悪女について (新潮文庫)

  • 新潮社 (1983年3月29日発売)
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  • 本 ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101132198

感想・レビュー・書評

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  • 面白い!美貌の女性実業家の転落死。彼女と関わりあった27人のインタビューで構成された話。語り手変わるたびに本当は善人か悪人か揺らぐ。聞き手=作者と思わせるドキュメント的なつくりにも笑える。「まああ」という口癖うつりそう。

    • akikobbさん
      こんばんは。
      私もちょうど、図書館予約していたのが届いた連絡を受け取ったところです!こちら読んで期待が高まりました!
      こんばんは。
      私もちょうど、図書館予約していたのが届いた連絡を受け取ったところです!こちら読んで期待が高まりました!
      2024/02/08
    • 111108さん
      わぁ、タイミング合いましたね!
      ぜひお楽しみください♪
      わぁ、タイミング合いましたね!
      ぜひお楽しみください♪
      2024/02/09
    • ロッキーさん
      111108さんが言う通り、過激な方向には転ばず上品なのに、十分惹きつけられて面白いの、有吉さんの筆力をすごく感じます。akikoさんこれか...
      111108さんが言う通り、過激な方向には転ばず上品なのに、十分惹きつけられて面白いの、有吉さんの筆力をすごく感じます。akikoさんこれから初めて読むの羨ましいくらいです!笑
      わたしはちょうど『紀ノ川』読み始めたのですが、こちらも面白いです!
      2024/02/09
  • 謎の死を遂げた女性実業家の富小路公子。生前に関わりのあった27人の人たちへのインタビューを通じ、彼女の人物像に迫る長編小説。『青い壺』と同じように、公子を軸に章ごとにインタビューを受ける人が変わっていく連作短編とも言える。
    周囲の人間から聞く公子の評価は様々だが、胡散臭さは否めない。真相は明かされず、読者の判断に完全に委ねられる終わり方となっている。その点がタイトルにある「悪女」の要素を一層強めている気がした。
    出生や年齢から出鱈目で、公子が出産したという2人の子供の父親も複数名が名乗っていたり、関わる人ごとに異なる情報を与えていた公子。何が本当か本人しかもはや知る由もないのだが、呼吸をするように堂々と嘘をつける彼女は空恐ろしく、これまでいろいろな作品で見てきた悪女を超越していた。清く美しくをモットーとしていたようだが、表面的に人を傷つけるそぶりは見せていないものの、やっていることが度を越してやばい。公子の最期については、ハワイでの挙式を予定していたアラン・ドロン似の「婚約者」か、彼女の次男のインタビューが個人的に信憑性があるように思った。
    最近になって初めて読んだ有吉佐和子さん。読み応えのある作品を量産するすごい著者がいたのだなとつくづく思う。

  • 有名な金持ちの女性・公子が突然亡くなった。他殺なのか?
    彼女のゴシップが広まる中、27人の目線から公子との過去が語られる…。

    この本のジャンルはミステリになるのでしょうか。
    誰が本当のことを言っていて、誰の記憶が間違っていて、誰が客観的で誰が主観的なのか。
    公子がしていたことは、詐欺か、誤解か、それともただ黙っていただけなのか…。

    初恋の人への想いがずっと続いていたと読み解きそうになったけれども、いやいや、私も騙されてる、と冷静になりました。
    男の人たちが揃いも揃って彼女は処女だと思っていたのが、笑ってしまいます。

    もし、私が公子と同じ時代で知り合いだったら、彼女のことを「いい人」と思っていただろうか。それとも騙されて怒っていただろうか、と想像が膨らみます。

    もう、気持ちのやり場がない。
    そのやり場のなさがめっちゃ面白いんです!

  • 今でこそ、他人の語りのみで構成される物語は数多く世に出ているが、本作はその走りなのではなかろうか。女の真の姿を知りたくて、一気に読んでしまった。惹きつけられた。白夜行、黒革の手帖が思い出される。
    それにしても27人は多過ぎでしょ(笑)

    謎の死を遂げた美しい女、富小路公子。時には優しく、時には人を騙し、周りの人間を巻き込みながら、貧しい暮らしから大実業家へと変貌を遂げていく。彼女に関わる27人のインタビューから真相に迫っていく。彼女は何故、死んだのか?

    人によって富小路公子への評価は全く異なる。良い人だと言う人。悪い女だと言う人。美しいとかそうでもないとか、騙されたと言う人も居れば、聖人だと言う人も居る。
    そして、付き合った男全員に、彼女が産んだ子どもの父親は自分だと思わせているのだから、お見事である。勉強し働き、人に尽くして利用する。宝石や土地を転売し、のし上がっていく様は小気味良い。惜しげもなく散財するのも面白い。
    子ども達の本当の父親はわからない。そして、彼女の心の奥もわからない。
    彼女の事はあまり好きになれなかったが、ラストは儚さを感じ見方が変わった。美しいモノを求めていたのは、本当だったのだなぁ、と少しだけ理解できた。

    「非色」「恍惚の人」と読んできて本作。有吉佐和子は様々な立場の女性を描いている。環境に揉まれ生き抜く強い女性だ。時代は変われどアナタも力強く生きなさいと励まされる。折を見て「紀の川」や歴史物にも挑戦したいと思う。

