イエスの生涯 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101123165

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  • ■『イエスの生涯』 遠藤周作著 新潮文庫

    【後編2‐3 イエス路程】
     日本随一のカトリック作家である遠藤周作のイエスの生涯。福音書に描かれるイエスの言動、特に奇跡と愛を「事実と真実」に分け、イエスの生涯を読み解いていく。水を葡萄酒に変えたり、湖面を歩いたり、病をいやしたりする奇跡物語を「事実ではないが真実」とし、それを目にした者の心に上る信仰がそうさせた、そのように見せたというのは、正しいのかは分からないけども、納得出来てしまう部分でもある。
     あくまでも小説家が描くイエス像であるので、荒井献などの聖書学者や神学者たちからは、鼻もちならない部分があるのかもしれない。その辺は学者にはかなわないだろうが、イエスを愛する遠藤の思いが描かせたイエス像は、我々も一読に値する。
     ややこしい書かれ方はされておらず、素直にすっきりと読める。

    <イエス伝関連資料>
    ルドルフ・ブルトマン 『イエス』
    田川建三 『イエスという男』
    八木誠一 『イエス』 清水書院・人と思想シリーズ
    遠藤周作 『イエスの生涯』
    フランソワ・モーリヤック 『イエスの生涯』 など

  • 何故キリスト教が今日に至るまで二千年もの間廃ることなく発展してきたのか?それは愛の宗教だからではないか?しかも、それは他社への高次元の愛である。「汝の敵をも愛せよ」とその当時弟子たちでさえ受け入れがたかった、常識として考えられなかった教えをとき、そして十字架上で自分を十字架に追いやった人々を神の前に取りなすその姿から、理解できるような気がした。そして、それはイエスの復活の後、人間的に弱虫だった十二人の弟子たちを殉教をも惜しまない信仰者へと生まれ変わらせていった原動力となったのではないか。

  • 遠藤周作のなかにあるイエス像と、わたしのなかにあるイエス像はなんでこんなにも近いのだろう、といつもおもう。無力でぼろきれのようで弟子にも失望されて、当然ユダヤ民族の反ローマ主導者ではなく、弱い人のそばにいて苦しむ人のとなりで祈っていて、でも無力で失望される。しかしその命をもって全てを救済しようとするあまりにも深く溢れ出る人間への愛。現代人はキリスト教なんて、宗教なんて、と馬鹿にするけれど、究極的な意味での人間の救済はやっぱりお金にも権力にも他人の愛にも求めることはできないのかもしれない、そんな時代に示唆するものはとても多い気がするのだけれど。新約聖書の福音書のイエスの復活まで、つまりほんとうにイエスの生涯をこと細かに書いていて、わたしはなにかそれを追うにつれ心がみたされていく、そんな感覚。ユダに対する記述がほんとうに視点の転換だったけれどもすっと腑に落ちて感動した。定期的にキリスト教に触れる意味を今一度問い直した一冊。

  • ページをめくらずにはいられない展開。読ませる。唯一のイエスの理解者であるが故にイエスを裏切ったというユダ像がとても良い。

  • 遠藤周作が「弱きイエス」を、当時の風景や情景がリアルに伝わってくるように描いている。
    過去の様々なイエス伝を踏まえつつ、その実像に肉薄しようとしているようだ。
    「歴史的イエス」の見方、「真実のイエス」の見方、すごく学ぶべき点は多いかと思います。
    当時イスラエルにいたらイエスの像はこのようなものだったのかと目の前に出来事が淡々と繰り広げられていくような感覚を覚えた。

    日本人としてのキリスト教、宗教の見方を遠藤周作氏に学んだところが大きいと思います。

  • 「死海のほとり」に次いで読みました。キリスト教徒ではない私には腑に落ちる内容。なぜイエスは惨めな死に方をしたのか。その後の謎は残ったままなので、「キリストの生涯」を読もうと思う。

  •  宗教に興味はないけれど、一個人(この表現は合ってるんだろうか…)として「イエス・キリスト」の生涯を捉えてみるのは、とても面白いものだった。

     『無力であること』に自分を賭けることから始まる。

     開き直りとは、違くて。この言葉を胸に、前に踏み出したいなぁと思ったり。


     これを読んだキリスト教のお偉いさん方は、「東洋の研究者が、なんと可憐に分析、研究をしたことか」ってくらいのお話なのかもしれないけれど、個人的には、「奇跡」を並べ立てて「人間と一線を画す存在」を主張されるより(すっごい偏見で物事を並べ立ててるわね、わたし…無知でバカなこの戯言だと思ってください)自分の胸に、ぐっときました。
     

  • ミュージカル"Jesus Christ Supersta"の副読本として、買ったものの長い間積読だったものをようやく読了。判りづらい箇所はあったが、聖書とは何か、キリストとはどんな人物なのか、知ることが出来ました。少しずつ、遠藤周作を軸にキリスト教について読み進めて行きます。

  • よくわからなかったので評価なし。それなりに面白さ(funnyではなくinteresting)はあった。また、読んでよかったと思う点は、キリスト教に対する幼稚な先入観が払拭されたことだ。キリスト教と縁のない人生を送ってきた私にとって、その教義などはあくまでも想像上のものでしかなく、そこではたとえばキリストはつねに絶対的に善人であり、聖書は文字どおり「バイブル」であり、信者は妄信的であった。しかし、じっさいにはキリスト教を深く信仰していることで知られている著者の遠藤周作ですら、聖書の解釈には疑義を挟み、それどころかなぜここまで神格化されているのかという、キリストという偉大なる存在それ自身についても深く掘り下げている。このような態度が信者のなかで存在するということを知っただけでも、私にとっては大きな驚きであるとともに収穫であった。キリスト以外にも、聖書に登場するさまざまな人物のエピソードについてもほとんどが初耳で、むしろ善行で知られる、道徳的な人物は少数派であるように感じる。こういう聖書の内容もまた多分に驚きであった。とかく、勉強になる1冊であった。

  • 遠藤氏が描く、ただ愛の人であり、すべての人の同伴者であるというイエス像がありありと心の中に立ち上ってきて、心が震えるような感動が読んだ後もずっと続いている。

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著者プロフィール

1923年東京に生まれる。母・郁は音楽家。12歳でカトリックの洗礼を受ける。慶應義塾大学仏文科卒。50~53年戦後最初のフランスへの留学生となる。55年「白い人」で芥川賞を、58年『海と毒薬』で毎日出版文化賞を、66年『沈黙』で谷崎潤一郎賞受賞。『沈黙』は、海外翻訳も多数。79年『キリストの誕生』で読売文学賞を、80年『侍』で野間文芸賞を受賞。著書多数。


「2016年 『『沈黙』をめぐる短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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