- 本 ・本 (432ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101131351
感想・レビュー・書評
-
第1部の下は、上で描写されていたような奴隷代わりのコーヒー園労働では日本移民の将来はないと考え、自分たちの土地を持つようになり、日本人集団地建設が進む話。平野運平が15年に有志を募って植民地建設を始めた。
前半はずっとマラリアの話…乗り越えたと思ったら植民地の金策…なんとか軌道に乗ってきたと思えば次は平野植民地の大バッタの大群…ちょうど第一次世界大戦の頃、ブラジルの森林を開拓して農業をして暮らし始めた日本人たちが苦労続きだったことが伺える。
平野運平の死はただただ辛い…
後半は移民たちの中から現れた、コーヒー農園以外の道を切り開こうとする人達がよく描かれている。
・香山六郎が田舎の情報も伝える新聞を始める。
・後にブラジルの茶王となる岡本寅蔵の苦労
・後に日系移民の母と呼ばれる池上トミ、渡辺マルガリータがキリスト教の信仰が固くなっていく過程…
地球の反対側で今では大きなコミュニティが出来た始まりを垣間見た感じがした。
あとがき・解説まで読んで改めて感銘を受けた。本当に超大作だ。2回もブラジルに渡り、両国で取材に取材を重ねてさらに文献を読み漁ってこの小説が出来てることを知り、北杜夫さんの熱意に私も影響されそう。
最初は「この人やたらマンボウの本ばっか書いてるなあ」 と思ってたけど、
・マグロ調査船の船医になってヨーロッパ行ったり
・登山者もいない北アルプスを放浪したり
・ディラン登山隊に医師として参加して4200mも登ったり…
やることの規模感が全て超人的。海、山、海外への憧憬が、すごい。これで文才まであるなんて。私もここまで突き詰めたいな色々。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
壮大な物語である。
南米への日本人移民について余すとこなく書いてやろう、という作者の意気込みが伝わって来る。
ゆえに、あれこれあちこちへとお話が転々と転がっていく。
時代というか、時もめまぐるしく移り変わって、ちょっと前とか、少し後、とかその頃・・・とか、もう頭の中で整理が出来なくなる。
整理できなきゃちょっと戻って関連場所を拾い読みでもすればいいのだろうけど、あいにくあたいにはその気力が無い。
ゆえに、主人公格の登場人物も沢山のひとが入れ替わり立ち代り出てくるので、ここでもまた混乱。 あれ?このひと、たしかさっきお亡くなりになったのでは?
でも面白い。
こりゃ第2部も読むしかないわな。
帰国したら早速ブクオフいこか。
ブクオフになきゃ本屋さんだな。
『楡家の人々』と合わせて買うべ。 -
彦根などを舞台とした作品です。
-
上巻が導入部分だったのに対し、こちらは実際の困難な状況が克明に描かれています。
特に平野植民地がマラリア、バッタの大群、霜害と幾度の困難を味わいながら発展していく姿は胸を打ちます。
平野運平氏が植民地閉鎖を決心するシーンでは涙が止まりませんでした。
この人たちは本当のサムライだと思います。
現代に生きる自分も含め、生きるということについて考えさせられます。
日本の学校で移民について何も教えないことにも違和感を感じます。
とにかく最高傑作です。
著者プロフィール
北杜夫の作品





