質屋の女房 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101130026

感想・レビュー・書評

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  • 2019年2月11日、「陰気な愉しみ」を読了。
    2019年2月13日、「悪い仲間」を読了。

    著者は、1920年4月18日生まれ。1953年に、「悪い仲間」・「陰気な愉しみ」で、芥川賞を受賞したとのこと。
    したがって、今回読了した作品は、著者が33歳頃に書かれたものになる。

    城北高等補習学校に通っていた時に、同い年の古山高麗雄ら浪人仲間と遊び歩いたようだ。
    城北高等補習学校は予備校で、城北予備校の前身のようである。その城北予備校だが、こちらは1987年に廃校になっているようだ。


    2019年年2月14日、「家族団欒図」を読了。

    251ページに、脊椎カリエスに病んでいた時期があったと書かれている。
    著者は実際に脊椎カリエスに罹患していたようだが、その脊椎カリエスを調べておく。

    「結核菌が血管を通じて脊椎に転移することで発症し、感染した部位に炎症が起こり、骨や椎間板が破壊されて膿(うみ)が発生する病気です。「結核性脊椎炎」とも呼ばれます。」

  • 追悼・安岡章太郎、ということで、今年亡くなられた「第三の新人」安岡章太郎の短編集を。1953年芥川賞受賞作もおさめられています。もうどれも、ほんとうにおもしろかった。戦後日本はこうであったのだな、という昭和感はもちろんあるのですが、今をもってしてもまったく古びていない。弱くて、ぐうたらで、どうしようもない個人の姿を描き、現実からいかに逃げ得るかを追求する。いつも追いつかれてしまうんですが、この短編集はそれでも悲壮感があまりないように思える。いや、最後は本当に恐ろしいんだけど、それでも基本的にユーモアでくるまれていて、追いつかれても追いつかれてもするりと逃げ出そうとするのだろうなあといった自由な空気が確かにある。「海辺の光景」もぜひ読みたい。戦後日本はこういう文学を生んでいたんだなあ、こういうひとがいてくれたんだなあ。ご冥福をお祈りします。

  • 初めての安岡章太郎

    短編集

    「悪い仲間」などの青年ものより、際立つのは「陰気な愉しみ」だ。

    傷痍軍人の悲しい愉しみ。
    楽しみではなく、愉しみ。
    人の目を憚りながら、生きながらえる中に愉しみをも見出せない儚さ。

    心の凹凸を顕微鏡で覗くかのように隆々たる山並に変えてみせる、良い作品。

  • 慶応大学在学中に結核を患い、戦後、脊椎カリエスを病みながら小説を書き始めた著者が、世間に対する劣弱意識に悩まされた経験をベースに綴った10編から成る短編集。 
    戦中、戦後を哀しく、無器用に生きた学生の自堕落で屈折した日常をユーモアも盛り込んで描く。
    標題作「質屋の女房」は、戦時中、外套を質屋に持って行った学生と質屋の女房との関係を甘酸っぱく余韻を含ませて描いたもので印象に残った。学徒出陣で召集令状が来たその学生にとって一度きりの秘め事が結果的にはなむけとなったのだった。
    「ガラスの靴」は猟銃店で夜番をしている「僕」が散弾を届けに行った米軍軍医の屋敷で出会った風変わりなメイド・悦子との間に生じた特別な時間が生々しく描かれている。
    この他、兵役で病気になり、月に一度生活費をもらいにいく男の屈折した感情、厳格な母親を怖れ、呪縛を感じながらも反発する男子学生や悪徳仲間と現実逃避に終始する学生たちの姿を描く作品が盛り込まれている。

  • 肥った女

    源氏名君太郎が面白すぎる。
    最後はちょっぴり切ない

    吉原のシーンは暗夜行路の影響受けてそう

  • 目次を見て、また読んで、魅力のあるものがほとんどなかった。本作の読書は淡々と作業をする感じであった。特に気に入った作品がなかった。文体は静謐かつ読みやすい。期待したほど、楽しめなかったのが残念だ。

  • 仲良しグループの力学を扱った数編が印象に残った。息苦しさから逃げたくて何人かでつるんでいたら、グループの意思になんとなく引っ張られてもっと息苦しくなってしまう話。そのうちどうしたって人は一人なんだってわかるんだけど、若いときは一人でいられない苦しさがありますね。

    今読むと若者あるあるなので、ああそうね、というくらいの感想になってしまうところがある。でも、運がいいと(悪いと?)ずっと集団(会社とか特定の価値観とか)とつるむ人生を歩むケースもある。最後に、「それはそれで楽しかった」と思えるのなら、それはそれでよいのかもしれない。わたしも、「人はしょせん一人」教の一員なのかもしれない。

    高校大学のうちに読めばもっと印象が深かったと思うので、若い読者の皆さん、もしそういうのに関心があったらお早めにどうぞ。

  • 20230526再読

  • 「ガラスの靴」は前読んだときから随分印象が変わった。以前は主人公の抱く恋愛感情に浮ついた心地よさみたいなものを強く感じたけれど、今度は僕と悦子の間にあるじめじめとした人間の匂いを一文一文から感じた。こんな文章あったっけと思うことが幾度もあった。

    「青葉しげれる」「相も変わらず」は、順太郎という主人公の登場する連作で、母との関係が描かれた話。大学生ごろの年齢設定だからか、「三四郎」「それから」っぽさを感じた。
    「相も変わらず」がこの作品集の中で一番好き。「悪い仲間」などにもあった、家族から逃れようとするも最後の最後に逃れられないことに気づくという主人公の姿にひどく共感を覚える。さりげない描写にとてつもない文章の力を感じた作品だった。

    「質屋の女房」も好き。

  • まぁ上手いんでしょうけど、長旅の中で読むには当方のリズムと合わなかった。それでも後半に収められている表題作はぐっと引き寄せる力がありまする。
    しかし吉行淳之介といい、このお方といい、今でいうところの風俗に題材を求めるところを見るに、昔も今も変わらんという陳腐な結論に辿り着いて良いものやら。

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著者プロフィール

安岡章太郎

一九二〇(大正九)年、高知市生まれ。慶應義塾大学在学中に入営、結核を患う。五三年「陰気な愉しみ」「悪い仲間」で芥川賞受賞。吉行淳之介、遠藤周作らとともに「第三の新人」と目された。六〇年『海辺の光景』で芸術選奨文部大臣賞・野間文芸賞、八二年『流離譚』で日本文学大賞、九一年「伯父の墓地」で川端康成文学賞を受賞。二〇一三(平成二十五)年没。

「2020年 『利根川・隅田川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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