- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101131528
作品紹介・あらすじ
18歳のマンボウ氏は、バンカラとカンゲキの旧制高校生活で何を考えたか-。個性的な教師たちと大胆不敵な生徒たちが生み出す、独特の元気と喧騒に身をまかせながら、ひそかに文学への夢を紡いでいったかけがえのない日々は、時を経てなお輝き続ける。爆笑を呼ぶユーモア、心にしみいる抒情、当時の日記や詩を公開、若き日のマンボウ氏がいっぱいにつまった、永遠の青春の記録。
感想・レビュー・書評
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しばらく前に 「どくとるマンボウ航海記」 を50
年振りくらいに再読して、 懐かしさと、 より大
きな面白さがあったので、 高校時代の思い出を
たぐりたくて本書を再読した。
ああ、なんと私の記憶と異なる作品なのだ。
記憶では松本高校時代の寮生活がほぼ全編に面
白おかしく描かれていた。
ところが松高寮生活の様子は楽しく描かれてい
るものの、主流は「青春記」に相応しい青年の
悩みと迷いの告白の書だった。
「一見自堕落な寮生活をつづけてはいたが、 私
たちの心の底には、青年の悩み、 孤独、 疑惑な
どが常につきまとっていた。」
という一文はほとんどの若者の胸に一度は去来
する思いではないだろうか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
生徒が「面白い」と言っていたので読んでみました。
恥ずかしながら、北杜夫の作品は読んだ記憶がなかったのですが、エッセイはとても魅力的な文章が多かったです。
斎藤茂吉の息子として、医者になることを父から強くおしつけられながらも、旧制高校時代の話や戦後の混乱期を自身の望通りに生きてゆこうとする著者の姿は、滑稽ながらも読者の人生観に訴えてくるものがあるように思います。
自分がなすべき「仕事」とはどのようなものなのか、他者とのつながりをどのように持つべきものなのか、著者の一見すると自堕落で適当な生活にも、ヒントがあるのではと感じました。
エッセイの文章も軽快で笑いに富んでおり、著者のほかの作品もぜひ読んでみたくなりました。 -
読みやすくおもしろかった。ときどき笑いだしそうになったし、現代のへたな「笑える」エッセイよりおもしろいかもと思ったり。文章がすごく好き。軽妙で、ときにスマートに自虐的だけど、芯に熱く真剣なものがあるような。
松本の旧制高校での生活。松本に行ってアルプスの山々を見てみたくなった。
先生とのあれこれや、試験の話とかが特に好きだった。
「航海記」も読みたくなりました。とまらないー。 -
40の歳を迎えた作者による、学生時代の青春の回顧。
当時の鬱屈した世相と、その中で踠きながら駆け抜けていく姿に胸が少し詰まった。
入れられたユーモアは航海記よりも自然で、円熟を感じる。
暗さと明るさのバランスが性に合っていて楽しめた。 -
死んだお爺ちゃんの日記を見つけて思わず読んでみると、そこにはじいちゃんの若き日の力強い生き様がありありと書かれていて、読み終わる頃にはじいちゃんからの愛情を感じ、「生きよう」と思える。
そんな感じの本。
戦時中を生き抜いた人は、根性ある。そんな北杜夫さんの若い人へのエールが胸に迫る。
「いま、いまこの歳になって私が若い人に言えることは、自殺するならとにかく三十歳まで生きてみろ、ということだ。」とか言ってくれている。
エロにかける情熱にも笑った。
最古の輸入エロ。中国小説の「遊仙窟」。原文を辞書を引きながら読み進め、エロい部分を必死で読もうとするがわずか数行、しかも恐るべき字画の多い漢字の羅列。。わはは。
ラストの言葉が心に響く。
「自己を高めてくれるものはあくまでも能動的な愛だけである。たとえそれが完璧な片思いであろうとも。」色んな人から愛される自分を目指すんじゃなくて、自分から愛すことが大事だと言い切るどくとるマンボウ先生、ほんとにそうだよな。読み応えある本だった。 -
辻邦生について調べていて、この本にぶつかった。辻邦生と北杜夫が旧制松本高校の先輩後輩だというのは知っていたが、作品中に登場しているのは知らなかった。そう言えば、中学時代に北杜夫は結構読んだのだが、この本は読んでいなかった。
太平洋戦争末期の東京から始まり、壮絶な話もあるが、基本的には北杜夫のエッセイらしい馬鹿話・ヨタ話が中心である。彼のエッセイを読むと必ず感じるのは、自分のことを笑い飛ばす精神だ。したたかさとも言えるが、そのおかげで深刻な話も気楽に読める。
タイトルに「青春記」とある通り、北杜夫の青春時代、旧制高校時代から大学時代のエピソードが中心になっている。読んでいて、何だかとても懐かしかった。当然ながら私が行ったのは新制の高校・大学だけれど、雰囲気が似ているのだ。もちろん作中に描かれる旧制松本高校のように過激ではなかったけれど、本当に似ている。私が卒業した高校は、県下の公立高校普通科では一・二を争う問題校で、日々何かが起こっていた。けれど、教員と生徒は基本的には仲が良くて、今思えば一緒に問題を起こしてたような気がする。教育委員会ににらまれた教員は、私の高校に飛ばされるって話もあったくらいで、現在だったら新聞沙汰になるようなことも多かった。けれど、本当に、私たちは毎日精一杯生きていたし、精一杯バカをやったし、精一杯後で思えば恥ずかしいようなことをやった。それが、北杜夫の描く旧制松本高校に、驚くほどよく似ている。
もしかしたら、似ているのは私の高校と旧制松本高校ではなくて、ある程度の年齢になってから振り返る「青春時代」というものかも知れない。人みな青春時代があって、それに対する思いはそれぞれだろうけれど、何か共通する部分もある。その共通部分を思い出させるのが、この本かも知れない。上記のように、基本的には馬鹿話で、笑いながら読めるけれど、読後感はしみじみとしている。それは、読者の心の中の青春時代の印象なのかも知れない。 -
北杜夫さんが亡くなった.「楡家の人びと」を読んで以来,また彼の本を読み始めていたので寂しい.
この本は旧制松本高校から東北大学時代の回想のエッセー.旧制高校での生活を描いた本の中でも最もすばらしいものに入るのではないか.バカバカしいこともたくさん出てくるが,それとともに親友の辻邦生さんや望月市恵先生との出会いも語られる.そして文学に目覚め,真剣に取り組む様子などまさに「青春記」にふさわしい.
現在,旧制松本高校の校舎は旧制高校の博物館みたいになっていて,北杜夫さんの高校時代の物理の迷答案や,昆虫学者になりたいのを父茂吉に反対されてすねて作ったような短歌の色紙などもおいてある.この夏に見たばかりで印象も強いうちにこの訃報にあった.ご冥福をお祈りします.
本の中でまたお会いしましょう. -
斉藤孝『読書力』にあったオススメの書。必ず読もうと思う。
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どちらかといへば再再再読あたりです。すっかり忘れてゐて読み直した。
読みやすかった。
自身の青春をかへりみる内容で、随所にブレイクだのゲーテだのが顔を出す。そして最大の親炙であるトーマス・マン。