  • 悪女として週刊誌に掲載された女性実業家の謎の死と生い立ち、真相が27人のインタビューによって徐々に明らかにされていく。本当に悪女なのか、それとも隠された真相が待ち受けているのか、予測のつかない結末にドキドキしながらインタビューの一部始終を読み進めた。
    結局、悪女だったのかそうでないのか意見が分かれる結末だったと感じた。誰かに殺されたというわけではなく、自殺なのだろうと思うが、それまでの出来事を読み解くと悪女なのだろうか。実業家本人のインタビューはないため、読者の想像に委ねる終わり方となっている。
    読後のもやもやが残ってしまったが、小説という形式でしかできない構成となっており、非常に面白い小説であった。これが昭和50年代に刊行されたとは思えないほど前衛的な手法だと感じる。

  • 映像が目に浮かんできて、もし私なら主人公は勝手に君島十和子かなあ。苦笑い。
    数年前のドラマでは沢尻エリカだったらしいけれど、ちょっと違うな。
    黒木華ちゃんや蒼井優ちゃんでは物足りない笑。
    松居一代じゃあ胡散臭すぎるし、小池百合子さんがいいかも?!

    繁栄と栄華で満ち満ちた1人の女性について、27人もの周辺人物たちが、それぞれモノローグの形で語る。

    メディアにも華々しく取り上げられ、絶頂を極めている女性実業家が謎の死を遂げる。
    彼女の「人となり」を、周囲の人々が独白の形で露わにしていく。

    努力家で才能と美貌や知性の溢れる女性と賛美される一方、欺瞞と虚栄に満ちた詐欺師と罵られる。

    彼女の評価が真っ向対立しながらも、彼女への興味や関心が頁を捲るごとに増していく。

    女性が添え物であった時代の物語にありながら、男性をもしのぐ手腕で次々と事業を拡大させる一方で、男性にしな垂れかかる売女のような一面もある。
    どちらが本当の姿で、どちらが嘘か。表裏一体の妙。

    出自や生い立ちを偽り、戸籍や名前までを改め、嘘に嘘を重ね、富を得て、彼女が本当に得たかったものは一体何なのだろう。

    彼女に翻弄されながらも、周囲の人たちが彼女との関わりを断ち切れなった事実に彼女の本質が垣間見える。

    貫井徳郎さんの『愚行録』もモノローグを重ねた展開で面白かったが、こういう形式が好みの方、お薦めです。
    気が付くと、私も28番目の人として、彼女について誰かに語りたくなっている。

  • YouTubeで肉小路ニクヨさんが紹介されていて手に取った作品。
    昭和の作品だし、初読みの作家さんなので、最後まで読めるのか少し緊張しながら読み始めたんですが、とても好みで面白かったです。

    自殺か他殺か。
    公子に関わった27人の話から、幼少期から亡くなるまでの彼女を追っていく。
    話す人物によって彼女の印象は様々。
    そこで、彼女の生きる強さや信念を感じることができました。
    “悪女“の一言では片付けられない魅力がありました。

  • 女性経営者・富小路公子の死体が発見された。
    自殺か、他殺か、事故死か…
    彼女の死後、週刊誌は彼女のスキャンダルを書き立てる…
    彼女に騙された人たちが語る…

    よくここまで…
    よく騙せたな…
    ここまでやると何が真実で何が嘘なのかがわからない。公子自身、よくわからなくならなかったものだと…
    騙された男たちは少なくとも騙されたとは思わず、公子に悪意を抱いてはいない。
    なんなんだろう、不思議な女性だ…

    公子の実像と死の真相に迫るはずの関係者へのインタビュー。が、話を聞けば聞くほどわからなくなっていく…
    人よって、まったく違った反応が…
    彼らが言うことには、公子が語ったとされること以外はおおよそ齟齬はない。
    それが、ますます公子の実体をわからなくさせる。

    結局、公子は事故死だったんだろう、義輝の言うように。

  • もう何度読み返しているかわからないくらい繰り返し読みたくなる本。
    もう読まないだろうと人にあげたり古本に売ったりして
    でもまた読みたくなって購入するという・・・。
    1人の女性について、27人の人物が証言していくという
    物語で、27章に分かれているのでとても読みやすい。
    鈴木君子が富小路公子になってのし上がっていく様が
    第三者の目線で証言されていく構成がとても素晴らしい。
    そして人によって最低な女と言われたり、女神のような女性と
    いわれたり、公子のとらえ方が違う点も興味深い。
    公子の喋り言葉が癖になって、何年かたつとまた物語の世界に
    入りたくなってしまう。そういう本ってなかなかないので、さすが有吉佐和子だって思う。

  • 主人公が一人称として一切語らない本書の構成が面白かった。「悪女」である主人公の印象が人によって全く違うのが面白いし、自然とそうなってしまうのが「悪女」たる所以なのかもしれない。

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著者プロフィール

有吉 佐和子(ありよし・さわこ):1931年、和歌山市生まれ。作家。東京女子大学短期大学部英語科卒。1956年『地唄』で芥川賞候補となり、文壇デビュー。以降、『紀ノ川』『華岡青洲の妻』『恍惚の人』『複合汚染』『和宮様御留』など話題作を発表し続けた昭和を代表するベストセラー作家。1984年没。

「2025年 『有吉佐和子ベスト・エッセイ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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