王国への道―山田長政 (新潮文庫)

著者 : 遠藤周作
  • 新潮社 (1984年3月発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (357ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101123196

王国への道―山田長政 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 山田長政とヨゼフ岐部の物語。
    タイのアユタヤ朝に渦巻く凄まじい陰謀の中で出世を目指す山田長政の生き様と、信仰に生きるヨゼフ岐部の生き様の対比を描く。

  • 王国への道は、江戸時代にタイでかなり出世した山田長政を描いた遠藤周作の小説である。山田長政は学校の社会で習った人物であるが、特に出自に不明点が多いことで、歴史上でも謎深い人物なのだろうと思う。そんな謎のある山田長政を描いたこの小説は、私にとってはタイに対する印象の原点の一つと言える。タイ人は、東南アジアにおいて最も不気味で危険な人種と言うのが、私の印象である。

    山田長政とタイについて、深い印象を私に与えた本書であるが、一番インパクトのあったのはペドロ岐部、ペトロ・カスイ・岐部の存在である。私はこの本を読むまで、この人物のことは全く知らなかった。ペトロ・カスイ・岐部はそれ以来、私が最も好きな歴史上の人物となり、岐部の足跡を辿ると言うのはテーマの一つとなった。

    遠藤周作は基本的には弱い人物に光を当てる作家で、代表作の「沈黙」はその極致だと思う。主人公ロドリゴが踏絵に足を掛けるというクライマックスにおいて、ロドリゴの心の中で神であるキリストが言った、

    「踏むがいい。お前の足の痛さをこの私が一番よく知っている。踏むがいい。私はお前たちに踏まれるため、この世に生れ、お前たちの痛さを分つため十字架を背負ったのだ。」

    は、私が学生手帳に書き込んだ言葉であるが、そういうのを遠藤周作は主に描く作家で、そこに感情移入したものだった。因みに上述シーンの後、

    「こうして司祭が踏絵に足をかけた時、朝が来た。鶏が遠くで鳴いた。」

    と遠藤周作は描いているが、これはイエスが幽閉されている大祭司カヤパの家に一番弟子のペトロが師匠を心配して早暁侵入して、家の者に発見された際のエピソードから取っている。お前はイエスの仲間かと問われて「イエスなんか知らない」と三度も言って師を裏切った際、鶏が鳴いたのである。ペトロはその前、「鶏の鳴く前に、あなたは三度私を知らないと言うだろう」と言われていたのはこのことだったのか、と思い知るのである。

    そんな、やんごとなきローマ初代教皇たるペトロをもこの弱さ、というのを描いた遠藤周作が描いた強いキリスト者が、この岐部である。

    俺にはこんな人生は無理だと思いつつ、今の自分の年齢の時、岐部はどこで何をしていたんだろうか、というのはたまに思う。サウジにいる頃、酷暑の中汗みどろで働いていたのだが、そのころの年齢が、岐部が中東を横断してローマに向かっているのと同じ年齢だった。岐部は、この暑さをどう思ったんだろうか、と思ったりした。

    今の私の年齢の時点では、岐部はまだ日本に帰国していないが、既に司祭叙階を受けた欧州は旅立っており、日本への潜入を企てて東南アジアに到達していた筈だ。岐部は37歳でインドのゴアまで到達し、43歳で帰国している。その間、岐部は日本へ戻る船を求め、マカオ、ルソン、そしてアユタヤにも足跡を残している。

  • 単身、海と砂漠を渡ってローマまで行き神父になったペトロ岐部と、アユタヤ朝時代のタイで王女と結婚したともいわれるほどの栄華を誇った山田長政の二人を描いた小説。二人の邂逅があったかのようにも描かれており、多分にフィクションを含む話だが、「神の国」と「地上の国」を対比させ、どちらが幸福なのかを読者に問いかけてくる構図は面白いと思う。また、ローマで枢機卿の秘書になる話まで断って日本に行こうとしたペトロ岐部の姿と、山田長政が権力への欲望と権力を獲得する過程で犠牲となった人々への罪悪感の間でもがき苦しむ様子などは、深く印象に残った。

  • 陽炎ゆらめく灼熱のアユタヤで、野心を試すひとりの日本人。地球を転々としながら、信心を貫くもうひとりの日本人。避けられない世の無常の中、それぞれの描く『王国』に向かって、激動の道を敢えて進む姿がひたむきで、目が離せない。

  • 山田長政の物語だが、俗世で伸し上がる彼と対照的な人物として、殆ど自力でローマにまで渡りながら、布教の為禁教下の日本に戻った不屈の神父岐部も配され、タイトルの"王国"とはアユタヤ王朝や、一国一城の主という意味だけでない事が示される。仏教国が舞台だけに無理矢理キリスト教の話をねじ込んだようにも見え、英雄譚の要素が弱くなった分、ストーリーがやや中途半端になったきらいがあった。結果、作中で最も存在感を放つのは、権謀術数に長けたアユタヤ王国の摂政だったようにも思う。とはいえ、王宮内の権力闘争と長政の出世物語は、一気に読めるほど面白く、重要な役割を果たす女2人の使い方も上手い。アユタヤ観光の前などに読めばさらに興味が掻き立てられること請け合い。

  • 今度、東南アジアのタイへ行くのでタイを舞台にした本ということで読んだ。
    主人公は山田長政という実在の人物。
    江戸時代初期に日本からタイ(当時はアユタヤ朝)へ渡り、日本人傭兵として王室に仕え、権謀術数渦巻く中、将軍まで登りつめた男の出世物語。
    と同時に、ヨーロッパへ渡りキリスト教神父になったペドロ岐部(実在)という無私無欲の人物の目を通して、山田長政やタイ王室の権力争いを見ることで、「山田長政の成り上がりストーリー」というよりも、「権力を求めることの虚しさ」の方が、読者には強く伝わってくる。
    小説自体はそんなに面白いとは思わなかったけど、タイへ行った時、400年前にタイで活躍した日本人がいたんだ、と思い感慨にふけることができると思うので、読んでおいて良かった。

  • 1995 読了

  • 遠藤周作さんの作品は 沈黙、おバカさん に続いて 3作目です。遠藤さんの作品は 繰り返すことで 宗教的テーマを自然に 読者に伝えていると感じます

    戦のシーンでは 司馬遼太郎さんの峠、塩野七生さんのローマ人の物語と比較すると 、迫力を感じませんが、心理戦、頭脳戦のシーンは 面白かったです

    結末を知ってから読んでも面白いと思うので再読予定です

  • 戦国の世に、日本を飛び出してシャムの国(タイ)に渡り、活躍した山田長政の物語。

    駿河の出身とは知っていたがどのような生涯だったのかは不明の人物。
    彼の生涯と同時期を生きたキリシタンペドロ岐部と交差する人生がテンポ良く描かれてます。
    個人的には、長政の生涯をもっと深堀したものが読みたい。

  • もう一度アユタヤに行ってみたくなりました。

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