幽霊―或る幼年と青春の物語 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 300
レビュー : 31
  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101131023

作品紹介・あらすじ

「人はなぜ追憶を語るのだろうか。どの民族にも神話があるように、どの個人にも心の神話があるものだ」昆虫採集に興ずる少年の心をふとよぎる幼い日に去った母親のイメージ、美しい少女に寄せる思慕…過去の希望と不安が、敗戦前後の高校生の胸に甦る。過去を見つめ、隠された幼児期の記憶を求めて深層意識の中に溯っていく。これは「心の神話」であり、魂のフィクションである。

感想・レビュー・書評

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  • 帚木蓬生のように、セピア色の印象が漂う追憶劇。

  • 幼い頃のことを、幼い心が感じた通りに、しかし独特の美しい文章で綴った小説かな、と思いつつ読んで、自分の幼い頃も記憶の蓋が開いたように思い出され、いい小説だな、好きだなと読み進めるうち、思い付くままどころか、かなり巧緻に構成された完成度の高い小説だということが分かり、圧倒された。
    トーマス⚫マンを読み返したくなった。

  • 美しい文体で綴られた、内省的文学作品なのだろうが…。

    時間がたっぷりあって、ゆっくり読むには悪くないと思うが、読書以外にもやらなきゃならない事が沢山あって忙しい時は、それらの時間を削ってまで読みたいとは思えず…。

  • 透き通る美しさの際立つ文章!

  • 再読。人はなぜ追憶を語るのだろうか。冒頭の一文から心が奮える。忘れられた幼年期の記憶がアルプス連峰の自然のざわめきと荘厳な沈黙の元に、ふと耳にする牧神の午後の旋律のなかに幽かに静かに甦る。耳を澄まして、肌に感じて、とぎ澄まされた精神の源に神話となって還元される。名著。

  • 冒頭の書き出しがすごく良かった。
    好きな小説のひとつになった。

  • (2002.12.28読了)(2002.03.17購入)
    或る幼年と青春の物語
    内容紹介 amazon
    大自然との交感の中に、激しくよみがえる幼時の記憶、母への慕情、少女への思慕――青年期のみずみずしい心情を綴った処女長編。

  • 3日で読了。神話や昆虫の下りは若干読みにくい。
    文章が情景的で美しい。幼き時の記憶は情景として朧げに浮かぶのだろう。

  • “ぼく”というある人間の心の中にある神話を語る、追憶の物語。彼の語る言葉は彼自身のものであって、決して読み手のものにはならない。繰り広げられるイメージも漂う匂いも手触りも、彼がありったけの言葉を以て伝えようとしているもの全て、似通っている所はあるとしても決して読み手の中の神話とは重なり得ない。けれど人が自分の記憶の奥底に沈む“何か”を追い求めようとするその衝動自体は、きっと誰しもが見覚えのある感情であるはずだ。大抵の人はその衝動を形として認識することはないし、その”何か”にたどり着く前に忘れ去ってしまう。しかし”ぼく”は手を緩めることなくその何かを追い求めついには手にするに至る。その全過程が、ここには執拗なまでに詳細に言語化されて刻まれている。
    人の心を過去の記憶へと突き動かす感情の形を初めて知ったと思えた。この世のものは、名前を見つけて初めて人の眼前に立ち現れる。
    個人の心の中の神話、それは決して過ぎ去った幸福の絵図などではない。それはただなぜか、その陰影のひとつひとつ、手触り、温度のようなもの全てをそのままどこかに刻印しておかなければと苦しい程に思い詰めずにはいられない、そういう言いようもない“何か”だ。人がその姿を捉えようともがく時、名前を付けることは出来ずとも、せめてその輪郭を何かに焼き付けようとして生まれる物語がこの世には多くある。そういうものを書く人、求める人の無意識の意識の流れを、この物語を通して初めて知ることができたと思えた。

  • 葉を一心に齧っていた蚕がふと首をもたげる

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