パニック・裸の王様 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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レビュー : 94
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101128016

感想・レビュー・書評

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  • 開高健はメジャーであるが誰もが読む作品ではない、少なくとも高校や中学の教科書には載らない。学校が求める(従順さを基礎とした)道徳とは折り合いがつかないし、多くの作品が(教育委員会の基準では)大人向けに書かれているのは間違いない。

    ある種の暑苦しさは否めないが、一気に作品に引きずり込む高橋源一郎や内田樹の言うところのドライブ力から言えば(彼らの絶賛する)村上春樹のそれとはまったく比較にならない。
    私が高校の教師なら、国語の授業でつまんなそうにしているやつに読ませる、そのうち三人に一人は「悪くねぇじゃん」と思うでしょう。開高健が憧れていたであろうヘミングウェイの英語は良いお手本とされるがそれとは少し違う。ヘミングウェイは優等生の課題図書としてアメリカの高校生が読まされるが、開高健はちょっと意地を張ってグデンとしている生徒にそれとなく読むように仕向けることはあっても、ハイ皆さんこれを読んできてくださいということはない。
    ただ、受験まっしぐらの高校3年生が開高健のパンチをどう受け止めるのかちょっと興味はある。
    (私は高校生のときに開高健を読んでいたと思うが、受験まっしぐらでもなければ、国語の授業で詰まらなさそうにしていたこともなかったと思う。教科書の間に文庫本はさんで読んでたけど。)

  • パニック・裸の王様。開高健先生の著書。優れた小説、優れた作品は時が経っても決して色褪せないことが分かる不朽の名作です。社会の不条理や理不尽な権力者に対する反抗心を感じさせる内容で、心が揺さぶられます。

  • 猫作家ときいて買ってみたらねずみだった。
    スカッとした文体でひじょーに読みやすくて、話も分かりやすくて面白かった。
    あんな簡潔な文体やのに、「裸の王様」に出てくる子どもたちがいきいきと目の前で動き回る。びっくりしたわ可愛くて。いい先生だね。

    「巨人と玩具」読むとキャラメル食べたくなるよ。

  • 開高健の出世作であり初期の4作を含む短篇集。すべて科学的、社会的、心理的および歴史的にしっかり調べられて、その上面白い。ジャンルとしては大江健三郎のような純文学なのだろうけれども、全く異なるのが売りが「反体制」ではないこと。すべての作品で、一般職員であり普通の会社員であり一兵卒であったりと、労働組合レベルの一人でしか無いのだけど、単に反発するだけでなくて「うまくやる」を実践することでの辛さというものがにじみ出ている。同僚の山口瞳よりも、会社員や公務員を描かせるとうまいのではないか。とにかく、収録作すべてがズシンと重い。ある種サラリーマンの悲哀作品ばかりでありつつ、終わりの数行で、これはひょっとして純文学なのかなあと思わせられるのも事実。名作。

  • 新潮文庫版『パニック・裸の王様』は、短編4本なんだけど
    角川文庫版の『裸の王様・流亡記』と1本しか違いがない。
    新潮版は『巨人と玩具』が収録、
    角川版はそのかわりに『なまけもの』が収録されてます。

    結論、受けた印象から先に書きますと
    ●昔の押井守に近い感じ
    ●開高さんの比喩表現は独特
    ●特に『パニック』と『巨人と玩具』は「戦争」の話。
    戦争、戦士の話。
    ふつうの「戦争」ではなく、平時・・・平和な社会だけど
    結局、経済で戦争してるようなもんで。
    例えば過労死、うつ病で自殺・・・そんなのは戦死です。
    後年、開高さんがベトナムの戦地に赴いた理由が
    なんとなくわかる気がする。
    生と死が隣り合わせにある状況で、
    生を感じたかったのではないかと。
    ●そう思わされるのは、小説のテーマがどれも近いから。
    「構造・システマティックなもの・組織・科学・人間社会・歯車」
    それら人工物と「野生・フィジカルさ・自然」の葛藤。
    旅や釣り好きだけど、野生や自然へのあこがれ。
    「マッチョな科学者」の文章だと思う。
    ●大学時代、講義の課題で
    色々な教育関係の新書を読まされましたが、
    そんなものを読むよりもよっぽどこの本の方が素晴らしい。
    特に『裸の王様』。
    お子さんがいる人にも当然お薦め。

    以下は短編それぞれの感想。

    ●『パニック』
    何がパニックなのか?と思っていたら
    モンスターパニックものだった!!!!!
    1954年『ゴジラ』
    1957年『パニック』
    1963年『鳥』
    1975年『ジョーズ』・・・その系譜。
    非常に科学的な小説。
    そして公務員の組織内での孤独な頭脳戦。
    戦争の話。

    ●『巨人と玩具』
    こちらの方がより戦争の話。
    企業戦士。敗ければ戦死。
    巨人=サムソン等々企業。
    『サムソンとデリラ』のサムソン?
    サルトルの引用が出てくるのはこの話。

    ●『裸の王様』
    やはり主人公は頭脳戦で挑む。
    これはほんとに、子どもがいる人や
    教育関係で勤めてたりする人は読んで欲しい。
    そして芸術とは?という話。
    そういうのは大好き。

    ●『流亡記』
    オーウェルは『1984年』で、現代の延長線上である
    近未来のディストピアを描いた。
    開高は逆に、過去のディストピアを現代風に描いた。
    どちらもソ連や中国等共産圏国家が背景にあり、寓意をもつ。
    元ネタはカフカの『万里の長城が築かれたとき』。


    開高さんの表現について。

    クセが強い。ここは読みにくさがあるけど、
    短編である程度共通してるので完全に個性。
    のちの『ベトナム戦記』は読みやすかった。
    だからエッセイ集だともっと読みやすいんじゃないかと。
    この時、開高さんは27~9歳ぐらいなので
    まだ若くてギラギラしている。エネルギッシュ。

    「マッチョな科学者」と書いたけど、
    マッチョ・・・筋肉・野生・肉体的な面を
    科学者の目・頭脳でどこか冷徹に描いてるところがある。

  • ストーリーではなく、文章の巧みさのみで鳥肌が立ったのは、小説では初めてかもしれない。
    あまりにも生々しく鮮明な文章に、ページをめくるたびに様々な感情が沸き上がり、体力の大半を削り取られた。
    圧倒的です。
    読まないという選択をしないことをお勧めします。

  • 怒濤の表現力!土俵際の火事場の馬鹿力!とにかくパワフル!

  • こんなにも五感に訴えかけてくる作品は初めてでした。社会とは何か強く考えてしまいます。

  • 「流亡記」が特に好きです。五感に訴えかけてくる独特の比喩表現は絶品で、開高の筆力の高さに思わずうなってしまいます。

  • 開講の初期作品は熱い
    4.6点

著者プロフィール

開高 健(かいこう たけし、かいこう けん)
1930年12月30日 - 1989年12月9日
大阪府、天王寺区生まれの小説家。大阪市立大学法文学部法学科在学中、同人誌活動を始める。洋書輸入商、壽屋(現・サントリー)宣伝部を経て、作家活動を開始。
1958年、『裸の王様』で芥川賞、1968年『輝ける闇』で毎日出版文化賞、1979年『玉、砕ける』で川端康成文学賞、1981年菊池寛賞、1987年『耳の物語』で日本文学大賞をそれぞれ受賞。ほか、主な著書に『日本三文オペラ』『夏の闇』『私の釣魚大全』『人とこの世界』などがある。

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