- 本 ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101122144
感想・レビュー・書評
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岩井圭也さんの「完全なる白銀」を読んだ時
今年のネンイチニッタは八甲田山死の彷徨を再読に決まりました
雪山小説の最高峰は、まだ譲れない
1977年の映画と共に記憶に残る作品です
弘前歩兵第三十一連隊隊長徳島大尉が高倉健
青森歩兵第5連隊の神田大尉が北大路欣也
2隊の対比が物語の主体
時代は日露戦争前夜(1902年)
日露が戦争状態となった場合の八甲田山系雪山縦断の可能性の模索
遭難事故については いろいろなところで語られていますので多くの方がご存知かと思います
久しぶりに読んで 記憶と違ったところがいくつかありました
一つは小説は1971年の書き下ろしで遭難事故より時代がかなり経っていた事
一つは 新田次郎の冷静な文脈に引き込まれる事
ドラマティックな記憶は映画からかな
序章で当時の陸軍の組織的欠陥とも思える命令服従制度を 第一章雪地獄 第二章彷徨で
到底人間には対処できない雪山を
第三章奇跡の生還で 生還した者にとっても続く地獄を
終章の記憶は全くなかったのですが
雪山へ向かわせた本当の責任を語る師団長
どちらの隊も勝者であるとした結末
亡くなった方々の家族への対応と
このあたりは新田さんの優しさなのか
この事故を無駄にしないという配慮でまとめられます -
日露開戦を前提とし、寒地装備や寒地教育のため発案された、厳冬積雪の八甲田山踏破。
青森の歩兵第五聯隊と、弘前の歩兵第三十一聯隊が、雪中行軍をやることになり……。
八甲田雪中行軍遭難事件を描く、フィクション。
論理ではなく、精神論。
無知な上官が、指揮権に干渉。
知識や経験を持つ者の進言を、受け入れられない。
日本帝国陸軍の愚かさを凝縮したような展開に、読んでいてやるせなかった。
ほぼ全滅の隊ばかりが有名だが、無事に踏破した隊がいたことを知る。
雪中行軍の過程は絶望的な状況だが、救助速度は迅速であったことは、救い。 -
日露戦争前に日本の陸軍が実施した冬季八甲田山縦走の悲劇を描いたドキュメンタリー的な小説。
日露戦争と太平洋戦争との違いこそあれ、「失敗の本質」と共に日本組織の問題点を可視化した良著だと思う。
『失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫 と 18-1)』 https://booklog.jp/item/1/4122018331-
2022/08/28
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おはようございます。
確かに!
職場でも上司の横槍や準備・調査不足、他部署との連携不足でのトラブルが多いですもんね ^_^;おはようございます。
確かに!
職場でも上司の横槍や準備・調査不足、他部署との連携不足でのトラブルが多いですもんね ^_^;2022/08/28 -
2022/08/28
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何度目の再読だろうか。
エンタメとしても一級品だが、やはりどうしても組織論、リーダーとはとか、第二次大戦前の日本という国のあり方の問題点等の視点で読んでしまう。色んな読み方が出来るのが本書のすごいところ。
確か昨年遭難事故の真実を描いた作品が出てるはずなのでそちらも読んでみたい。 -
八甲田山遭難についての本を読みたいと思っていて、最初はノンフィクション系を考えていたのですが、これ読んでおくべきかと思い立ち借りてみました。
八甲田山雪中行軍に対して、それぞれ懸念を持ちながら準備を進めるが、青森5連隊は、計画を進める神田大尉の思惑を外れていく。指揮系統の混乱、案内人の無視、無理な行軍などにより極寒の八甲田山を彷徨うこととなる。行軍の中亡くなっていく人達の描写は壮絶だ。
徳島大尉の指揮する弘前31連隊は工程を走破するが、一歩間違えれば遭難の危険性もあり、実際途中で解雇した案内人たちは、非常な苦労の上家に戻っている。
人体実験と称されているように過酷な工程に対して、準備や状況が悪化しても帰営せず続けることで被害者が増加したことがわかる。
また遭難した5連隊について事件後、批判を回避する目的で悲劇的側面を強調することで、有名となり31連隊の話が埋もれていたと言うのも興味深いところがある。
あくまで小説であり、登場人物も変更されているが、時折資料で出てくるところは実名で、ちょっと戸惑うところはあるものの、状況描写など極寒の山岳遭難を感じさせてくれるのはやはりすごい小説と思った。 -
八甲田山遭難のあまりの過酷さに食い入るよう読みました。当時の粗末な装備と、知識や情報もない中のでの彷徨は考えるだけで恐ろしい。凍傷で服のボタンが外せずに用も足せず失禁した衣服が凍って凍え死ぬとか想像を絶する。
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極寒の中で飢えや発狂に苦しみ、次々と命を落とす。まさに悲劇だ。状況がどんどん悪化していく中で、次に何が起こるのか、どうすべきか。思わず息を止めて引き込まれてしまう。
この悲劇は組織の失敗によって招かれたものだ。指揮系統の乱れや情報の軽視、諫言を無視する風潮など、様々な組織の欠陥が大きな悲劇を招いた。
自らが悲劇の一端を担わないようにするためにも、歴史上の組織的失敗を学ぶことが必要だと感じた。
著者プロフィール
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来年は ひまわり故郷の煙突読みますよ
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