つぶやき岩の秘密 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 232
感想 : 31
  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101122281

作品紹介・あらすじ

両親を海難事故で亡くした六年生の紫郎は、岩場に耳を当て、海のつぶやきを聞くのが好き。それは母の声のように響く。ある日、崖の半ばに人影を一瞬見た。幽霊を見たのか。先生の協力を得て、謎の人物の解明に乗り出すが、謎は謎を呼び、ついには死者が。息詰まる冒険と暗号解読を経て紫郎は、崖の秘密、両親の死の秘密を掴む…。物語の神様、新田次郎が描く傑作少年冒険小説。

感想・レビュー・書評

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  • H31.1.5 読了。

    ・S47年1月初版。謎解き、探検、冒険、お宝発見ストーリーに興奮させられること必至の作品。子供から大人になる時に一人で乗り越える力を養わせたい思いと子供に危険なことをさせたくないという思いの狭間で、大人の心の葛藤も描かれていて考えさせられた。後世に残したい作品だと思った。

  • つぶやき岩の秘密

    タイトルと読了感の開きが大きい小説。
    主人公が小学6年生の物語。
    そして海が綺麗な村の物語。
    したがって、内容も進行も心優しく、、、と思いきや、主人公が命を狙われるという穏やかではない展開に、、、。

    1.村に伝わる言いつたえ
    陸軍が敗戦とともに、金塊を村の地中に埋めたとの噂あり。
    しかし、誰もその真実の是非を知らず。
    村の歴史を遡ると、入村当時から今も存命は三名のみ。
    その三名のうちの一名が、少年に近づく。

    2.少年と海
    2歳で両親をなくして少年。
    1人で海を見る、歩く、泳ぐが好きな少年。
    ある時、絶壁の断崖に人影が、、、。
    幻か?人間か?
    少年の好奇心は、断崖を調査するという行動に。

    3.作品から
    少年の好奇心。恐れあるも、大人に相談しながら、一歩ずつ金塊の真実に近づく。

    現在も、国内で不発弾が見つかるニュースが流れる。

    小説を少年の出来事としてとらえるか?戦争とその後の世界の繋がりとしてとらえるか?
    昭和40年代に生まれた小説。50年の月日が経過した現代でも読み継がれる理由が見えてくる。

    心に落ちてくる物語は、晴れの青空のように、しみわたる。

  • 作者の新田次郎さんといえば、『八甲田山死の彷徨』を読んだことがあります。その山岳小説の巨人と言われた方が遺したたった一篇だけの海を舞台にした少年小説です。
    少年紫郎が偶然、崖の半ばに人影を一瞬見かけたことから、物語は動き出します。紫郎だけでなく彼に相談された小林先生、その弟の晴雄にも不穏な影がちらつき始めます。
    紫郎に対して少しの変化も見逃さず、真摯に向き合う小林先生。ひとりでやってみろ。やろうと思えば出来るものだと突き放した言い方をしながら紫郎の力を信じる晴雄。危険に近づくなと孫のことを心配しながらも、彼が決めた行動を見守る祖父母。紫郎に辞世の句を託し、自分の力で宝を見つけよとこの世を去った白髯。
    この人たち大人の紫郎への関わり合い方がこの物語のポイントでもあったと思います。
    「ぼくはやるぞ、ひとりできっとやってみせるぞ」
    「ひとりでやってみるということが、人間にとって一番大切なことなんだ」
    などと、少年が成長するにはひとりで考え、行動を起こすことが、とても大切なんだよと促してくれているようでした。それが成功でも失敗でもそんなのは関係ない。それまでの忍耐と勇気に意義があり価値があるのだと力づけてくれます。
    それはある意味、大人に対しての忠告でもあるのかもしれません。大人は見守ること。あるときは腹を括って送り出さなければいけないときもある。それでも少年が成長するためには黙って送り出さなければいけない。それは放任ではないですよね。
    約45年前の日本では紫郎のような少年、小林先生たちのような大人は、当たり前のように存在していたのでしょう。それを遠い過去の昭和時代の思い出と捉えるのはちょっとさびしいです。今の時代にも、紫郎少年があちこちにいて、そんな彼を成長させていく大人たちがいることを信じてます。

