- 本 ・本 (432ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101132037
感想・レビュー・書評
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普段歴史小説は敬遠しがちなんだけど、敬愛する有吉佐和子作品というのと、「名作「紀ノ川」をさらに一歩進めた、雄大で風格のある歴史小説」という解説に惹かれて読んでみたら、もう大傑作。
250年にわたる家系の大河小説を、こんなにコンパクトにまとめて、それなのに一人一人の当主や嫁の息吹がしっかりと伝わってくるの、名人芸すぎる。どうしてもあたたかく締めくくりたくなりそうなものだけど、残酷なまでに客観的で寂寥感あるラストに、より強く情緒を感じた。
旧日本式な嫁の忍従は、今では消え去るべきものとして社会が動いていて、わたしも夫、ましてや家に仕えるなんてまっぴらごめんだ。だけど、長男第一の社会で、置かれた場所に辛抱強く根を張り、一本自分の芯を通す女たちの生き方は、すごく気高く、美しく感じた。そういう美徳は、残していけたらよいのだけど。 -
垣内家当主代々助左衛門の歴史を描く。
久しぶりに読む有吉佐和子さんは、やはり素晴らしい。
四代の助左衛門の歴史を描いているのに400ページ程しかない。こんな少ないページで描ききれるのかと不安になるが、そこが有吉佐和子さんにかかると見事に描ききってしまう。
それぞれの助左衛門の人生が、劇的すぎず何もなさすぎない絶妙な加減に抑えてある。普通なら、あれもこれもと欲張って書いて読者を食傷気味にさせてしまう。しかし、有吉佐和子さんの盛りすぎない書き方が、リアリティを産み、作品のドラマ性も併せ持たせることに成功している。
有吉佐和子さんは魅力的な人物描写も特徴だ。
特に女性の描き方が素晴らしい。
有吉作品に出てくる女性は、言い訳や責任転嫁をしない。自分の人生に責任を持つ女性が多く、好ましい。
何かあるとすぐに言い訳したり、誰かのせいにするひとがわたしは苦手なので、有吉作品の女性たちは本当に気持ちがいい。
「助左衛門四代記」であるので四人の妻(実際は後妻もいるので五人)が出てくる。
妻たちそれぞれが個性的なことは勿論、耐え忍ぶ女性の強さ、感情を表出させずに生きる強かさなどの隠された感情を、仕草などを描いて表すことがとても上手い。
やはり有吉佐和子さんは名作家だと読むたびに思う。
今回も読みながら唸らされ、最後まで愉しめる作品だった。 -
7代目まで祟りが続くっていう話は本当だったけど、最後の終わり方は悲しかった。それにしても有吉さんの和歌山を舞台にした作品、何世代にも渡る家系の話、やっぱりおもしろいなぁ。男の人の力もあるけど妻の内助の功が素晴らしい。紀州徳川家の話も勉強になった。
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解説にあるように有吉さんの小説を読むたび「どんなふうに史料を読み込み、それをどう消化して、物語を生み為したのか」と思う。まるで実際に見てきたかのような「真のにおい」を感じる描写に驚く。「女が居てへんだら家というのは成立ちませんで」っていう一文はまさに金言!この小説の内容そのものだなと思う。
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紀州の豪農垣内家の盛衰というか隆盛を四代250年に渡って描いた大河小説。
温暖な紀州を背景に徳川から明治へと苦闘はしつつも飢饉や戦争といった悲惨な事態はほぼ起こらず、木ノ本という箱庭の中で繰り返される四代記。傑作。 -
2015年3冊目。
星4つか5つか迷うところ。
間違いなく面白いんだけど、有吉さんならこのくらい当然だよね、という気もする。
他の人なら間違いなく★5つなんだけど。
でも、やっぱり本当に有吉さんは面白い。名作。
著者プロフィール
有吉佐和子の作品






コメントありがとうございます!
わたしもこの作品知らず、図書館でたまたま見かけて読んだのですが、『紀ノ川』好きにはめちゃ...
コメントありがとうございます!
わたしもこの作品知らず、図書館でたまたま見かけて読んだのですが、『紀ノ川』好きにはめちゃおすすめです!
あの「〜のし」って方言も出てきますよ〜