天井裏の子供たち (新潮文庫 き 4-14)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101131146

感想・レビュー・書評

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  • 第一話 今でも出版されているのかしら

  • ゆりこ

  • 『静謐』が好みです。余韻といい、空気感といい。悪魔の登場する物語は大好きですが、この作品に登場する悪魔は異色。意表を衝かれました。

  • こういうタイトルに弱いんでしょうか、ブックオフで即手に取った一冊。PlasticTreeの「サイコガーデン」という曲に「髪のない少女 天井の裏/汚れてる絵本から 素敵な言葉を選び出す」という歌詞があって、それを連想しながらレジで精算してもらいました。

    北氏の『幽霊』を少しだけ読んだ印象が強くて繊細な作風の人かと思ったんだけど、実際は上の想像のような話でも何でもなく、表題作は忍者部隊に憧れて天井裏に秘密基地を作る少年達の話。子供の頃に特有の、現実と空想が入り混じる様子を書いていて面白かったし的確だとは思ったけど、珍しいテーマではないかなと思って特に感慨もなく読み終える。ただいくつか読んだ印象では、北氏の書く少年少女は泥遊びをするだとかの自然の匂いがする感じではなく、どこか育ちがいいというか甘美なノスタルジアを感じるというか、主観的な例えで申し訳ないけど江戸川乱歩の世界に感じたのと近いものを感じる。

    好きなのは父親(知らなかった)である斎藤茂吉の死の前後についての「死」と、そっけない娘とカラコロム登山の事を書いた「白毛」で、どちらも私小説との事。最近は落ち着いたものを好むみたいで、描写の丁寧さや地に足がついた感じが自分の気分には丁度良かった。特に「死」が良かった。斎藤茂吉って父親としては随分厳しい人だったんだなあと驚いたけど、そういう描写が続く中にも北氏は人間に対するユーモラスな視点を常に忘れない人のように思えた。
    精神病院の院長が患者の治療のために映画撮影を提案する「もぐら」も、主人公のロクさんの人柄のおかしみが良いなあと思ったけど、これは病名を解説する部分が出てくるたびにどこかこちらの調子を狂わされた思いがした。まるで「説明しよう!」という声が聞えてきそうで、多少不自然。それがなければかなり好きなのにと惜しく思った。

著者プロフィール

北杜夫
一九二七(昭和二)年、東京生まれ。父は歌人・斎藤茂吉。五二年、東北大学医学部卒業。神経科専攻。医学博士。六〇年、『どくとるマンボウ航海記』が大ベストセラーとなりシリーズ化。同年『夜と霧の隅で』で第四三回芥川賞受賞。その他の著書に『幽霊』『楡家の人びと』『輝ける碧き空の下で』『さびしい王様』『青年茂吉』など多数。『北杜夫全集』全一五巻がある。二〇一一(平成二三)年没。

「2023年 『どくとるマンボウ航海記 増補新版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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