好きなのは男ばかり。女子中学生を雌餓鬼と呼ぶほうき隊の副官。

    めちゃくちゃに面白くて、最後、先述したが虚無感が半端なく。心して読むべし。

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著者プロフィール

安部公房
大正十三(一九二四)年、東京に生まれる。少年期を旧満州の奉天(現在の藩陽)で過ごす。昭和二十三(一九四八)年、東京大学医学部卒業。同二十六年『壁』で芥川賞受賞。『砂の女』で読売文学賞、戯曲『友達』で谷崎賞受賞。その他の主著に『燃えつきた地図』『内なる辺境』『箱男』『方舟さくら丸』など。平成五(一九九三)年没。

「2019年 『内なる辺境/都市への回路』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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