人生の踏絵 (新潮文庫)

  • 新潮社 (2019年7月26日発売)
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本 ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784101123394

作品紹介・あらすじ

もっと、人生を強く抱きしめなさい──。私たち一人ひとりが、それぞれの〈踏絵〉を持って生きている。キリスト教禁教の時代に踏絵に足をかけ、誰に語られることもなく歴史の中へ葬り去られた弱き人々に声を与え、その存在を甦らせた不朽の名作『沈黙』の創作秘話をはじめ、海外小説から読み解く文学と宗教、愛と憐れみ、そして人生の機微と奥深さを縦横に語った、時代を超える名講演録。

感想・レビュー・書評

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  • 本書は遠藤周作さんの紀伊國屋で行われた講演録。この本を読んでいると遠藤周作さんのイメージが変わり、また本の読み方にも変化が生まれました。そして遠藤周作さんの「沈黙」を再読したくなり、他の作品も読んでいきたくなりました!

    【遠藤さんのイメージ】
    今月「沈黙」と「海と毒薬」を読んで、なんでもっと早く読まなかったんだろうと思いながら遠藤周作さんにハマったなかで本書を手に取りました。本書を読むまでは遠藤周作さんをとても真面目で厳粛な人と思ってたのですが、本書を読むととてもフランクで愉快なおじさんじゃないかと思ってビックリしました(笑)
    この印象は自分のなかにある老牧師のイメージとも重なってなんだか不思議な気持ちにもなりました。

    【読書の変化】
    講演のなかで遠藤さんが海外文学作品をテキストとして用いていて、そこに潜むキリスト教的な要素を紹介しているのですがとてもタメになりました!
    海外文学をちょうど読んでいて、遠藤さんの視点を借りながら読むとこの情景はキリスト教のこういう逸話をベースにしてるのかとか、ムムッと思ったところをネットで調べるとキリスト教関連の要素が見つかって本をより深く読むことができて楽しくなりました。

    【再読意欲再燃】
    本書のなかで、「沈黙」の主題のひとつとして『弱虫が強虫と同じように、人生を生きる意味があるのなら、それはどういうことか』というのがあると遠藤さんは仰っています。これを読んで自分の沈黙の感想に持っていた違和感の正体に気付き、やっぱり自分は弱虫なんだなと思いました。「沈黙」の読書メモのほとんどがキチジローの弱さについて書いていて、それに共感すると仕切りに書いていました。それを感想にしようとしたとき、他の感想や書評で触れられてるところも盛り込まなきゃと自分のなかでなってしまって結局は乱雑な感想になってしまいました。
    これが心に引っ掛って自分はダメなやつだなと凹んでいたのですが、本書全体を通して人の弱さを愛してくれている遠藤さんを感じてまた読んで感想を書きたいと思いました。
    なんかキチジローみたいだな自分と思わず感想を書きながらニヤニヤしてしまう笑


    遠藤さんの人柄に癒やされ、さらに遠藤さんの作品を読んでいきたいと思った読後感でした。

    【お気に入りフレーズ】
    p16
    われわれ小説家は、みなさんと同じように人生がわからないでいて、人生に対して結論を出すことができないから、手探りするようにして小説を書いていっているのです。

  • 遠藤周作の文学を今まで読んでこなかったが、読みたくなった。

    • やまさん
      おはようございます
      やま
      おはようございます
      やま
      2019/11/10
    • やまさん
      おはようございます
      やま
      おはようございます
      やま
      2019/11/10
  •  遠藤周作の書いた小説がより興味深く読めるようになりそうである。それと海外のキリスト教作家の本を紹介してくれるので、読書案内としてもオススメ

  • 面白い。面白すぎるが、それは余りにも自分が小説を読めておらず、理解を言語化できていないことを意味する。読み方、頭の整理の仕方を変えなきゃいけないかもなあ。

    もともと弱い人間だったイエスの弟子たちが、イエスの死後、一転して迫害されながらも教えを広め続けるほど強くなれたのはなぜか、というところに着目できるのが凄い。

    ーーー以下引用ーーー
    そして『沈黙』は、〈迫害があっても信念を決して捨てない〉という強虫の視点ではなくて、私のような弱虫の視点で 書こうと決めました。 弱虫が強虫と同じように、人生を生きる意味があるのなら、それはどういうことか――。これが『沈黙』の主題の一つでした。p185

    私にとって聖書のいちばん面白いポイントは、こうした弱虫の弟子たちがまた集まってきて、自分が裏切ったイエスという人のことを喋って、教えを広め、結局は迫害されて死んでいく、というところなのです。つまり、弱虫が強虫になっていった。なぜそうなれたのか?そこが気になったので、私は『イエスの生涯』と『キリストの誕生』を書いたんです。p187

  • 遠藤周作の講演集です。
    『沈黙』がどのように出来上がったかという創作話や、外国文学におけるキリスト教といったテーマで、キリスト教文学についてユーモアを交えて語られています。

    遠藤周作は小説しか知らなかったので、こんなに茶目っ気のある話し方をする人物だとは思いませんでした。
    おかげで、キリスト教にも外国文学にも疎い自分でもサクサク読めました。

    講演で紹介されている作品を読み解く以外にも、キリスト教を下敷とする西洋文化を考えるガイドにもなります。
    信仰というものにピンとこない自分でも、はっとする様な一文がいくつもあり、自分の人生にとっての踏絵とは?美しくないものこそを愛するとは?ーー色々な事を考えるきっかけとなる本でした。

  • ふむ

  • [2刷]令和3年1月31日

  • 冗談をまじえながら外国文学について説明した講演会録だったので、すらすら読み進められた

    遠藤周作の作品は『沈黙』しか読んだことがなかったが、その『沈黙』執筆の裏話や、講演会のメインテーマである「外国文学の中のキリスト教」について興味深い話、宗教に対する遠藤氏の考察がいくつも入っていた

    次から本を読む時に使える新しい視点を授けてくれる一冊

  • 遠藤周作さん!『沈黙』しか読んでなかったけど、お話も上手くて魅力ある面白い人だったんだなあと。

    海外小説のキリスト教的解釈や遠藤さん自身の執筆エピなど誰でも読める良い本でした。

    特に聖書に対する解釈は著者の作品を読む上で参考になったし、手引書としてまた活用したい!!

  • 遠藤周作氏の講演の書き起こし。

    文字になると、確かに講演の雰囲気までは掴むことが出来ないが、彼が自分の小説を通して言わんとしていることよりも、この講演の方が、よりはっきりと表現出来ているのではないかと思う。

    「深い河」を書く以前から、「テレーズ・デスケルウ」や「事件の核心」を作品に取り上げるつもりだったのだなぁ〜などと、執筆に当たっての思考についても触れる事が出来る。




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著者プロフィール

1923年東京に生まれる。母・郁は音楽家。12歳でカトリックの洗礼を受ける。慶應義塾大学仏文科卒。50~53年戦後最初のフランスへの留学生となる。55年「白い人」で芥川賞を、58年『海と毒薬』で毎日出版文化賞を、66年『沈黙』で谷崎潤一郎賞受賞。『沈黙』は、海外翻訳も多数。79年『キリストの誕生』で読売文学賞を、80年『侍』で野間文芸賞を受賞。著書多数。


「2016年 『『沈黙』をめぐる短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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