イエスの生涯 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101123165

感想・レビュー・書評

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  • 聖書、弟子たちの福音書から、
    事実であろう部分を抜き取り、神様としてのイエスではなく、
    一人の人間としてのイエスを描き出そうとした作品。
    遠藤周作は神様としてではなく、一人の人間として、
    その思い、言葉が弟子たち、民衆を動かしたのだろうと語る。
    事実はもう知ることはできない。
    しかし、その語り継がれた言葉がどれだけ多くの人を救ったのか、
    それを考えると感慨深くなるのだ。

  •  『海と毒薬』、『沈黙』に引き続いて3作目は『イエスの生涯』を選んだ。
     前の2作品のように物語、小説が書かれているのかと思ったら、読んでみると他の作品のために著者がイスラエルを旅行し、イエスや弟子たちについて考えたことをまとめた「創作ノート」が元になっているらしく、新書のような読み物になっている。
     聖書の中の「事実と真実」、人々はイエスに何を期待し、イエスはそれらにどのように応えたのか、そして、イエスが「愛の神の存在をどのように証明し、神の愛をどのように知らせるか」(p.56)ということに苦悩し、孤独に生き、そして無力に死んだかということが、詳しく考察されている。色々な聖書学者を参照しつつも、小説家ならではのオリジナルの視点で、特に人間の心理が巧みに分析されていて面白い。特にユダがある意味で一番のイエスの理解者、という分析が興味深い。
     遠藤周作自身の踏み込んだ解釈を読むことになるので、その前に読者自身が福音書をどれか1つでも一通り読んでおくか、聖書の内容に関する基本的な知識を前提として持っておく必要があると思った。(11/11/12)

  • イエス・キリストのことは、正直、よくわかっていなかった。なぜこんなにも多くの人の信仰をえているのか?この小説を読んで、人となりはわかった。信仰については、なんとなくわかってきたというところかな。とはいっても、依然としてピンと来ない。

  • 「ただ日本人である私がふれたイエス像がキリスト教に無縁だった読者に少なくとも実感をもって理解していただけるもの」(あとがき)
    遠藤周作氏の作品をいくつか読んでいて、まさにそれが知りたかった。
    数多くある解釈のうち、日本人作家のひとつの見方でしかないけれど、それがわかりやすい形で伝わった。

    ローマ帝国の一部であり、その頃からナショナリズムの強かったユダヤ人社会。その政治的な状況下、民衆・ユダヤ教の守護者・知事らの利害が彼の人生を大きく運命づけていたとは知らなかった。
    同じメシア(救世主)でも、民衆にとっては「ユダヤから征服者を追い払うような」、イエスにとっては「愛の、人間の永遠の同伴者として」のメシアであり、その大きな隔たり最後まで埋められることはなかった。
    民衆が求めていたのは実質的な徴と奇跡、つまり反ローマ運動の民族主義のリーダーや、苦しい人生を豊かに反転させるような存在であり、実際の人生には役立たない「愛」は無用だった。
    だからこそ、イエスの「幸いなるかな心貧しき人 天国は彼等のものなればなり 幸いなるかな泣く人 彼等は慰められるべけれ」という発言はまさしく期待外れで、大きな反発を呼んだ。民衆の延長だった弟子にも理解されなかった。

    十字架の上で磔になって死ぬまではひたすらに無力な人間となり、
    その死の間際でも裏切った弟子たちのために神に祈った。
    最後まで今でいう「超いい人」であり続けた師は、その死をもって初めて弟子を驚愕し、自分の弱さを恥じ、無力な弱い人間から強力な伝道師へと転じしめた。
    そこへ「復活」というもうひとつの奇跡が加わり、さらに何かもう一つ、弟子を確実に覚醒させることがイエスの死の前後に起きたに違いない、
    イエス死後の弟子の努力なければ今の繁栄はないのだから。
    というのが遠藤氏の独自解釈か。

    これは「キリストの誕生」も読まねばなるまい。
    このイエスへの解釈を知った上で、「沈黙」はじめ一連の作品ももう一度読みたいなあ。

    「愛」をここまでストレートに伝えたキリスト教が、どう変質して教義のごたごたした争いや、新大陸やアフリカにおかえる残虐非道な行いを是認するに至ったのかも知りたい。

  • イエス・キリストは人間を超越した存在ではなく、人間と同じ無力で、悩み苦しむ人であった。
    それは、イエスとして生まれたときから始まり、人から罵られ、誤解を解くこともなくみじめに死んでいった姿を描いていた。

    遠藤周作が過去のイエス伝を覆すようなあまりにみじめな人としてのイエスを書いたのは、そのイエスの姿が死を超えてやがて人の中に高潔な精神を築いていく過程だった。
    その死の最後も、殉教者や思想家、危険人物、政治犯というのではなく、ただの犯罪者として処刑された。

