岩壁の掟 偽りの快晴 (新潮文庫)

  • 新潮社 (1975年1月1日発売)
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感想 : 6
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  • 本 ・本 (381ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101122076

感想・レビュー・書評

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  • 山岳小説の草分けである筆者の短編集。自分は山登りはしないので、技術的なところは全く知識がないが、それでも緊迫感の伝わる文章は秀逸だと思う。
    全短編のテーマは「死」であり、人間の暗い部分に焦点を当てている。どちらかというと登山家を批判するような内容に近い。山好きの読者がどのように感じるかはわからないが、雰囲気は重く、カタルシスを得られるものではない。

  • 極限状況の中で露わにされる人間像。

  • 少し変わった長編+短編

     いきなり悪党が出てくる長編、意味もなく死んでいく登山者など、ちょっと変わった作品集と感じる。

     約400頁で6編だが約200頁の長編が含まれている。肝心のその長編が私にはイマイチ。

     テーマは岩登りが多いが、情景を思い浮かべることが困難だけに理解しがたかったのかもしれない。

     悪童がなぜか女性クライマーの犠牲になって死ぬ「岩壁の掟」、台風の中気象を読み違えて全滅する「偽りの快晴」、功を焦って遭難する大学山岳部を描く「薬師岳遭難」、遭難者を助けるため第一子をもうけたその日に死亡してしまう「クレバス」、死にたい病の山での自殺を扱う「翳りの山」、重傷のクライマーを助けるクライマーを描く「岩壁の九十九時間」と作品は続く。

     インパクトがあったのは「クレバス」。父になった瞬間に死ぬという設定もさることながら、助けてやったにもかかわらず遭難者の家族は助けた地元に対してなんら感謝しないという設定が現代の世相を反映しているようで興味深い。

     作品リストは以下の通り。

    岩壁の掟
    偽りの快晴
    薬師岳遭難
    クレバス
    翳りの山
    岩壁の九十九時間

  • 新田次郎の山岳短編集

    『岩壁の掟』は短編で発表された連続物を一つにまとめたもの。
    いずれの作品も遭難に絡むものが多い。
    この中の作品では『クレバス』が好きだが、できればハッピーエンドにして欲しかった。山は時として非情になるのだろう。

    収録作
     『岩壁の掟』
     『偽りの快晴』
     『薬師岳遭難』
     『クレバス』
     『翳りの山』
     『岩壁の九十九時間』

  • 人間が勝手に持ち込んだエゴなんぞ冷厳に吹き飛ばす。山を舐めてはいかん

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著者プロフィール

新田 次郎(にった・じろう):1912-80年。長野県上諏訪生まれ。旧制諏訪中学校、無線電信講習所(現在の電気通信大学)を卒業後、1932年、中央気象台(現気象庁)に入庁。1935年、電機学校卒業。富士山気象レーダー(1965年運用開始)の建設責任者を務めたことで知られる。1956年『強力伝』で、第34回直木賞受賞。1974年、『武田信玄』ならびに一連の山岳小説に対して吉川英治文学賞受賞。

「2024年 『火の島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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