侍 (新潮文庫)

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レビュー : 98
  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101123257

感想・レビュー・書評

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    信仰とは何か?、ということすら、生きる上で全く考えることのない、無意味なくらいの、そんな侍の社会。
    その社会で大切なのは、ただただ忠誠であり信仰とは似て非なるモノ。

    その時代の人達が。
    何故ヨーロッパに行くのか?
    キリスト教が介在したのは何故?
    危険を冒す理由があったのか?

    という事は、史実でも、まさに本文中でも、たっぷり書かれている。

    個人的に唸ったのは。

    商売の利と信仰を天秤に計る人の心理
    忠誠を示す為に信仰を選ぶ心のさざ波
    司祭同士の出世争いの場にされた日本
    功名心を信仰心で巧みに隠してく醜さ
    棄教を前提に自分自身を欺くその描写

    日本に戻った侍の心の描写が、その答えだった。
    「侍は自分が見たのは、あまたの土地、あまたの国、あまたの町ではなく、結局は人間のどうにもならぬ宿業だと思った」

    信仰と不信。
    二つのテーマが、ぐるぐると廻り、巡り、描かれる一冊でした。

    信仰があることがイイワルイではない。
    自分がどうあればいいのか?とか、信じないといけないとか、奇跡なんて科学的じゃない、理論的じゃないとか、どうでもいい。

    信仰することで救われる人がいるんだ。
    ただただ、そのコトだけを知り認める心を持つだけでいいんだと、そんな読後の感想でした。

  • 「沈黙」のテーマ「神の存在の有無」に対し「侍」は「宗教とは何か」という問いかけの小説だと思います。

    キリスト教のお話でありながら、日本の宗教観についても描かれていて、「なぜキリスト教は日本に向かないのか」をヴァレンテ神父が語る場面は、深く頷きながら読みました。ヴァレンテ神父の語った日本の宗教観や社会構造は現代日本に脈々と受け継がれているものがあるのを感じました。

    また、江戸時代の日本社会の陰湿な部分を、政府上層部や役人の描き方や、暗く冷たい建物の描写で表してるところがすごく印象に残りました。

    でも正直読みながらずっと思ってたのは「ベラスコのせいでこんな事に…!!」ということです。こいつさえいなければ…!!そして、やはり宗教の押し付けは古今東西良いことがない。
    ただし、最終的には実はベラスコは自らの信仰と布教において勝利しているところがまたこの小説のすごいところです。
    「侍」は最期、何を、誰を思ったのでしょうか…
    残酷な現実と絶望の向こう側に真理が少しだけ見えるような描き方が素晴らしかったです。

    神とは、宗教とは、日本とは…考えさせられる一冊です。

  • 沈黙とは異なるキリスト教歴史小説。
    政治の闇に弄ばれたと書くには足りない、男の生きざま。
    日本人の不気味さと誇りとを外国人の目を通し語らせているのが秀逸で、著者の目線の低さを感じる。

  • 運命を受け入れること。「侍」と宣教師ベラスコ。立場の違う二人の人生が重なり合う。

  • 201902

  • 支倉使節団として、勤めを果たすために海外へ長い旅路を経て行くが、日本に帰国したら基督教を信仰しているとして処刑されてしまう。なんとも不条理な世の中であったのだろうか?

  • 久々に読み応えのある小説に出会えた。自分の力ではどうにもならぬ運命に流されていく切ない物語。「転ばない」美学

  • 「侍」は、実在した仙台藩の支倉六衛門常長をモデルとした史実に基づく小説であり、遠藤夫人が夫遠藤作周作の著作中で最も好きな作品として挙げている。

    キリスト教に帰依したことを理由に処刑されることとなった「侍」に従者が伝える「ここからは……あの方が、お仕えなされます」という台詞について、遠藤は「この一行のためにこの小説を書いた」と後に語っている。

    「あまりにも多くのものを見すぎたために、見なかったのと同じなのだろうか」

    「日本人たちはこの海を日本を守る水の要塞にして、自分たちは土の人間として生きてきたのだ。日本人たちはこの世のはかなさを楽しみ享受する能力もあわせ持っている」

  • この本を教えてくれた日本史の先生のことを思い出してしまってなかなか読み返せない、悲しくない意味で

  • 人生賢く強かに立ち回って生きた方が得だと思った。
    なぜ神を信じられるのか今まで疑問だったが、遠藤周作が書くキリスト教ならば信じたくなる人の気持ちも分かる気がする。
    しかしやはりキリスト教を受け入れ難く思う。自分は遠藤周作が指摘する日本人像そのものなのだろうか。必要とされていない場所に、キリスト教を布教しようとするのは傲慢だと思う。

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著者プロフィール

遠藤 周作(えんどう しゅうさく)
1923年3月27日 - 1996年9月29日
東京生まれ。父親の仕事で、幼少時代を満洲で過ごす。帰国後にカトリックの洗礼を受けた。1941年上智大学予科に入学したが、中退。慶應義塾大学文学部仏文科入学・卒業後、カトリック文学を学ぶためにフランスへの留学。帰国後の1954年『アデンまで』を発表し小説デビュー。1955年『白い人』で芥川賞を受賞し「第三の新人」として脚光を浴びた。
1958年『海と毒薬』で第5回新潮社文学賞及び第12回毎日出版文化賞、1966年『沈黙』で第2回谷崎潤一郎賞、1979年『キリストの誕生』で第30回読売文学賞評論・伝記賞、1980年『侍』で第33回野間文芸賞などそれぞれ受賞。1995年に文化勲章を受章している。
上記受賞作のほか、1993年刊行『深い河』もキリスト教と日本人をテーマにした代表作と見なされており、映画化された。60年代以降「狐狸庵山人」(こりあんさんじん)を名乗り、様々なエッセイを記した。数々の作品が欧米で翻訳され高い評価を受けており、存命中ノーベル文学賞候補だったこともよく知られている。

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