地球はグラスのふちを回る (新潮文庫)

  • 新潮社
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  • 本 ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101128078

感想・レビュー・書評

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  • ユーモアたっぷりの語り口で読みながらニンマリしてしまう。
    下品、不謹慎は御愛嬌。
    かと思えば繊細な表現に日本人としての本能的な部分を刺激される。
    正直な漢の感性や味覚が存分に文章化されていて感嘆する。

    ノンフィクションとしての代表作『オーパ!』が非常に面白く、続いて小説の代表作『輝ける闇』を読んでウーンとなった。そしてこのエッセイにいたり確信した。
    開高健はノンフィクションエッセイが刺さる。個人的に。

    『地球はグラスのふちを回る』の刊行は1981年だが、書かれたのは1970年代後半とのこと。

    作家の角田光代さんが開高健のエッセイを激賞されているのを見て、お二方のエッセイを同時期に読んだ。

    ちなみにこの本は古書で手にしたのだが、前の持ち主の方がメモ書き、線引きされていて、それもまた趣があって良かった。

  • 10年越しに読了。なぜか中途でやめて放り出してたエッセイ。10年ぶりに詠むの再開。酒からはじまり魚へと、世界をまたにかけてかたり、その国の風土や人も語るといった体で。舞台はだいたい50年ぐらい前で。エスカルゴ食べて、「バターとニンニクとパセリのみじん切りの香りが腸をねじる」(p.41)なんて表現したり、ヴェルレーヌの詩を一節口ずさめば、共産圏の同行者に「頽廃だ」と吐き捨てられたり、開高健と大江健三郎が吐き出したほど不味いと思ったブランデーを、最高級品です!と野間宏に持っていったら、だまってのんで「もう一杯おくれ」と言われたシーンとかは印象に。あとは◆「戦い合う当事者は、人間的にはなれない。真に人間的なのは、第三者の傍観者である」(ゲーテ)p.234◆旅でも同じだ、というのが私の考えだな。何でも記憶にとどめようと気ばって見て歩くと、物ごとの表面ばかり見ることになる。本質が見抜けなくなる(略)自然体に構えて、それ触覚にひびいてきたもの、耳と目と頭に残ったもの、それがきみにっとての物ごとの本質だということになるp.234-235◆「漂えど、沈まず」(略)男の本質、旅の本質は、まさにこれなのだp.240◆といったあたりが良かったかな。

  • 毎晩少しずつ、就寝前の寝酒代わりにとちびちび読み進めました。酒と料理と釣りと女を楽しみながら海外諸国を歩き回る著者の語り口はさっぱりと明朗、それでいて描写が生き生きとしており、特に酒と料理のパートが魅力的。読みながらその国の空気ごと味わうような心持ちがして、気軽に海外へ行けなくなったご時世だからこそ余計に魅力的に見える。知らない国で酒を飲みたいなあ。タイトルも良いですね。

  • 雑誌や新聞の記事として発表されたものを集めた短編集。内容に重複あり。
    趣味の話をするおっさんの好奇心とこだわりと下世話さ。でも、繊細さも所々あるような気がする。
    表記を変えて同じ言葉を二度繰り返すなど、適宜に溜めのある読み口が良い。

    I章は酒、II章は食い物と煙草、III章は釣り、IV章は旅の話。釣りにあまり興味を持てないので、III章は総じて退屈に感じたが、一方で旅行好きな私にとって、IV章に入ると旅情のこもった小編がたまらない味わいをもって差し向けられてきた。これよ、これを待っていた。

  • 作家のエッセイって割と好きで、それは自分の知らない美味しいものを知っていて、かつその美味しいものをより美味しそうに見せてくれるからなんだけど、開高健が魚介類好きだったおかげで大層よかった。越前蟹、鯖の串焼き、ソフトシェルクラブ、アメリカの牡蠣と蛤。晩酌しながら読むと尚のこと良い。酒の肴になる。

    あとココアのバンホーテンって当て字が蛮瘋癲なんだな。知らなかった。

  • 酒の話はこの人がするのが一番面白い。

    最高だ。さすがである。さすが。

  • GWの旅のお供に選んだ一冊。こんなにぴったりな一冊があっただろうか!まずタイトルが素敵すぎる。旅してる最中からまた旅に出たくなっちゃう。各地で味わうお酒に食べ物。釣り、そしてちょっぴりエッチな話もあるのだけど、不思議といやらしくなくて、あっけらかんとしている。東欧に行きたくなったなぁ。そして、ウィスキーの飲める大人になりたいと思った。(笑)旅もどんどんお手軽になっちゃって、旅慣れればなれるだけ、いつどこに行っても、本当の驚きに出会えることは少なくなっている。こういう生き生きとした感性で旅を捉えられたら。

  • 福井の越前ガニについて書かれているので読んでいる。文学の分野で福井というのは、どう捕らえられているのか?

  • 食べ物を求めた旅したくなる!

  • 御叱呼までがいい匂いを発散するという、ズブロヴカ。
    思わず買って、飲みながら読んだ。

    その他にも、アブサン、シュタイン・ヘーガー、茅台酒、プイイ・フュイッセ…古今東西の銘酒が飲みたくなる。

    涎が出るほど旨そうな料理や酒、そして旅先での生々しい匂いを感じる風景描写、読みながら、生理的に、本能的に惹き付けられてしまうエッセイの数々。

    たまらん。

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著者プロフィール

開高 健(かいこう・たけし):1930年、大阪生まれ。大阪市立大学を卒業後、壽屋宣伝部(現サントリー)にてコピーライターとして活躍。同時に創作を続け、57年『パニック』でデビュー。58年『裸の王様』で芥川賞、ベトナム戦争現地へ赴いた経験に基づく『輝ける闇』で68年に毎日出版文化賞、79年『玉、砕ける』で川端康成文学賞、81年に一連のルポルタージュ文学について菊池寛賞を受賞。ほか『日本三文オペラ』『ロビンソンの末裔』『オーパ!』『最後の晩餐』など、代表作・受賞歴多数。89年逝去。

「2024年 『新しい天体』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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