キリストの誕生 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101123172

感想・レビュー・書評

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  • 想像と史実がまざりすぎかな

  • カテゴリ分け困った…。
    最初フィクションにしたけど違うよね、たぶん。
    遠藤周作を初めて読んだ本。
    当時キリスト教に興味があって聖書読み始めたころ。
    この本を読み終わって近くの教会(聖公会)に通い始めました。
    自分が日本の作家読む気がしないのはやっぱ宗教的視点が欠けてるというか、べつに一神教じゃなくてもいいんだけど、何だろう、人間関係のゴタゴタとか恋愛だけじゃない、それを超えた視点とか、価値観とか世界観とかが自分にはどうしても必要だからです。
    自分は幼稚園から中学までクラスのスケープゴートでいじめられたので、男性が怖くて(クラスの男子に殴られたりしていた)恋愛出来なかったし、友達も少ない(ゼロではないが)。
    まさに聖書でイエスが言ったように(健康な人に医者は要らない、いるのは病人だ)、ある意味病人だったワケで。
    読んでよかったと思います。
    文字通り命を救われたかも。
    おかげで今は生きててよかったと思ってるし、出来るだけ長生きして人生楽しみたいです。

  •  『沈黙』、『海と毒薬』、『イエスの生涯』、『白い人・黄色い人』に続いて、「遠藤周作文学館に行く前に遠藤周作を読みましょうシリーズ」の第5弾。『イエスの生涯』の続編としても位置付けられる作品で、イエスの死後、イエスがキリストとして信仰の対象となる過程、原始キリスト教が成立していく過程を、弟子たちの視点で描いたもの。
     率直に言って、おれは『イエスの生涯』よりは、興味が持てた部分が少なかった。たぶん弟子たち、というのはイエス自身よりもさらに馴染みがおれにとっては薄いからだと思う。それでも、ペトロとポーロという対照的な2人の生きざまがありありと浮かんでくる筆致が面白い。ペテロがポーロやユダヤ教と駆け引きをする部分には緊迫感があるし、70年のエルサレム攻囲戦の様子は臨場感がある。ステファノという弟子についても知らなかった。
     キリスト教の歴史について、知らなかった多くのことが、歴史小説を読むように知ることができたことは良かった。(11/12/--)

  • キリストの誕生、つまり十字架上で死んだイエスが復活して人々のなかで永遠に生きていく経過が語られている。力作だ。キリスト教が短期間で広く普及されるに至った謎を追及している。そして、小説家ならではの表現力でもって、イエスの死後に布教に尽力したヤコブ、ペトロ、ポーロなど登場人物が人間臭く描かれている。それにしても、なんでユダヤの人々はこれほどまでに虐げられるのか?

  • イエスの死後、どう彼が弟子たちから神の子として崇拝され、またたくまに欧州に広がるにいたったのか。
    ヤコブ、ペトロ、ステファノ、ポーロら、殉教した弟子たち足取りから追う。

    基本的には外へ外へというエネルギーをもちながら、その中で教団が分裂したり、新たな問いを投げかけられたりするたびに、そのつながりを強くなり、その輪も広がっていく。
    なかでも大きな問題は、救われるべきはユダヤ人のみなのか、ヤハウェと契約していない異邦人もなのか。このユダヤ教の枠を超えるのは大きな反発があったし、超える中で得られたものも大きかった。
    だから、異邦人に伝道した最先鋒のポーロの活動は高く評価されている。

    結局は「不合理ゆえにわれ信ず」。
    「キリストはなぜあんな最期を遂げたのか」「神はなぜ沈黙しているのか」「キリストはなぜ再降臨しないのか」といった難題に悩みもがき続けることで、キリストは人生の同伴者になり、みなの心に「復活」した。
    と、不思議な結論でおわってしまった。
    それを筆者も「私も書き得なかった神秘的なX」と結んでいる。

  • 『イエスの生涯』と合わせて読むとより深くキリストを理解できると思う。

    なぜ神はキリストを見はなしたのか、弟子はなぜキリストを裏切ったのか、ユダヤの王はなぜキリストを恐れたのか。
    全ての謎はこの小説に繋がると思います。

    それでもなお、その姿を隠すことなく人に晒したイエスの心。
    真実を通すには、時として醜く孤独で、耐えようのない漆実を味わうのだと。
    それを受け入れられる自分を持てるのかが、問われている。
    自分と向き合う勇気を持てるのかが、強く心に残る一冊です。

  • イエスの死、使徒たちの死、そしてエルサレムの陥落。葛藤と絶望に満ちた原始キリスト教団の姿と、解けない「謎」を提示して、遠藤周作の語りは終わる。もしかしたらエルサレム陥落後、なぜ神は救いに来てくださらないのか、という疑問が蔓延したからこそ、その答えとして、原始キリスト教においてグノーシス主義が一定の勢力を持ったのかもなぁ。という仮説。

  • 「イエスの生涯」の続編。
    イエスの死からユダヤ戦争辺りまでの原始キリスト教団における使徒(主にパウロとペテロ)の心理を中心に描く。

    盲目的なキリスト賛美でなく、冷静に、人としてのキリスト教団を描いているので、非キリスト教徒の人間にもあまり抵抗なく読み進められる。

  • 無力のまま死んだイエスが、なぜ後世の人々により「キリスト=救世主」と呼ばれるまでに祭り上げられたのか。

    釈迦やムハンマドのように、「人間としての理想像」に挙げられる人はいても、それ自体が「信仰の対象」となるようなことは、イエスの他に例がない。それも、厳格な一神教であったユダヤ教のもとで、である。

    本書では、イエスが死後に「キリスト」となっていく「過程」が描かれる。しかし、なぜイエスだけがここまで高められたのか、という「理由」については、未知のものとしている。おそらくこれは永遠に世界史の謎として残るだろう。

  • 「イエスの生涯」の続編的小説。
    イエスが十字架上で磔刑に処された後、復活し、キリスト教が生まれ、広まって行く過程を描いた物語。

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著者プロフィール

1923年東京に生まれる。母・郁は音楽家。12歳でカトリックの洗礼を受ける。慶應義塾大学仏文科卒。50~53年戦後最初のフランスへの留学生となる。55年「白い人」で芥川賞を、58年『海と毒薬』で毎日出版文化賞を、66年『沈黙』で谷崎潤一郎賞受賞。『沈黙』は、海外翻訳も多数。79年『キリストの誕生』で読売文学賞を、80年『侍』で野間文芸賞を受賞。著書多数。


「2016年 『『沈黙』をめぐる短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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