孤高の人 上 (新潮文庫 に-2-3 新潮文庫)

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  • 新潮社 (1973年3月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (512ページ) / ISBN・EAN: 9784101122038

みんなの感想まとめ

登山家・加藤文太郎の生涯を描いたこの長編小説は、彼の孤独な挑戦と葛藤を中心に展開します。著者は、加藤が単独行動を通じて自らを律し、夢のヒマラヤ征服に向けてどのように日常を築いていったのかを丹念に描写し...

感想・レビュー・書評

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  • 今年のネンイチニッタは、日本の登山史に名を残す登山家・加藤文太郎(1905年―1936年)の生涯を描いた長編小説。
    「単独行の加藤文太郎」と呼ばれ、登山家であると同時に、造船技師として堅実に働き続けた〈社会人登山家〉でした。

    新田次郎作品はいくつか読んできましたが、本作は初読。
    改めて感じるのは、新田次郎が「偉人」を描くとき
    劇的な誇張を避け、日々の生活や仕事、習慣を丹念に積み上げます。
    一人の人間の生活史を読んでいる感覚です。

    上巻では、加藤文太郎がどのように登山に向き合い、自らを律した生活をしてきたかが描かれます。将来ヒマラヤを目指すため、節約と節制を徹底し、身なりや道具には無頓着。
    寡黙で朴訥、愚直とも言える男性像が、私の中で出来上がっていきました。

    ところが、上巻読了後に実際の加藤文太郎の写真を見て、そのイメージが多少揺らぎます。
    思っていたよりも、どこか洗練された、
    「案外おしゃれな」印象を受けたんですね。

    小説の人物像と、史料として残る写真とのズレ。
    その違和感も楽しむように下巻へいきます。

    • おびのりさん
      本ぶらさん
      コメントありがとうございます♪

      いろいろ恥ずかしいですが
      新田さんの小説の中の節約ぶりを
      まともにイメージしすぎたんですね。笑...
      本ぶらさん
      コメントありがとうございます♪

      いろいろ恥ずかしいですが
      新田さんの小説の中の節約ぶりを
      まともにイメージしすぎたんですね。笑
      八甲田山では、一緒に凍えちゃうし
      強力伝では、お尻痛くなっちゃうし
      読んでる時は、それほど感じないんですけど
      新田次郎さんって 引き込む文章が上手いんでしょうか。

      どうぞ よろしくお願いします(*'▽'*)
      2026/03/19
    • 本ぶらさん
      いえいえ。
      ちょっとフザケた書き方ですみませんでした(^^ゞ

      ていうか、おびのりさんのコメントを読んでいて気づいたんですけど、自分の...
      いえいえ。
      ちょっとフザケた書き方ですみませんでした(^^ゞ

      ていうか、おびのりさんのコメントを読んでいて気づいたんですけど、自分の『孤高の人』(というか新田次郎の小説)のイメージって、自分が山に行きだした中3〜高校生の頃のイメージのままだったんだなーって。
      変な話、ちょっと呆然としちゃったwんですけど、その一方で、その時に読んだ小説が今もおびのりさんはじめ、多くの人に読まれているということが、ちょっと不思議な気もしました。

      新田次郎は、確かにおびのりさんが書いているように、ちょっと変人って言えるくらいの凝り性なんでしょうね。
      それは、やたらいろいろ書いてある「あとがき」を読んで当時も感じていたんですけど、おびのりさんが書いている「新田次郎さんって 引き込む文章が上手いんでしょうか「新田次郎さんって 引き込む文章が上手いんでしょうか」については、読んでいた時が中高生なもので、そういう風には読んでいなかったこともあり、ちょっとわからないです(^^ゞ
      ていうか、久しぶりに読んでみたくなりました。新田次郎。

      ちなみに、新田次郎って何が読まれているんだろう?ってブクログを見てみたら、『八甲田山』、『孤高の人』、『剣岳』は映画やマンガになっていたこともありわかるんですけど、その次が『アラスカ物語』ってなんで?ってすごく不思議でした(^^ゞ
      個人的には、新田次郎はやっぱり『孤高の人』に始まる、当時は「なぜ山に登るのか三部作」と言われていた『栄光の岩壁』『銀領の人』なんですけど。
      三部作の後半2作は圧倒的に読んでいる人が少ないんですね。
      ということで、来年の「ネンイチニッタ」にぜひ!(^^)/
      (ちなみに、全然有名じゃないし、山の小説じゃないですけど『珊瑚』もいいですよw)
      2026/03/21
    • おびのりさん
      本ぶらさん

