- 本 ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101132525
感想・レビュー・書評
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何度読んでも素晴らしい。
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函館から漁師町の南茅部に二十歳で嫁いだ薫を中心とした、女三代の大河小説的物語。
ロシアの血を引き、美しすぎるゆえ孤立してきた薫。邦一という漁師の男と出逢い結婚して子どもももうけるが、数年後、薫の運命の歯車が狂い出す。
上巻は薫、下巻は薫の二人の娘が中心となった小説。
解説で小池真理子さんが「色香に満ちた作品である」「ここまで色っぽい小説にはめったにお目にかかれない」と書いているのだけど、その意見にまず頷いた。
性的なシーンもけっこう多めの小説ではあると思うけれど、色香が立ち上ってくるように感じるのはむしろ、薫や二人の娘の清廉さが描かれているシーンだったりする。
無機的なまでに美しい女性の描写から滲み出る清潔な色気、というような。
悲しいけれど力強い、小説全体の印象は、イコール薫の印象でもある。
美しさゆえに疎外感を感じて生きてきた薫が、本物の愛に気づき、その愛のために生きる。その強さと儚さが壮絶だった。
美しいから人々を夢中にさせ、そのことが薫を縛りつけるという、彼女にとっては苦しい循環。
函館、南茅部、札幌など北海道の風景、教会とキリスト教、漁師町、北海道大学、など、たくさんのキーワードを含む大長編。
とにかく惹き付けられて、一気に読んだ。
薫は自分の愛に生きたけれど、本当は周りの人間たちのことを深く愛していたということに気づく描写たちに、涙が溢れた。
久々に、正統であり波乱に満ちたラブストーリーを読んだ気がする。 -
北海道ならではの文学があると思う。そしてそれは女性作家によって紡がれる系譜のような気がする。たとえば、三浦綾子、桜木紫乃といった作家たち。そして谷村志穂もその系譜に連なる人物ではないだろうか。北国を舞台にしたどこか現実と隔絶したように(関東生まれ関東育ちには)感じられる物語。上下巻からなる『海猫』もそうした魅力を十分に含んだ長編小説。
物語は漁師町に嫁入りする薫から始まる。ロシア人を父にもつ美貌の薫はそれを疎ましく思いながら生きてきた控えめな人。でも心の芯に熱いものをもっていて義弟と心から愛し合う仲になり、物語の中盤で二人は心中するかのように同時に命を投げる。後半は薫が残した二人の娘、美輝と美哉を中心に描かれる。
薫、美輝、美哉のいずれもが主人公といえるだろうか。三者三様の性格と生き方は主人公にふさわしい。一方で、その描かれ方にひかれたのは、薫の母・タミと薫の弟である孝志の妻・幸子、そして薫の夫だった邦一と後妻の啓子の4人。
タミは苦境に陥りそうでもくじけないそのバイタリティある生き方がすてき。幸子は自分の薄幸を承知しているかのようにしょうもない孝志に添い遂げ、終盤はそう悪くない生き方をつかんだところにひかれる。邦一はその不器用な生き方が、薫に対してはつらくあたることになったけど悪者には思えない。啓子は、疎まれ者になった邦一に寄り沿う損な人生を自ら選ぶところにひかれる。
多くの登場人物がいるけど、誰もが何かを抱えながら一生懸命ひたむきに生きている。悪い関係や素直になれなかったりもするけれどそういうふうにしか生きられない人間の姿が丁寧に綴られている。いろいろあっても、時がたつうち落ち着きどころが見つかるような。最後の命がつながれていくようなシーンも静かで熱く、心に響くいい終わり方だった。 -
舞台も、時代背景も心にヒット!久々に寝ないで読めた小説だった。
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大沼ワルツがよかったので これも買ってみたんだけど 面白かったー。映画になってたなんて知らなかったなぁ。
このストーリーじゃ やっぱり広次の方が惹かれるよなぁ。男気があって気持ちが優しくて
頼もしくて。
でも薫も邦一も だれのことも心から愛してないように思えて仕方ない。それぞれが強い愛を貫いて この悲劇にたどり着いたなら それはそれで仕方ないと思えるけど ほんとに誰かを愛したのって広次だけだったんじゃないかなぁ。
それでこの結末はつらすぎる。
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薫と広次にもう少し幸せな時間を与えて欲しかった。こんな展開になるんじゃないかとちょっと予想していたけどあまりに哀しい終わり方でちょっと淋しかったです。
しかし物語自体はタミがすごくいい亡くなりかたをしたのがよかった。
しかしこんなに繊細で、ダイナミックで、冷たくて、情熱的な作品に出会うことはなかなかないと思う。本当に素晴らしい作品でした。 -
上巻の激しさが下巻には足りんかったような、、、。
そこが少し物足りんかったかなぁ、、、。
まぁ、主人公が途中で変わるから仕方がないんかもしれんけど、、、。
2章までで終わってても良かったんじゃないかなぁ? -
下巻は薫が二人目の子(邦一の子供として生んだが、実は広次の子)を出産し、美哉となずけたところから始まった。
出産後、夫婦の仲はますますぎくしゃくし、薫は邦一の愛を恐れるようになり、離婚も考える。だが邦一の執着は益々ひどくなり、ついには柱にロープでしばられ監禁されるしまつ。
それをしった広次は薫と二人の子(美輝と美哉)を連れて逃げようとするが、邦一につかまり結果、命を落としてしまう。
後半は美輝と美哉の人生に焦点があたる。
彼女らも母親に負けず劣らずの波乱万丈な人生を歩く。
最後はタミを中心にした家族の絆。
親子3代(暁生を入れたら4代)の壮絶な生き様と函館の海と教会など自然描写がまるで、映像として浮かんでくるようで素晴らしかった。 -
広次と薫の恋は、壮絶な結末を迎えた。それから十八年後、薫の愛したふたりの娘は、美しい姉妹へと成長していた。美輝は北海道大学に入学し、正義感の強い修介と出会う。函館で祖母と暮す美哉は、愛してはいけない男への片想いに苦しむ。母は許されぬ恋にすべてを懸けた。翳を胸に宿して成長した娘たちもまた、運命の男を探し求めるのだった。女三代の愛を描く大河小説、完結篇。島清恋愛文学賞受賞作。
なんでしょうね。
科学的にはそのことは証明できない・・・ってことになるのかもしれないところがあるような気がします。
ただ、証明できないからいいんじゃない??
それが人間らしいし。みたいにも思い、科学ってすごい!と考えることもできますが、ただ、単純にもともとこの地球上に起こってることであり、あるものを証明してるだけだから、新しいことを生み出すものではないんですよね。
だから、科学がいいとかそうでないわけではないですが、なんでも証明できればいいのか?と言われるとそうでなくてもいいじゃん!ってこともしばしばあるような気がします。。。。 -
9月22日 読了
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