楡家の人びと 第二部 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101131580

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  • 楡基一郎の死後、火災で焼け落ちた青山の「楡脳病科病院」は、松原に本院を移すことに。
    基一郎の長女・龍子の夫、徹吉が院長になるが、彼は義父ほどのカリスマ性は持ち合わせていなかった。
    ますます生前の基一郎が伝説化され、それが徹吉の重荷となっていく。

    また、基一郎の死とともに、それぞれに個性の強い家族がいよいよばらばらになって漂流していく様が描かれる。
    さまざまな死が描かれるため、本作は第一部にあったユーモアがいくらか暗い深刻さを増す。そのぶん、何か陰惨な感じが漂う。

    時代的にも、第一部の大正時代の明るさが、昭和に入って徐々にかげりをおび、太平洋戦争へと突入していく。

    何より生々しかったのは、その過程の描かれ方で、こうしていつのまにか戦争が始まったのだということがほんとうにリアルに納得できる。巨大な狂気の雲が日本を席巻していく。
    第二部は凄みのある巻だった。
    第一部がすでに懐かしい。

    楡医院院長の徹吉とその妻龍子とその息子・周二の距離感が、この時代を象徴している気がしてならなかった。
    書き下ろしの第三部では、いよいよ戦中戦後の様子が描かれるのか。

  • 登場人物が多いけれど、それぞれ特徴がしっかり際立っているので混乱せずに読める。昭和、開戦へ。一つ一つは日常の細かいエピソードだけど、少しずつ時代は移ろっていく。


  • 昭和元年〜第二次世界大戦までを記録。
    終盤近くの、ある楡家の友人目線による真珠湾攻撃開戦時の空気感が生々しく、良かった。
    仄かなユーモアと戦争突入前の日本の緊迫感がバランス良く、中弛みしなかった。

  • 読了

  • 面白かった。感想は第3部で

  • 大黒柱が去った後のバタバタを中心に。残された人たちも個性的だけど、物語中でも描かれているように、やっぱり先代と比べると皆が小粒に思えてしまうというか、そのせいで、展開そのものもやや小ぶりになってしまった感がありました。病院の勢いがやっと戻ってきたところで、今度は世界大戦に突入してしまう訳ですが、その絡みで、やっぱり家も没落してしまうんでしょうか。そのあたりが描かれるであろう下巻の結末に、期待は大きいです。

  • これはとてつもなくいっちまっている作品ね。
    ちなみに実話がどうも元になっているようで
    ある本を書いている人は…なのです。


    結局この家は欺瞞の塊だったのでしょう。
    見せかけの栄華を見ている感じですね。
    その裏側には目も当てられない負債があるというのに…

    院代の望むとおりにならないところが
    没落を示唆していて痛々しかったです。
    どんなに良くしようとしていても独り歩きだからね…

  • あれほど心を病むような慣わしに翻弄された人びとは、災害や病、そして戦争によって周囲のつながりが狂い出す。それは精神をむしばんでいくような毒ではなく、日常の生活や風景に溶け込んでいて知らぬ間に身体へと染み込んでいく。この緩やかな悲劇が怖くなる。

  • シナ事変から太平洋戦争開戦と時代は楡家の人びとを押し流して行く。昭和初期の精神史を読むようだ。特に楡俊一の友人で空母瑞鶴に乗った軍医の語る開戦までの経緯は迫力がある。

  • 2022I130 913.6/Ki/2
    配架場所:C1

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著者プロフィール

北杜夫
一九二七(昭和二)年、東京生まれ。父は歌人・斎藤茂吉。五二年、東北大学医学部卒業。神経科専攻。医学博士。六〇年、『どくとるマンボウ航海記』が大ベストセラーとなりシリーズ化。同年『夜と霧の隅で』で第四三回芥川賞受賞。その他の著書に『幽霊』『楡家の人びと』『輝ける碧き空の下で』『さびしい王様』『青年茂吉』など多数。『北杜夫全集』全一五巻がある。二〇一一(平成二三)年没。

「2023年 『どくとるマンボウ航海記 増補新版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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