      ネンイチニッタ情報ありがとうございます♪
      ちょっと 調べてみたりしたんですけど
      「アラスカ物語」が 流通状態が良さそうですね
      ...
      本ぶらさん

      ネンイチニッタ情報ありがとうございます♪
      ちょっと 調べてみたりしたんですけど
      「アラスカ物語」が 流通状態が良さそうですね
      読むと凍えそうですけど、
      来年のニッタにさせていただきますm(_ _)m
      2026/03/22
  • 主人公、加藤文太郎は実在の人物のようだ。

    「そこに山があるから」
    ヒマラヤ征服を夢とする彼の自問自答。その答えが正解なのか、信じれるものは自分のみと単独行で葛藤する。

    途中、第一章前を読み返しおおよその結末を想像できた。孤高の人がなぜ?
    きっと文太郎はそんな浅はかな想像は超えてくるに違いない。

    では下巻で。

  • 単独行動の加藤文太郎、前半生といった感じ。大正から昭和にかけ、当時の装備と常識では考えられないような事をやってのけた。山の事は分からないけど、今でも随分常識とかけ離れた事なんじゃないだろうか。

  • 登山をする者として、馴染みのある山や地名が出てくることが、より小説への没入感を増す。フィクションとノンフィクションがミックスされたような作品だそうだ。
    今回は上巻。これから下巻に入る。まだ物語は始まったばかりだ。

    主人公は加藤文太郎。実在した登山家だ。
    彼がエベレストの登頂を目指すことから物語は大きく動き出す。

    本格的な登山の描写が出てくるまでに、少々読み進めなければならない(退屈)。
    登山に例えるなら稜線までの登りだ。そこを越えると常念岳から蝶ヶ岳への縦走のように素晴らしい景色が見えてくる。といっても冬山がメイン。山行はみっちりと描かれるが、読んでいて私は「こんなもん無理やて・・・」と畏敬の念を抱くしかなかった。

    ついつい忘れがちだが、まず時代が違う。大正の末から昭和の初期にかけての話だ。
    装備、食料、山小屋や登山者用の目印だって今とは比べ物にならないお粗末な物だろに・・・

    また、加藤の不器用さが歯がゆい。
    「そこ素直になろっ!」って言いたくなる場面が無数にある。今の時代なら、発達障がいとして分類されるであろう加藤の行動や反応、執着はどのように認知されていたのだろうか。著者はどのように彼の人格を作り上げたのか。
    女性への加藤の内心やその関係を描く場面も多くあるが、個人的にはもうちょっと省略してほしかった。なんせ、話がダレる・・・

    とは言え、加藤を見込んだ人々のサポートを受けながら、彼はことごとく山を踏破していった。

  • 加藤文太郎の単独登山物語。
    冬山登山の描写は臨場感溢れる。
    後半も楽しみだが、冒頭で文太郎が若くして亡くなるって書いてあるのがマイナス点かなぁ。

  • 以前から気になっていた本で、やっと上巻を読み終えました。夢中になって読む事ができました。
    ただ登山をしたことがない自分にとっては難しかった。
    本の中でなぜ山に登るのか
    汗を書きたいからとか、自己満足とか
    何なのでしょう。
    また本のはじめの方に、やりたいことをやる
    とありましたが、
    大谷翔平のことを思い出し、みんなか二刀流は駄目だという中、ただやってみたかった
    なにか共通するものを感じました。
    では、自分がやりたいものは
    NHKの虎と翼ではないけど、はてと考えてしまいます。
    全くまとまりのない感想でした。

  • 評伝なのか、ノンフィクションノベルなのか。

    昭和初期に実在した登山家の一生を描いたもの。私には登山の趣味はないが、登山をモチーフにした本を読むのは大好き。その極限における自然との戦いがなんとも言えず心を打つものが多い。

    主人公は誤解を受けることが多い人間性でかなり付き合いずらい感じもする。しかし登山に対するストイックな姿勢にはある意味感銘を受ける。

    下巻ではどんな展開が待っているのか楽しみだ。

  • 20代初め、未だ山に登っていない頃に憧れた単独行者の加藤文太郎さん。
    『文ちゃん』と呼び、夫と先を争うように読んだ記憶がある。息子が読んだと聞いたので再読したのだが・・・。
    読み始めてページを繰る手がいつか止まってしまった。
    年齢を重ねると、自分が欲していたものが違ってきていた。文ちゃんがあまりに頑なな人に感じられたのだ。たぶん、若い頃は我が道を行けば良いと思えるような根拠のない自信があったのだろう。

