地唄 (新潮文庫 あ 5-4)

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  • 本 ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101132044

感想・レビュー・書評

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  • 有吉佐和子さんは、日本の伝統芸能に温かいまなざしをもっていらっしゃる方だ。
    私も常々、最近、経済的にもそれほど恵まれていないだろう職人さんや、伝統的な手法で包丁などを作り続けたりしている方達が、無事に次の世代に技術、心構えを引き継いでいけることを切に願ってやまない一人である。

    地唄は、有吉さんのデビュー作。盲目の三味線の大検校と2世と結婚してしまうその娘の葛藤の話。特に惹かれるところはないが、私は実際に盲目の方に三線という伝統芸を習ったことがあるので、少し覗いたことのある世界であり、試験を受けるの1つも先生の推薦がなければ受けられず、師匠との関係も大事であるのは分かる。それだけの親近感。

    2番目の墨がこの短編集の中では、一番好きだった。
    踊りの師匠と、ミューズに出会った着物の染色職人の話。一つの道を探究する者同士、通じるものがあったのか、職人のために中国で唐?の時代の墨を買い求める師匠。それまでそこまで珍重されたことのない職人は、感動してしまい、益々魂を込めた墨絵の着物を染め上げる。

    3番目の黒衣はちょっと気持ち悪い。今と同じ。少し軽薄な歌舞伎役者の黒衣を長年務めた老人の話。持ち上げられていい気になった歌舞伎役者が、舞台デビューを果たす。そこへ端役として出向くことになった老人。あらん限りの情熱を注ぎ、仲間内で注目を浴びていくが。。。

    4番目の人形浄瑠璃は、浄瑠璃がなんたるかを知らないと少し分かりにくいかもしれない。でも、へー。浄瑠璃の方はこんな苦労を乗り越えてきたのかという、分裂時代のことを教えてくれる。内容的には、まぁ、いい人は結構損をするってことかな?

  • 厳しい芸の道に生きた父と娘の話でした。「物事を始める前に成功の如何を問題視する用心深さは悧口な人間のすることで芸の真髄にそうした悧口さでは到達できないのだ。」という言葉が重かった。父と娘のドラマチックな出来事にスポットを当てるのではなく静かで厳しい芸の道に生きる二人の姿を淡々と描いていたので深さが出たのだと思われます。

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著者プロフィール

有吉 佐和子(ありよし・さわこ):1931年、和歌山市生まれ。作家。東京女子大学短期大学部英語科卒。1956年『地唄』で芥川賞候補となり、文壇デビュー。以降、『紀ノ川』『華岡青洲の妻』『恍惚の人』『複合汚染』『和宮様御留』など話題作を発表し続けた昭和を代表するベストセラー作家。1984年没。

「2025年 『有吉佐和子ベスト・エッセイ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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