  • この作品が新田次郎の原作であることは、この新潮文庫版が出るまで私は知らなかった。昭和47年の刊行だったこともあり、まだ戦争の傷跡は一般通念としてぎりぎり残っていた頃だろう。
    そしてやはり、昭和の少年たちがこの作品に触れたのは、NHK少年ドラマシリーズの一作としてだろう。この作品は、石川セリの歌うテーマ曲「遠い海の記憶」と不可分だという人は、私と同じように多いのではないか。そのわけは、いつか思い出すだろう。大人になったときに…。

  • 小学生高学年向けの児童文学。周りの大人の非常識な寛容さも物語ならでは。男の子の冒険心を大いに擽る。少年が大切なものが何かを感じ成長する姿を描いている。2018.4.6

  • B913.6-ニツ
    300593753

    遠い子供の頃のことなのに,妙に鮮明に記憶に残っている事柄が,おそらく誰にもあると思う.私にとってのそれがこの本である.いや,正確に言えば本ではなく,ストーリーである.
     紹介文を書くにあたり,久し振りに読み返して,記憶に残っている理由が想像できた.出版翌年に放映されたテレビドラマを夢中になって観ていたこともさることながら,出版年と作中の年齢を合わせて考えると,主人公の少年が私自身に綺麗に重なるのである.太平洋戦争がそれほど遠くない時代,戦争の痕跡が身近にあったのも,鮮明に記憶している理由であろう.小説の存在を知ったのは高校生の時だった.
     物語の舞台は三浦半島にある,夏は海水浴客で賑わう村.そこに残された旧日本軍の要塞跡と,隠されたとされる財宝.財宝を廻る謎と事件.辞世の句として渡された暗号,そして解読.そこには少年期なぞ遥かな過去になった今の私が読んでも心踊るものがある.
     作者新田次郎は山岳小説や歴史小説で有名だが,たった一つ書いた児童文学が本書である.気象学者でもあるので風景や気象現象の描写が的確で美しい.おそらく現在は状況が変わっているであろうが,本書を片手に三浦半島を散策するのも良いだろう.また,作中で主人公の担任の先生が夏休みの課題として作文を課す時に作文について説明する件りは,文学者としての新田の持論に触れるようである.
     冒頭で触れたが,本作はNHK少年ドラマシリーズの一作としてドラマ化された.本書を通してドラマを観,他の作品の原作を読むというのも読書の楽しみ方の一つであろう.若い人たちが知っていそうなところでは,筒井康隆著『時をかける少女』がある.
     因みに,新田次郎のご子息,数学者の藤原正彦氏は『若き数学者のアメリカ』『国家の品格』などを著している.

  • 子供向きと知らずに読んでいた

  • 『剣岳・点の記』の新田次郎と聞いて、読まずにいられない。珍しく少年小説。

  • 山岳小説家が海を舞台に書いた少年小説。
    海が舞台といっても、そこはちゃんと岸壁登攀でハーケンとかカラビナとかがちゃんと出てくる。

    メルヘンの世界、楽しみました。

  • 心あらわれる作品である。先生と児童の密接な距離感や、大人たちの子どもの成長を見守る姿勢は、現代では実現しにくいもので、教育のあるべき姿が詰まっているとも思えるからだ。こう考えるのは自分が大人だからで、子どもの時代なら紫郎少年の物事を解決したいという一途な気持ちにあこがれるだろう。

    若者として登場するのは主人公と、小林先生、そして彼女の弟だけである。みんなゆらぎのない心を持っていて、とても大人びている。言葉遣いが丁寧なので余計にそう感じるのかもしれないが、当時この作品を読んでいた子どもたちは、みな早く大人になりたい、と感じていたのかもしれない。

    無謀とも思える小林先生の判断や、弟晴雄の体を張った援助、そして戦争を体験した世代からの薫陶は、紫郎にとっては金塊以上の宝ものだろうな、と思うのである。

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著者プロフィール

新田次郎
一九一二年、長野県上諏訪生まれ。無線電信講習所(現在の電気通信大学)を卒業後、中央気象台に就職し、富士山測候所勤務等を経験する。五六年『強力伝』で直木賞を受賞。『縦走路』『孤高の人』『八甲田山死の彷徨』など山岳小説の分野を拓く。次いで歴史小説にも力を注ぎ、七四年『武田信玄』等で吉川英治文学賞を受ける。八〇年、死去。その遺志により新田次郎文学賞が設けられた。

「2022年 『まぼろしの軍師 新田次郎歴史短篇選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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