  • 不世出の登山家、単独行の加藤文太郎を主人公とした伝記的小説。

    風評だけを聞くと、加藤文太郎はストイックな単独行の鬼のように思えるが、この小説で書かれている文太郎は、人並みに人肌を求め、しかして生来の不器用さから孤独を運命づけられていくように状況から単独行の代名詞へと祭り上げられ、文太郎自身も孤独に安らぎを持つようにすらなっていく。

    ストイックな山男とは真逆の、繊細でいじましい健脚の男の物語が描かれているように思う。

  • パーティーを組んで登るのが常識とされていた山へ単独行で向かい、数々の山嶺を踏破した加藤文太郎のノンフィクション的小説。
    なぜ山に登るのか、他の追随を許さない卓越した登山者である彼もまたその疑問を懐に抱えていた。答えは出ず、山に登り続けることでしか見付けられないのだと考える。
    単独行を続けながらも人を恋しいと思い、けれどどうしても他者と打ち解けられない加藤の心の葛藤に人間味を感じる。
    槍ヶ岳付近で星を見た時の叙述に、登山の魅力の一端が垣間見えた気がした。
    「いま彼の見ている星は平面上の星ではなかった。星は彼を囲繞していた。星の中に彼はいた~~」

  • ずっと、自分と山と向き合い続ける加藤文太郎の生き様が好きです。
    孤高とはいうものの、孤独であり不器用なのですが、そこが魅力でもあります。
    だから、誰かと共にあろうとするとき、彼には悲しい出来事が決まって起きてしまう。
    唯一、伴侶が出来て、子どもを授かった時に、山から距離を置いたあのときが、彼にとって誰かと幸せを共有できた時間で、それがとても尊いものに感じました。

  • 新田次郎にハマりいろいろ読んでます。
    冬山の過酷な環境や、美しい自然の描写、人間について面白おかしく?読めてしまうのが、すごいです。初版が昭和48年、50年も昔の小説なのに、今も読み継がれる普遍性はいったいどこにあるんでしょうか。
    単独登山の第一人者として、有名人になっていく様子もドラマチックでわくわくします。

    メモ
    ・懐中コンロってなんだろう
    ・文太郎の食料最終アンサーは、甘納豆とから揚げの干し小魚、テルモスのお湯
    ・そこからいよいよ濃い霧になった。氷の霧だった。どのにでも、触れれば氷の花をつくる霧だった。白い花は、加藤の身体中に咲いた。
    →霧氷ってどんな感じなんだろう。
    ・大きな荷物を背負っていては、風に吹き飛ばされる危険があった。雪庇(せっぴ)もいたるところにあった。風のために磨かれた氷盤もあった。雪の吹き溜まりがあるかと思うと、アイゼンの爪も立たないように固く凍った雪盤もあった。
    滑落、雪崩、強風、凍死、道迷い、あらゆる遭難へのデスロードを回避して、自分と対話しながら己の限界を超えていくのが登山家だよな

  • 『単独行の加藤文太郎』と呼ばれる登山家が、どのようにして山に導かれ進んでいくのかを追った物語。

     序盤の神港造船所の技術研修所に、研修生として五年間在籍している間の話は非常に面白かった。木村敏夫は影村一夫からの嫌がらせや罵倒に嫌気が差し出ていく。地図の読み方などを教えてくれた新納友明は肺結核にかかり死に、金川義助は主義者として逮捕され…。彼と共に過ごす人達は何らかの形で不幸な道を辿ってしまい、加藤は俺といない方がいいと考え、孤独に生きていく。

     冒頭からずっと彼を気にかけている外山三郎の存在も大きいと思う。山岳会に入らないかと仕切りに勧めるが、加藤はそれを拒絶する。しかし、外山から本を借りたり、会食に招かれれば訪ねて行ったりと、どこかしらで繋がり続けている所が、加藤は本当は誰かといたい気持ちもあることに気付かされる。

    剣沢小屋の6人のパーティーに拒絶されてもついていこうとする加藤のシーンは心惹かれた。単独行を好んで進めた部分もあるが、どこかで誰かと共に登山をしたい気持ちもある。けれど自分の登山速度が速すぎることや、人とのコミュニケーションをうまくとれないことも相まって、結局は孤独に、1人冬山を登っていく姿はとても印象に残っている。

