満潮の時刻 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 328
レビュー : 34
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101123370

感想・レビュー・書評

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  • 小説のところどころに「沈黙」の一場面を思い出させる描写があって、遠藤作品そして遠藤周作さんのつながりを感じました。そのほかの作品にも流れる「人間をありのままに受け入れる」ものについての遠藤さんの強い確信を感じるよい小説でした。

  • 林檎は生の匂い

  •  40代の働き盛りの男性が、結核により療養生活を送ることになることから物語は始まり、淡々とした療養生活と、その心境の機微が描かれている。
     今の医療技術からは考えられない治療法、入院期間だが、当時多くの人々が命を落とした結核という病気の恐ろしさを垣間見た気がした。
     その苦痛、死の淵に立たされたときの模写が妙にリアルなのは、作者自身結核を患っていたからなんですね。
     病院のなんとも言えないあの重い空気感も、読んでいるだけで気が滅入るよう。

     ケムリハナゼ、ノボルノカ。
     わたしは今まで大きな病気も事故もしたことがない。
     本当の苦痛、不幸、孤独感を味わったとき、何を考えるのだろう。誰か、そばで手を握ってくれる人間がいてくれたらいいなあ。

  • 病院独特の希望とは遠い場所にある暗い雰囲気が重たかったです。そこにいる人たちの日常なので陰鬱な感じではないですが、やっぱり異質ではあるかなと思います。
    あたしも病院なんて歯医者くらいしか縁がないので、想像するだけで恐怖の場所です。医学のことはよく分からないですが今はきっと手術するのに骨を切ったりしないですよね……「海と毒薬」でも出てきたシーンですが、怖い以外のなんでもない。物語よりその医療的な部分の方が印象的でした。
    どことなく中途半端な感じがしたのは、明石の長崎旅行のせいじゃないかと思います。
    遠藤作品と長崎は切っても切れない関係ですが、この作品に限ってはなんだか唐突なような気がします。奥さんと行くかと思ったら明石一人だったし。
    なんとなく尻すぼみな感じがしてしまいました。

  • 生を見つめる眼、沈黙の声。著者の訴えたいことが、じわりと伝わってくる。生活と人生は違う。なので日常から離れた入院生活で実感できたのだろう。14.1.8

  • 『沈黙』と同時に執筆されながら、未完のまま作者の死後出版された作品です。未完成であるだけに、修正されていない作者のダイレクトな思いが伝わってきます。

  • 初めての遠藤周作

  • 初めて手にとった遠藤周作の本。
    包み込むような優しさに溢れていました。

  • 結核のため入院する中年男性のお話。

    作者自身の体験もあってか、かなりリアルな描写に引き込まれます。
    ほんとうに何でもない景色が突然心に飛び込んで来る様子、手術に臨む気持ち、同室の人たちとの交流、痛み、苦しみ、生や死について深く考える姿など、どのエピソードも、手触りさえ伝わって来るように克明です。

    同室の人の思い出話などもそうですが、実際自分が体験してみないと気付かないこと、わからない気持ちがあるのだと、改めて感じる作品でした。

  • 死の淵に立った男の人の話。
    人生万事が塞翁が馬っていうことばが常に頭から離れなかった。
    悪いことをすればどこかでしっぺ返しが来る。
    いいことをすればどこかで返ってくる。
    戦争から逃れたものは・・・という感じで。

    生きるか死ぬかの瀬戸際みたいなぎりぎりの状態ではなくて、水が地面にしみこんでいくようにじわじわと病に蝕まれていく。
    ひとつひとつの行動の意味を考えて、どうあるべきかを考えずにはいられない作品。

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著者プロフィール

遠藤 周作(えんどう しゅうさく)
1923年3月27日 - 1996年9月29日
東京生まれ。父親の仕事で、幼少時代を満洲で過ごす。帰国後にカトリックの洗礼を受けた。1941年上智大学予科に入学したが、中退。慶應義塾大学文学部仏文科入学・卒業後、カトリック文学を学ぶためにフランスへの留学。帰国後の1954年『アデンまで』を発表し小説デビュー。1955年『白い人』で芥川賞を受賞し「第三の新人」として脚光を浴びた。
1958年『海と毒薬』で第5回新潮社文学賞及び第12回毎日出版文化賞、1966年『沈黙』で第2回谷崎潤一郎賞、1979年『キリストの誕生』で第30回読売文学賞評論・伝記賞、1980年『侍』で第33回野間文芸賞などそれぞれ受賞。1995年に文化勲章を受章している。
上記受賞作のほか、1993年刊行『深い河』もキリスト教と日本人をテーマにした代表作と見なされており、映画化された。60年代以降「狐狸庵山人」(こりあんさんじん)を名乗り、様々なエッセイを記した。数々の作品が欧米で翻訳され高い評価を受けており、存命中ノーベル文学賞候補だったこともよく知られている。

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