女の一生〈1部〉キクの場合 (新潮文庫)

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レビュー : 77
  • Amazon.co.jp ・本 (624ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101123233

感想・レビュー・書評

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  • 幕末から明治にかけての長崎において、密かに信仰を保っていたキリスト教徒が弾圧された”浦上四番崩れ”という歴史的史実を、弾圧されたキリスト教徒に思いを寄せる非キリスト教徒の女性キクを主人公に描いた遠藤周作の1982年の作品。

    『沈黙』でも描かれるようなキリスト教徒への迫害の様子のおぞましさはさることながら、主人公のキクとの出会いにょり最終的に改修する迫害する側の人間の心の弱さや、明治に入り諸外国との外交関係の観点から弾圧が次第に問題視されていく様子など、様々な主題が交差する。

    それにしても、若干ステレオタイプな表現もあるにせよ、遠藤周作はこうした悲劇的な女性を描かせても巧い。通俗小説ではあるが個人的に強く印象に残っている『わたしが・棄てた・女』を思い出した。

  • 女性の尊厳を描くことで男性の尊厳を浮かび上がらせ、総じて人間の尊厳とは何か、を考えさせる。
    長崎が舞台でとても読みやすい。ただ、やはり遠藤周作は重すぎて、1冊読むと食傷してしまう。

  • 沈黙の映画をみて原作を読んでキリスト教の話とは違う遠藤周作の本を読んでみようと思い一番キリスト教っぽくない題名の本を選んだつもりだったんだがキリスト教の話でした。キクがかわいそうでなかなかきついお話でした。

  • 幕末から明治維新の時代にかけての長崎・浦上崩れ(検挙・弾圧事件)を題材にした小説。
    恋い慕うキリシタン青年が流刑になり、その彼のために、死に至るまで自分の身を汚してまでも愛し抜いたキク。
    神を信じているのに、なぜ不条理とも言える苦難が振りかかるのか、、、神義論的な問いを突きつける。

  • 悲惨な時代や環境だからこそ、愛が純粋培養され結晶となり、生きていくことの救いと成り得る。
    と言うことで今僕が欲しているのは、愛だ?!

  • 「沈黙」に続く遠藤周作のキリスト教&長崎テーマの読書。

    作品自体は「沈黙」のほうが素晴らしい出来のように感じたけれど、キクという女の一生を通して、信仰や愛について描かれているだけに、より感じるものは多かった。

    キクの激しくも哀しい一生にはもちろん胸を打たれたんだけれど、伊藤とプチジャンの海辺での対話が圧巻。(むしろエピローグの津和野での懺悔が蛇足に感じた。勝手な感想だけど。)
    神は本藤よりも伊藤を愛すると。本藤のような人に神は必要ないのだというような。
    そうなのか…。本藤はすごく頑張ってるからこその成功なのにな、神様がその頑張りを見守ってくれて、幸運を与えてくれないと、割にあわなくない?なんて最初は思ったけれど、筆者の描く神はそうではないのね。救済を与えるのではなく、傍にあって苦しみをともにしてくださる。それならダメ人間ほど神に愛されるってこと?それって不公平じゃない?いやいやでも、人間は完璧じゃないんだから、本藤のような人だって弱くずるく醜い部分があるわけで、そこにおいては神がともにあって…。っていうかそもそも不公平って発想自体がおかしいような。でも…。

    「沈黙」に続いて、考えれば考えるほど、神という存在の意味が、大きく変わってくる読書。

  • 印象的だったのは、折々のキクとマリア像との対話(?)だ。いつも真っ直ぐで飾り気のないキクの言葉は、時に微笑ましく、時に悲しく、その一途な思いは美しい。

  • 半年くらい前に、津和野に行きまして。
    そのときたまたま立ち寄った、山奥にあるちいさな教会が、
    ずっと昔、キリスト教を棄教させようと
    集められた教会だという話を聞きました。

    まさかそのモデルになっているとは。
    この本に出てくるあの場面が、拷問のあった場所を指しているとは。
    すごく衝撃的でした。
    早くこの本を読むべきだった…

    この本、先輩Wさんからお借りしたのですが、
    そのWさんと、宗教について考えさせられる本だよね、
    という話をしました。

    宗教とは? 信じるとは? 愛とは?

    っていうのが主要なテーマかと。

    自分を信じるのってすごく大変。
    そして不安も伴うし。
    だけど、誰かがそばにいてくれたら、
    何かが支えてくれたら、
    きっと自分という人間は生きていける。
    そう思わせてくれる本です。

  • 久しぶりに遠藤周作の本を読みました。
    私が受けたとき、この本じゃないけど、遠藤周作がセンター試験の問題だったなぁ…。Z会の問題にも『海と毒薬』とかでてたなぁ…。

    ともあれ、凄く面白かったです。キリスト教云々とか日本人とは、という思想的な部分はちょっと何とも言えないけれど、ストーリーが良いです。

    映画とかにしたらいいと思います。

  • この本を読んだのは、大好きなアーティストの言葉がきっかけ。この本を読んで、愛すること、大切な人がいること・・・を想いながら曲を作ったと話していた。実際読んでみると、曲のタイトルや歌詞の内容により深みが増したように思う。もともと、個人的にグッとくる歌詞だったから気になって、一気に読んだ。いわゆる目を覆いたくなるような描写も多くて、字を追うのが辛い場面もあるし、ストーリーを通して救われないと感じることも多いかもしれないけど・・・。

著者プロフィール

遠藤 周作(えんどう しゅうさく)
1923年3月27日 - 1996年9月29日
東京生まれ。父親の仕事で、幼少時代を満洲で過ごす。帰国後にカトリックの洗礼を受けた。1941年上智大学予科に入学したが、中退。慶應義塾大学文学部仏文科入学・卒業後、カトリック文学を学ぶためにフランスへの留学。帰国後の1954年『アデンまで』を発表し小説デビュー。1955年『白い人』で芥川賞を受賞し「第三の新人」として脚光を浴びた。
1958年『海と毒薬』で第5回新潮社文学賞及び第12回毎日出版文化賞、1966年『沈黙』で第2回谷崎潤一郎賞、1979年『キリストの誕生』で第30回読売文学賞評論・伝記賞、1980年『侍』で第33回野間文芸賞などそれぞれ受賞。1995年に文化勲章を受章している。
上記受賞作のほか、1993年刊行『深い河』もキリスト教と日本人をテーマにした代表作と見なされており、映画化された。60年代以降「狐狸庵山人」(こりあんさんじん)を名乗り、様々なエッセイを記した。数々の作品が欧米で翻訳され高い評価を受けており、存命中ノーベル文学賞候補だったこともよく知られている。

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