八甲田山死の彷徨 (新潮文庫)

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著者 : 新田次郎
  • 新潮社 (1978年2月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (331ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101122144

八甲田山死の彷徨 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 素人のくせに気軽に「冬山登山しようぜ!」なんて言い出す人が身近にいるのなら、まずこの本を読ませましょう。

  • 聞きしにまさる過酷な八甲田山雪中行軍遭難事件、生々しい描写にぐいぐい引き込まれる。弘前第31連隊と青森第5連隊の対比で、心構えを含む準備の違いや指揮官の統率で明暗が分かれるところが興味深い。
    青森連帯の神田大佐が聡明であるのに上司に逆らえず死するところが残念。これが良くも悪くも軍隊の有り様か。それに引換え山田少佐の罪かかなり濃厚な印象で、自身は自害したようだが事実とは言え遺族はいたたまれないと想像してしまう。
    弘前連帯を途中で先導した開拓農民の滝口さわさんにとても惹かれました。
    読みものとしては先が気になりとても興味深く読み進められました。
    作者の他の登山作品に興味が湧きました。

  • 映画化であまりにも有名な作品だが、映画では描ききれなかったディテールが豊富で興味は尽きない。
    たとえば隊の編成の大半を士官学校卒の下士官にしたのは、徴兵されてきた一般市民を戦闘ならともかく訓練で死なせるわけにいかないという判断から、というあたり、後の日本軍が赤紙一枚で徴兵した兵を平気で使い捨てにしたのとは随分隔たっていて、日露戦争前というまだ日本が思い上がらないでいた時代を感じさせる。
    また軍隊の組織はどう統率されるのが健全なのかというテーマは小説に一日以上の長がある。
    自然描写の緻密さ、迫力、ことに極寒の中でどうすれば握り飯を凍らさないでおけるかなどの描き込みも見事。

  • 八甲田山消された真実の発売を機に再読。
    雪山の怖ろしさ厳しさにただただ圧倒される。

  • 1902年の八甲田雪中行軍遭難事件をモチーフにしているが史実より新田氏の小説のほうが有名であろう。

    年間降雪量世界一の都市は青森市だが特に雪深い八甲田山へ満足な雪上装備もないままの雪中行軍はまさに無謀な人体実験といえる。日清戦争勝利の興奮冷めやらぬまま日露戦争を迎えんとする高揚感と不安感が渦巻く異様な狭間期に起こった事件である。そうした中でも徳島大尉は軍隊的規律と実証的判断を以って11日間の210キロ余の雪中踏破を成し遂げる。対照的に青森第五聯隊の指揮命令系統の混乱や調査不足が199名の死を招いた。では第五聯隊の指揮官が無能であったかというとそうではない。山田少佐しかり神田大尉しかり自責の念に堪えかね自決を遂げている。つまりは厳寒期の八甲田山行軍自体が多分に無謀な計画であり、軍部幹部らの認識の甘さか聯隊の悲劇を生みだしたのである。

    さらに単に教訓話や英雄話で終わらず本作を名作たらしめているのは第三章以降である。第五聯隊の捜索とともに、二挺の銃を巡る詳述や遺族補償は「軍」とは階級と規律を重んじる組織であることを思い起こさせ、明治特有の閉鎖的で暗鬱とした雰囲気を横たわらせる。津村中佐の独白のような雪中行軍の意義と日露戦争での各自の顛末は何ともやるせない。

    山岳小説家として著名な新田次郎氏であるが、自然に向き合ったときの人間についての深い洞察力を感じさせる。

  • 組織論としてが興味深かつた

  • 座右の書にしている経営者が多いと聞き、
    そちらの興味から読んでみた。

    全体的に評価の高い本だが、
    どこを高評価と捉えるか、
    人それぞれで全然違うんだろうと感じた。

    例えば、
    「登場人物の中で優れたリーダーは誰だと思う?」
    と聞いてみると、
    読者によって回答はバラバラなんじゃないかなぁ・・・?
    という印象。

  •  本書を読んだのは、陸自での新隊員教育訓練中に於いてで、ゴールデンウィーク、久々の休暇にあっても本ぐらいは読めとの中隊長のススメがあり、その例に上がった本書を読んだ。
     非常に読みやすく、凄惨な情景がありありと浮かぶ文体は読者に臨場感を与える。私にとっては実際に行った訓練に直接通づる話しであって、他の読者よりも直接的に、ありあり想像させるものだった。
     さて、これは実際にあった事件を元に描かれたことはご承知のとおりであろう。日露戦争を目前に控え、寒さの中戦うとはどういうことか? それを知る為の行軍であった。結果は酷い有様ではあったが、この経験が後の日露大戦に於いて大いに活かされたことは史実に明らかだ。
     この書は自然を前にしての人間の無力さもさることながら、準備は何時でも大事だという当たり前の事に感じるであろう謹言を再確認させてくれるだろう。
     おそらく登場人物それぞれに好き嫌いが出てくるであろう、読むに従い、無能な上官に叱責したい気持ちで満たされるかもしれない。だが、その状況に叩き落とされた自分を想像するに、そう馬鹿に出来るものでは無いと私は感じた。第五連隊の指揮は命令下達されたその瞬間から壮絶なものだったのだと理解する。やはり人を指揮するとはなかなか難しいことなのだ。

     さて、これを読んで後、私はたった一日の25キロ行軍に参加する事になったわけだが、状況は雪中行軍と比べればとても優しく安全の確保されたものであったが、それでも鉄帽をかぶり銃を提げ装備を施した状況に於いて「歩く」という日常的な行為を数時間継続させることがいかほどに苦痛であるか、それを体験した上で本書を読み、かつて陸軍の凄みを思い起こせば、現実に命を賭して戦っていたのだなと感嘆するしかない。

  • 映画だと健さんかっこよくていい人だったけど、小説の中の徳島大尉、結構冷徹という発見あり。
    ダメ組織といい組織の対比モノとして読むビジネス書とも捉えられる。

  • 20代の時に読み、その時の印象をずーっと引きずっていました。
    読み直してみて、さてどうなるでしょうか・・

    *50ページに及ぶ序章~第1章雪地獄~第2章彷徨~第3章奇跡の生還~終章~解説・・
    読み進むにつれ、八甲田山の全景:行軍経路を折込地図で確認していました。
    青森5聯隊と弘前31聯隊との指揮系統の対比が、悲しい分かれ道を表現していました。
    神田大尉が絶望と共に放った声、
    兵隊の「おがさんに会えるぞ」の叫び。
    行軍の足音・・これらを冷静に受け止めている今・・

    読み直して良かった・・本当に!
    同じ文章~言葉を、繰り返し読みました。
    20代の感性とは確かに違うと・・読みながら、感じていました。

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