個人的な体験 (新潮文庫 お-9-10 新潮文庫)

  • 新潮社 (1981年2月27日発売)
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本 ・本 (336ページ) / ISBN・EAN: 9784101126104

感想・レビュー・書評

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  • 素晴らしかった。
    読み終わった後のなんともいえない余韻。これだから読書はやめられない。
    作者によるとこれは青春小説ということだが、なるほど、テーマは大変なことだが、青年が悩み、葛藤し、迷い、経験し、蘇生し、決断する。
    まさにこれは青春小説か。
    主人公をバードと一貫して、表現したり、独特の病み付きになる表現の文体は、驚愕する。
    一気に読んでしまった。
    後半急に心変わりする感じて急転直下するが、バードは最初からこうしたかったんじゃないか。
    ラストのアスタリスク以降の文はいらないんじゃないかと、いろいろ批判があるようだが、自分はいいと思う。

  • 読書会課題図書
    今更気づいた
    かの有名な著者の作品を読んでいなかったことに
    読書会に感謝

    表現はすごいと思う
    でも、小説だと理解していても共感できないものはどうしようもない

    ラストはストンと落ち着いたが、むしろこれがない方がいいとも言われたとか
    それでは救いがないのではないか

    すごい作品群を残して逝かれた大江健三郎氏を追悼する

    ≪ 自らの 運命受けた 魂よ ≫

  • 結末は意外ではあったが良かった。

  • 鳥(ばーど)の成長(といっていいのだろうか)の記録みたいな小説。登場人物である鳥は大江自身だと思われるが、あとがきによると小説内で共通しているのは障害をもった赤ん坊を持ったという点のみだそうだ。正直なところ初期作品のような緊張感のあるじめっとした感じの筆致が重苦しい。
    なにより不憫なのは火見子じゃないかと思う。p.291では火見子の後ろ姿を見て最良の教育を受けたがそれを生かせず子供を持ちそうにない彼女に憐憫を感じたとあるが、そう思ってもこの時点で鳥は彼女を利用し自分のために行動していた。最終的には鳥は父親として子供の人生を請け負うと決めたが、その時の彼女の心境は…。彼女の救いはどこにあるだろうかと考えてしまった。
    自選短編の中期のような作風のほうが個人的には好みです。作家自身の転換期となったこの作品(そして障害児をもつ子供を授かったということも)は読んでおきたい、そういう思いでこの小説を読んだ。

  • 産まれてきた息子が異常を持っているという未だかつて経験したことのない現実に27歳の「大人」が直面するとどうなるか?という内容の小説。

    一言で言うとずっと面白い。

    ほんの数日間の出来事が描かれているにも関わらず、一才が緊迫したシーンで埋め尽くされている、恐ろしい長編。

    予想できない展開、ユーモア、メタファー、回想シーンへの導入、魅力溢れるキャラ、アフォリズム、官能的な文体。

    挙げたら切りが無いが、どれを取ってもピカイチ。
    無限に味わい深い。

  • いやー難しかったけど引き込まれた。比喩表現の多彩さ、引き出しの多さが半端じゃない。
    重厚感のある文章。
    よく読み切れた。

    病院の人々が官僚的という説明があったが、本当に酷く冷たい印象だった。意地悪というか。
    特異な形で生まれた赤子を馬鹿にしている風で嫌悪感が生まれた。

    鳥(バード)の現実逃避が極端で、かつ堕落しすぎていて、ずっとモヤモヤしていた。

    ただ、自分の自由への意志と病気のまま生まれてくる赤子というジレンマに酷く苦しんだのだろうと思う。


  • 読書経験を揺るがした小説を挙げろと言われたら、真っ先に大江健三郎『個人的な体験』と村上春樹『海辺のカフカ』の名を答えると思う
    村上春樹は大江健三郎から影響受けてるのだろうか?書き方や作品の雰囲気が似ていると思ったら、大江健三郎自身も自分のことを「20世紀の作家」、村上春樹のことを「21世紀の作家」と称して交流があったみたい

  • 大江健三郎の小説を読むのは初めてなのだけど、想像してたのと随分 違っていた。とても独特で 比喩が多く なんとも言えない不思議な世界観。読むのにすごく時間がかかった。世界観が独特すぎて。悪くはないのだけども、大江健三郎ってこんな感じなんや…ということが知れてよかった。

  • エゴイズム、不安、恥ずかしさ、孤独と祈り

  • 大江健三郎の2冊目。昭和39年8月に出版されたこの小説の20代後半の主人公と大江とは合い重なる設定。大江の子供「光」も脳瘤によって知的障害者として生きている。新潮文庫の巻末には大江が昭和56年1月に書いた一文が置かれている。その中で小説の終幕への三島由紀夫などの批判に対して、「経験による鳥(バード)の変化・成長を表現するという、最初の構想をまもりたかった」と記している。20代の大江が突っ伏して動けなくなるほど困惑していた子供を抱えた父親としての姿は、大江自身の言葉のように「青春」そのものを切り取っていると感じた。これから読み進めていこうと思っている大江の作品が楽しみになってきた。

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著者プロフィール

大江健三郎(おおえけんざぶろう)
1935年1月、愛媛県喜多郡内子町(旧大瀬村)に生まれる。東京大学フランス文学科在学中の1957年に「奇妙な仕事」で東大五月祭賞を受賞する。さらに在学中の58年、当時最年少の23歳で「飼育」にて芥川賞、64年『個人的な体験』で新潮文学賞、67年『万延元年のフットボール』で谷崎賞、73年『洪水はわが魂におよび』で野間文芸賞、83年『「雨の木」(レイン・ツリー)を聴く女たち』で読売文学賞、『新しい人よ眼ざめよ』で大佛賞、84年「河馬に噛まれる」で川端賞、90年『人生の親戚』で伊藤整文学賞をそれぞれ受賞。94年には、「詩的な力によって想像的な世界を創りだした。そこでは人生と神話が渾然一体となり、現代の人間の窮状を描いて読者の心をかき乱すような情景が形作られている」という理由でノーベル文学賞を受賞した。

「2019年 『大江健三郎全小説 第13巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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