  • 昭和初期に、単独行で名を馳せた、加藤文太郎の人生を追った小説。本当は優しいのに人づきあいが下手な加藤が、山にのめりこんでいき、やがて数々の冬山の単独行で有名になる。そんな彼も結婚し、子供をもうけて、山を控えるようになるが。。
    新田次郎の乾いた、しかし鋭い筆で描かれる山行のシーンに引き込まれます。実在の人物をもとに描かれたと思われる登場人物たちも、個性豊かで映画のよう。
    加藤と同じ生き方はできないけれど、彼の人生や仕事、そして山に対する真摯な姿勢には大きな感銘を受けました。

  • 加藤文太郎は不器用で強靭で愛情深かった。
    新田次郎は単なる山岳小説にせず、職場と山行の両立、家庭を持ちながら雪山に向かう葛藤などをていねいに描いた。
    深みのある、すばらしい物語だった。
    上下巻の長編にもかかわらず、新田次郎の無駄のないストーリーテリングにより退屈しなかった。ときに、ずいぶん駆け足な展開だなと思うこともあった。それでもこのページ数になった。
    加藤文太郎にまつわる話をもっと読んでいきたいと思った。

  • 山岳小説の草分けの作品。
    神戸から六甲山系が描かれていてgood。
    大正から昭和の不穏な空気感はあるが、時代を超えて普遍的な人間の感情に浸れるのが凄い。
    下巻へ進む。

  • 実在の人、加藤文太郎による前人未到の日本列島の縦断単独踏破までの上巻。
    登山小説における、究極の状態における人間心理や素晴らしい景観、そして死と隣合わせの冒険という特有要素が満載で、大正、昭和における登山行の考え方や道具等細かに描かれており、興味深い。主人公、加藤文太郎の寡黙な人柄は、この小説によって山男の象徴的なものとして人々に記憶されたのではないかと思えるほどにインパクトがある。
    プロローグで、加藤か遭難したことを語る人物が、単独で登山していれば間違いはないと述べたことがこの本の確実なラスト展開につながってしまうのを感じてストーリーにやや興味を失ってしまう。山行の合間に描かれる恋愛や会社でのエピソードは物語に起伏を持たせてくれるとともに加藤の人柄よく出ており、興味か深まります。

  •  正直、前半の造船所研修時代の話しは私には退屈で最後まで読み切れないかもしれないと思いながら読み進めていた。でも、加藤が山に登り始めると俄然面白くなった。特に冬山に登る様子は、その寒さや孤独、厳しさがひしひしと伝わってくる。生きるもののいない真冬の山の奥で吹雪に耐えながら一人でビバークする加藤を想像すると、部屋の温度が下がったように背中が寒く感じられてくる。そこまで読むと加藤の登山スタイルや性格を伝えるには造船所研修時代の話が必要だったことがわかる。何者にも屈せず自分を信じて行動する加藤の人柄が当時の時代状況とともに語られている。

     常に冷静で研究熱心で用意周到な加藤はなんだか昔読んだ大藪春彦のハードボイルドの主人公のように見えてきた。

  • 六甲と北アルプスという個人的にとても身近な山が舞台ということもあり、主人公の加藤文太郎にとても親近感を覚える。登山中の風景描写が非常に緻密で美しくかつ厳しく、加えて、神戸での日常生活の中に描かれる主人公の葛藤と成長がまたリアリティに満ちている。すごい小説だ。

  • 新田次郎初読。上下巻完結。
    孤高の登山家の話です。

    コミックスを先に読んでいて、コミックスも面白かったのですが、原作は静けさの中に唸るような深みがあって面白かった。

    通常、複数で行動するのが常の登山で、一人でいくつもの山を踏破した孤高の登山家。
    彼がどのように山に出会い、生きたのか、上下巻を通してじっくり描かれます。
    ずっと一人で山に向き合ってきた人が、初めて誰かと山に登る時。
    とても面白かったです。

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著者プロフィール

新田 次郎(にった・じろう):1912-80年。長野県上諏訪生まれ。旧制諏訪中学校、無線電信講習所(現在の電気通信大学)を卒業後、1932年、中央気象台(現気象庁)に入庁。1935年、電機学校卒業。富士山気象レーダー(1965年運用開始)の建設責任者を務めたことで知られる。1956年『強力伝』で、第34回直木賞受賞。1974年、『武田信玄』ならびに一連の山岳小説に対して吉川英治文学賞受賞。

「2024年 『火の島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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