孤高の人(上) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 211
  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101122038

作品紹介・あらすじ

昭和初期、ヒマラヤ征服の夢を秘め、限られた裕福な人々だけのものであった登山界に、社会人登山家としての道を開拓しながら日本アルプスの山々を、ひとり疾風のように踏破していった"単独行の加藤文太郎"。その強烈な意志と個性により、仕事においても独力で道を切り開き、高等小学校卒業の学歴で造船技師にまで昇格した加藤文太郎の、交錯する愛と孤独の青春を描く長編。

感想・レビュー・書評

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  • 20代初め、未だ山に登っていない頃に憧れた単独行者の加藤文太郎さん。
    『文ちゃん』と呼び、夫と先を争うように読んだ記憶がある。息子が読んだと聞いたので再読したのだが・・・。
    読み始めてページを繰る手がいつか止まってしまった。
    年齢を重ねると、自分が欲していたものが違ってきていた。文ちゃんがあまりに頑なな人に感じられたのだ。たぶん、若い頃は我が道を行けば良いと思えるような根拠のない自信があったのだろう。

  • パーティーを組んで登るのが常識とされていた山へ単独行で向かい、数々の山嶺を踏破した加藤文太郎のノンフィクション的小説。
    なぜ山に登るのか、他の追随を許さない卓越した登山者である彼もまたその疑問を懐に抱えていた。答えは出ず、山に登り続けることでしか見付けられないのだと考える。
    単独行を続けながらも人を恋しいと思い、けれどどうしても他者と打ち解けられない加藤の心の葛藤に人間味を感じる。
    槍ヶ岳付近で星を見た時の叙述に、登山の魅力の一端が垣間見えた気がした。
    「いま彼の見ている星は平面上の星ではなかった。星は彼を囲繞していた。星の中に彼はいた~~」

  • 昭和初期に、単独行で名を馳せた、加藤文太郎の人生を追った小説。本当は優しいのに人づきあいが下手な加藤が、山にのめりこんでいき、やがて数々の冬山の単独行で有名になる。そんな彼も結婚し、子供をもうけて、山を控えるようになるが。。
    新田次郎の乾いた、しかし鋭い筆で描かれる山行のシーンに引き込まれます。実在の人物をもとに描かれたと思われる登場人物たちも、個性豊かで映画のよう。
    加藤と同じ生き方はできないけれど、彼の人生や仕事、そして山に対する真摯な姿勢には大きな感銘を受けました。

  • 加藤文太郎は不器用で強靭で愛情深かった。
    新田次郎は単なる山岳小説にせず、職場と山行の両立、家庭を持ちながら雪山に向かう葛藤などをていねいに描いた。
    深みのある、すばらしい物語だった。
    上下巻の長編にもかかわらず、新田次郎の無駄のないストーリーテリングにより退屈しなかった。ときに、ずいぶん駆け足な展開だなと思うこともあった。それでもこのページ数になった。
    加藤文太郎にまつわる話をもっと読んでいきたいと思った。

  • 実在の人、加藤文太郎による前人未到の日本列島の縦断単独踏破までの上巻。
    登山小説における、究極の状態における人間心理や素晴らしい景観、そして死と隣合わせの冒険という特有要素が満載で、大正、昭和における登山行の考え方や道具等細かに描かれており、興味深い。主人公、加藤文太郎の寡黙な人柄は、この小説によって山男の象徴的なものとして人々に記憶されたのではないかと思えるほどにインパクトがある。
    プロローグで、加藤か遭難したことを語る人物が、単独で登山していれば間違いはないと述べたことがこの本の確実なラスト展開につながってしまうのを感じてストーリーにやや興味を失ってしまう。山行の合間に描かれる恋愛や会社でのエピソードは物語に起伏を持たせてくれるとともに加藤の人柄よく出ており、興味か深まります。

  •  正直、前半の造船所研修時代の話しは私には退屈で最後まで読み切れないかもしれないと思いながら読み進めていた。でも、加藤が山に登り始めると俄然面白くなった。特に冬山に登る様子は、その寒さや孤独、厳しさがひしひしと伝わってくる。生きるもののいない真冬の山の奥で吹雪に耐えながら一人でビバークする加藤を想像すると、部屋の温度が下がったように背中が寒く感じられてくる。そこまで読むと加藤の登山スタイルや性格を伝えるには造船所研修時代の話が必要だったことがわかる。何者にも屈せず自分を信じて行動する加藤の人柄が当時の時代状況とともに語られている。

     常に冷静で研究熱心で用意周到な加藤はなんだか昔読んだ大藪春彦のハードボイルドの主人公のように見えてきた。

  • 六甲と北アルプスという個人的にとても身近な山が舞台ということもあり、主人公の加藤文太郎にとても親近感を覚える。登山中の風景描写が非常に緻密で美しくかつ厳しく、加えて、神戸での日常生活の中に描かれる主人公の葛藤と成長がまたリアリティに満ちている。すごい小説だ。

  • 新田次郎初読。上下巻完結。
    孤高の登山家の話です。

    コミックスを先に読んでいて、コミックスも面白かったのですが、原作は静けさの中に唸るような深みがあって面白かった。

    通常、複数で行動するのが常の登山で、一人でいくつもの山を踏破した孤高の登山家。
    彼がどのように山に出会い、生きたのか、上下巻を通してじっくり描かれます。
    ずっと一人で山に向き合ってきた人が、初めて誰かと山に登る時。
    とても面白かったです。

  • 地元の英雄、加藤文太郎のお話。
    浜坂、観音山、宇都野神社など懐かしい場所が沢山でてきました。
    ほんと加藤文太郎ってすごい人です。
    山に興味を持つことができる1冊。
    下巻を早くよみたい。

  • 稀代の登山家、加藤文太郎を主人公にした物語。

    登山において単独行を貫くのは、なぜなのか。
    周囲からは変人としてみられる描写が散見される。

    しかし、そこにおいても、付和雷同しない。
    そういった意味でも、「孤高の人」なのだろうか。

    出身地は浜坂だか、そこで泳ぐのが好きだったという。
    海好きの人が山好きになるという対比は、とても不思議だ。
    海の人間が山に魅せられるのはなぜなのだろう。

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著者プロフィール

新田 次郎(にった じろう)
1912年6月6日 - 1980年2月15日
長野県諏訪郡上諏訪町(現:諏訪市)生まれの日本の小説家、気象学者。本名は藤原 寛人(ふじわら ひろと)。電機学校(現:東京電機大学)卒業。次男に研究者・作家の藤原正彦。
終戦後で生活が困窮しているところ、作家である妻の兩角(もろすみ)ていの刊行した『流れる星は生きている』がベストセラーになったことから作家を志し、執筆活動を兼業する。
1956年『強力伝』で第34回直木三十五賞受賞。1966年に専業作家。1974年に吉川英治文学賞、1979年に紫綬褒章。
気象職員としても富士山気象レーダー建設という大きな業績で名を残しており、退職時には気象庁から繰り返し強い慰留を受けた逸話が残る。

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