    愛というのは何か、イエスの示した愛、遠藤周作が考えた愛、この小説を読んで自分にとって愛というのはどういう存在なのか、深く考えさせられた。

    奇跡はあったのではない、人それぞれの心にある切なる願いを愛と呼んだのかもしれない。
    何もできなくてもよい、無力でも良い、存在があること自体が意味があった。
    そう考えたのは私だけかもしれないが、生きている意味、愛の意味として、この世に生まれ、今を生きていることが意味がある。
    そう感じられるのに、この本も何回も読み直して、その都度新しい思考の発見を見つけて至った、愛に対する考えである。
    きっとこれからも読み返すたびに、また新しい愛を思い至るのだろうと思う。

  • 始め物語だと思っていたので、なかなか入りこめず。。。

    日本のキリスト教作家の作品はキリスト教的な思想や、キリスト教贔屓にどうしても違和感を感じるが、遠藤周作の作品ではそれがなく、『沈黙』でもあるように、宣教師も敬虔な素晴らしい人物というよりは一人間として書かれている。
    私にはこのことが不思議だったが、その理由がこの本によってわかった。『私が愛した小説』でも触れているが遠藤周作はイエスを一人の人間として捉え、奇蹟を起こす特別な存在としては見ていない。遠藤周作の書くイエスの心には愛の神、神の愛があり、苦しむ人々を目に見える事物で救うのではなく、『永遠の同伴者』として苦しみを分かつ存在になろうとした。しかし弟子や人々はそれを理解できない。イエスは人々の嘲りの中で惨めに死を迎え、死に様によって自分の心を示した。
    違和感と、猜疑心なしには読めない聖書も遠藤周作よって、本来の意味を伝えてくれているのではないだろうか。

    キリストの誕生も読もうと思う。

  • キリストの生涯を文献を解釈しながら語っていく。
    物語的な文体ではないのに引き込まれるように読めた。
    塩見七生さんのような作品かな??

    キリストも普通に人間なんだな。ただ、やさしい人間なんだな。
    弟子思いで、彼らの後世のために命をかけるほどやさしいんだな。
    弟子であった使徒も、フツーの人間なんだな。

    つまり、我々フツーの人間にも、いやだからこそ、宗教というのは理解できるし、解釈していくべきものなんだろうな。

    と思った。

  • 遠藤周作のイエスを追った小説。

    キリスト教初心者にはかなり有難い!

    注意しなければいけないのは、
    遠藤さんの解釈なので客観的に読む必要性あり。

    小説としてはそれほど面白くはないと思うが

    イエスを追ってみたい人には、
    わかりやすい”いい本”だと思う。

  • 「死海のほとり」と表裏をなし「キリストの生涯」と一対をなす。
    そんな作品です。作風はけっこう堅めストレート。

    個人的には「沈黙」を合わせた4作を土台にして、あとは気になった作品を積み上げていって、頃合いをみて「深い河」をぶっかけるって具合に読んだら、遠藤周作のスタンスがなんとなくつかめるんじゃないかなーって気がします。

    「死海のほとり」ほど小説でもないしガツンとこないけど、ちょっと我慢をしてでも神学大生には是非読んでほしいです。
    .
    04 けいじ

  • 研究文献を引用しつつも、小説家としての想像や創作を多分に盛り込んで描いた、愛に溢れるイエスの生涯。蔑まれ死んでいったイエスとユダの間の、奇妙な同一性やつながりは興味深い。ユダ本人は、自分の裏切りが後々まで記憶される運命にあるとまでは予想しなかっただろうと思うけどね。

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著者プロフィール

遠藤 周作(えんどう しゅうさく)
1923年3月27日 - 1996年9月29日
東京生まれ。父親の仕事で、幼少時代を満洲で過ごす。帰国後にカトリックの洗礼を受けた。1941年上智大学予科に入学したが、中退。慶應義塾大学文学部仏文科入学・卒業後、カトリック文学を学ぶためにフランスへの留学。帰国後の1954年『アデンまで』を発表し小説デビュー。1955年『白い人』で芥川賞を受賞し「第三の新人」として脚光を浴びた。
1958年『海と毒薬』で第5回新潮社文学賞及び第12回毎日出版文化賞、1966年『沈黙』で第2回谷崎潤一郎賞、1979年『キリストの誕生』で第30回読売文学賞評論・伝記賞、1980年『侍』で第33回野間文芸賞などそれぞれ受賞。1995年に文化勲章を受章している。
上記受賞作のほか、1993年刊行『深い河』もキリスト教と日本人をテーマにした代表作と見なされており、映画化された。60年代以降「狐狸庵山人」(こりあんさんじん)を名乗り、様々なエッセイを記した。数々の作品が欧米で翻訳され高い評価を受けており、存命中ノーベル文学賞候補だったこともよく知られている。

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