- 本 ・本 (222ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101122014
感想・レビュー・書評
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山岳小説らしく、冬季八ヶ岳縦走のシーンはあるが、主題は男女間の三角関係というか四角関係というか恋愛モノである。美人女流登山家・川原田千穂、千穂に恋する山男2人、千穂の旧友かつライバルの香野美根子の4人の話。
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山登り経験などない自分にとっては、登山描写が珍しく迫真的記述に圧倒されて、なかなか面白かった。
山男2人に、類を見ない山女?の女王、そしてそれに絡み付く悪女?の男女4人の恋のさや当てを基軸に、雪山登山に挑む登山家3人の戦いを描く。
女王様のような千穂に振り回される男2人と、その2人を罠にはめる美根子がこの物語を実行支配しているが、千穂の性格描写がいまひとつすっきりこず、ここだけが少し残念なところだ。だが、そうした情念の物語とパラレルに進む登山描写は、色彩・音・皮膚に強く訴えかけるほど印象的であり、これが現実感を引きだしている。
そう、これは雪山登山そのものが主題なのだ。
ところで、裏表紙のあらすじ説明で概要が要約されているのはいかがなものなんだろうなあ。(笑) -
「新田次郎」の長編山岳小説『縦走路』を読みました。
『芙蓉の人』、『富士山頂』に続き「新田次郎」作品です。
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美貌の登山家と山男二人。
その恋には恐るべき罠が仕掛けられていた。
人間の本質を見据えた「新田文学」の真骨頂。
北アルプス、冬の八ヶ岳で二人の山男は、「女流登山家に美人なし」と言う通念をくつがえす、美貌のアルピニスト「千穂」に夢中になる。
彼女の旧友でライバルの「美根子」を交えた四人の間に恋愛感情のもつれが起こるが、命がけの北岳胸壁攻撃の後、「千穂」は……。
きびしい冬山と氷壁を舞台に、“自然対人間”そして“男対女”を通して緊迫したドラマをみごとに描く傑作長編山岳小説。
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文芸雑誌『新潮』の昭和33年(1958年)7月号から11月号に連載された作品… 当時としては新鮮な魅力に溢れ、連作中から世評を得た作品だったようですね。
登山仲間である「蜂屋道太郎」と「木暮英作」は、針ノ木峠から立山へと縦走へ出かけた際に、女性登山家「川原田千穂」と知り合った、、、
彼女は「女流登山家に美人なし」と言う通念を打ち破るような美人アルピニストだった… 足が達者で、リーダー然とした「千穂」に反発を感じつつも、2人は彼女に惹かれていく。
「蜂屋」と「木暮」は大学の同級生で、「木暮」の勤める協進精器に「蜂屋」の勤務する天宮電気が機械を納入するという仕事上の関係もあった… 天宮電気で秘書を努める「香野峰子」は「千穂」と高校の同級生で、その縁で4人は再会、、、
「蜂屋」と「木暮」が「千穂」に惚れていることに気付いた「峰子」は、「蜂屋」と「木暮」に理由をつけて、それぞれアパートに誘い込むが2人から愛を得ることはできなかった… 「蜂屋」は「千穂」と2人で冬の八ヶ岳に出かけ、彼女と結婚する決心を固める、一方、「木暮」も「千穂」との結婚を心に秘めていた。
お互いの気持ちを知った「蜂屋」と「木暮」は、「千穂」の気持ちを決めさせるために北岳にロッククライミングに誘った、、、
3人が出発するとき、「峰子」から北岳山頂で開くようにと差し入れを渡された… 北岳山頂で「峰子」から渡された差し入れを開くと、それは「峰子」のアパートに「蜂屋」と「木暮」が忘れたザイルとマフラーだった!!
いやぁ、恐ろしい差し入れでしたね… きっと、これで「千穂」の気持ちは2人から離れていくんでしょうね、、、
山岳小説と恋愛小説の要素を絡めた、当時としては野心的な作品だったようですが… 「新田次郎」ですからね、本書の魅力は、針ノ木から立山という北アルプス、八ヶ岳、そして北岳と短い中にも主要な山を盛り込んで、縦走から登攀までを愉しめる贅沢な展開や、山に関するリアリティ溢れる描写なんだと思います。
久しぶりに山に行きたくなりましたね。 -
「女流登山家に美人なし」今と違い女性登山者が少なかった時代だから仕方ないが、令和の時代に、こんな言葉を発したら非難を浴びるのは必至だろう。山岳小説では、朴訥な山男に心を奪われる女性、または洗練された都会の女性に惚れる山男というパターンが多い。本書では山男が女性登山者に恋するという、あまりない組み合わせだったのが面白いと感じた。
北アルプスの冬山の描写は流石である。
二人の山男に同時にプロポーズされた千穂が、美根子を意識しながら、どちらかを選ぼうと自問する場面。女性ならではの心理が上手に書かれていると感じた。 -
懐かしの新田次郎であり、表現こそ古いが、小説としての面白さは現代でも減じていないと思う。徹底して不器用な男の視点だけれども。
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女流登山家に美人なし、といいながら美人ばかりが出てくる新田次郎の山岳小説。
女:千穂、美根子
男:蜂屋、木暮 -
昭和37年(1962年)に書かれた作品
山登りが趣味の会社員たちを描いた恋愛小説だが
いまや時代劇とそのことば回しがたいしてかわりなく感じる
それでも登場人物の造形と話立ての面白さはさすがの実力 -
一本気な二人の山男と美人山女との三角関係を中心に描く山岳小説。峰屋と千穂の二人登山までは楽しめたが、その後の山男対決からぐだぐだ展開に。千穂の魅力は美人なだけで、自意識過剰で意地っ張りの鼻につく女としか感じられず、山男二人がどこに惚れているのか理解できない。千穂の目線で考えても他の山男と違って積極的に誘われなかったくらいの2人であって、湧き上がる恋愛感情はないのに対決を日和見する感覚で興ざめ。故に感情移入出来ず惰性で読み進めるも最後の展開にがっかり。神聖な山登りでは男女の誤りはないというテーマを主題に最後まで進めてほしかった。
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